白露型の長女
おはようかな?こんにちはかな?一番艦の白露です。寝ている間に変なところに来たよ。見渡す限りの海、鎮守府もなく森と高台のある場所。
ここはどこ、あたしはだれ?といった感じに慌てていると、目の前の少尉にチョップを受けました。無視をしてもいいけど、二人だけなので話してみます。
「八つ当たりはだめだよぅ」
あくまで対等を装う少尉。艦娘と会話ができても嬉しそうな反応や、畏怖のようなものがないのです。村雨といたらどんな感じなのだろうか。村雨的にはどんな感じ?
「厄介払いじゃねーか!」
見た目とは裏腹にとても男性的な喋り方をしています。理由はわかっているため、不思議な感じはしても嫌悪感はないんだよ。
もちろん、休暇の時に助けた一般人なのは知っているため、その補正で普通の少尉より優先度が上なのもあるよ。あのトラックは大丈夫かな〜?
「とりあえず島の周りを歩いてくれ」
少尉から指示が出たよ。でも、もう妖精さんがたくさんいるため、この小島にどういうものがあるかとかは大体わかってる。
「妖精さん、小枝を集めてくれるかな?」
『わしらにまかせときーや』『きばっていくでー』『ほな、いってきますわ』
その間にあたしはいい感じの流木と、寝られる場所を作ります。艦娘のサバイバル術はとにかく艤装を隠して、仲間が来るのを待つことだけど、最も重要なのは国、その次に人のため、少尉さんを護らないといけないのです。
艦娘には食事と睡眠は必要ないけど、人には必要あるからね、仕方ないね。まずは艤装を取り出して、うまい具合に風を止めるよう木を配置します。完成です。
次にブルーシートを取ってきましょう。そのためには海岸沿いに走らなければいけません。
「いっちばーん!」
掛け声と共にブルーシートを探しに行きます。そうして、砂浜を駆けていると目的のものを発見しました。それを持って元の位置に戻ります。
元の位置には枝が敷並んでいて、妖精さんが戻っていました。
「お疲れ様。じゃあ火をつけるよ」
艤装を出して着火する。いい感じに燃えていき、焚き火が完成した。少尉さんを助けるためにはこれぐらいしないとねっ。
「なんで、火をつけたし」
しかし、焚き火を作ったことを怒られてしまいました。うっ、でもでも、少尉さんのためだし…。
「あっ。てへっ」
なるほどぉ、ここには木が少ないからね。でも、あたしは少尉さんの役に立たないといけないから、何かないかな?
「よし、じゃあ昼飯にしよう」
「あたしにできることある?いっちばん、頑張っちゃうよー!」
良かった、できそうなことあった。まだ、見捨てられるわけじゃないんだね。半袖をまくって動く準備をします。
「魚とr」
少尉さんがさかな…?を食べたいらしいです。魚なら海に行かないとね。サンマ取ったことあるし経験は十分っ。
「いや、服が濡れるし他を考える」
服はたしかに濡れるけど、じゃあ脱いじゃえばいいんじゃない?どうせあたしたち見た目同じだし、あまり恥ずかしくはないよ。
「じゃあ全部脱いじゃえば?」
別に泳げないわけでもないし、釣りは…。海は深いから魚は下の方にいるのかな、少なくとも手の届かない位置にいそう。
あれ?そうなると潜らないといけない…?潜るのは沈んだときだけがいいなぁ。
「潜るのはいちb…ちょっと苦手かな」
いやまぁ、潜れって言われたら潜るけどね。できれば潜りたくないので、代案を提示したいと思います。
「森の中なら大丈夫だよっ。妖精さんもいるし」
少し少尉さんが怪訝な顔をしています。どうしちゃったんだろ?もしかして、妖精さんを知らない?見えてないのかな。
「あっ妖精さんっていうのはね」
砂浜の上にいた妖精さんのうち一人を持ち上げて、見せてあげました。でも視えてないらしく、少尉さんの手のひらに乗せてあげると、少尉さんは妖精さんと遊び始めてます。
「妖精さんたち、食べられそうなもの持ってきてくれないかな」
『わかったで、じょうちゃん』『わいらのちから、みせちゃるで』『ほな、いってきますわ』
そう言うと散り散りと行ってくれました。
「うん…よしッ。少尉さん、妖精さん達が食事を用意してくれるって。あたしは寝られるところ、作ってくるから、そこに座ってて」
ブルーシートを使って雨風を凌ぐ用の屋根と、砂の上で寝るのは嫌だからという理由の床用を作ります。床用は敷いて端に石を置くだけです。屋根は近くの蔓で木と巻きつけて、少し斜めにします。
艤装を取り出すことで力の出力をアップして、固く結びつけます。けど、ピンと張るのは…むむ、難しい…。
そして、なぜだか、後ろからすごく怖がられている気配を感じます。冷や汗が止まらないよっ。うひゃぁ、なんか近づいてきた。
「なにか手伝おうか?」
なんだよぉおどかさないでよ、もうっ。気が抜けて艤装を消してしまいました。いけないいけない。でも、もうほとんど完成形。
「じゃあ、そこの端っこ引っ張って」
ここをこうして…よし。
「完!成!やったぁ」
少尉さんに向けて手を高く上げます。すると、少尉さんはハイタッチに応えてくれました。これで、あたしの今日やることは終わりました。
終わってみるといろいろやっていないことを思い出します。例えば
「そういえばあたしたち自己紹介してないね」
「そうだな」
ここに来てから一度も名前を呼んでもらったことがありません。あたしも、服装で少尉さんってわかるだけです。
「一番はあたし!白露型駆逐艦一番艦、「白露」です!はい、一番艦ですっ!少尉さんは?」
「ああ、少尉を貰った、あと提督?とか言うものも貰った」
少尉さん、それ自己紹介じゃないよ。あっでも一度助けられなかったから、生まれてからのものって言うとそれしかないのかなぁ。
「えっ少尉さんって提督なの?!」
あたしはすごい失礼なことをしていたようです。提督なのに少尉さん少尉さんって。でも、見た目は少尉さんだよね。妖精さんが見えれば少尉さんでも提督になるっていう特例は聞いたことあるけど、妖精さんが見えてるわけでもないし。
まあいいや、これからは提督って呼ぼう。そっちの方が自然に話せるしね。
「そもそも提督ってなんだ?」
「えっとね、あたし達のような艦を動かす司令官のことで、船長とかとは違うんだ。もっと多くの艦娘を動かすんだよ。だから少将さんとかじゃないとなれないはずなんだ」
ということはあたしが初期艦で秘書艦ってことでいいのかな。秘書艦の必要はなさそうだけど。ってことは今はあたしの提督だね。
「じゃ、じゃあ艦娘にとって提督ってどういう存在なんだ?」
う〜ん提督は提督かな。あっ、妖精さんが材料集めてくれたみたいです。料理の時間です。と言ってもあたしが作るわけじゃないんだけどね。
焚き火の近くに行って妖精さんの手伝いをします。例えば焚き火の火力を上げたり、大きなものをとってあげたり。
そして、ちゃんと出来上がりました。
「ご飯だよ〜」
何故か提督と一緒に妖精さんがいます。しかも木の枝を持った状態で。提督より先に食べてはいけないので、提督がいただきますをするまで待ちます。
でも、提督はそのまま食べ始めてしまいました。
「あっていとくぅ〜ダメだよぅ、ちゃんといただきますしないと。ねっ妖精さん。いただきまぁす」
熱々の貝を頬張ったり、きのみを食べたりして、昼餉を楽しみます。提督のためにやることはもうないはずだから、後は自分のためにやることだけ。
「そうだ、提督。あたし長距離練習航海に行ってくるよ」
弾薬がないと護れないからね。見たところ工廠の妖精さんもいるので、建造とかもできそうだし。
ごちそうさまをして、艤装を取り出して海に出ます。弾薬を取るためには、艤装に乗っている妖精さんが妖精さんパワーを使って資源の取れる場所に行くことが必要です。
資源も妖精さんパワーで作り出せます。仕組みはよくわからないです。でも、遠征にも敵艦と遭遇することがあります。特に辺境の海域だと特にそうです。
「まずは敵艦発見。駆逐イ級が2隻ね。砲撃はじめっ」
『わしのほうげき、かましたるで』『てきさんのあたまとったるで』『ほな、いってきますわ』
「…砲撃まであと十五秒」
敵艦が先に攻撃してきます。でも、イ級とは何度も戦ってるから当たらないよー。
「ってー!」
手に持っている12.7cm連装砲が爆発して、秒数計測を始めます。丁度計算通りに弾は爆発して、イ級は大破です。2隻目のイ級が攻撃してきました。でも、難なく躱します。
「魚雷発射っ!」
『こいつでしめ、や』『ばくはつおちなんてにちじょうさはんじだろー』『ほな、いってきますわ』
これでどちらも大破になったため、逃げます。大破ではまともに攻撃なんてできないからね。それよりも任務は資源を集めることです。
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小島に帰ると提督は寝ていました。なのでもう一周したいと思います。というか、ちょっと敵艦が多すぎます。別の方向に行ってみましょう。
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作者:結構飛ばします
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「むむむ、あたしがいる」
寝起きに目の前にあたしがいます。鏡とかではなく、相手も動いているのです。でも、お姉ちゃんなあたしは騙されません。きっと髪の染めやすそうな時雨か、似た色のしている村雨がやっているんだよ。
そして開放的な部屋にいることに気づきます。見渡す限りの砂浜と海。…あっ提督だぁ。
「それで、あの倉庫はなんだ?」
あっできたんだね。よし、これで補給ができます。燃料を飲んでいると、提督に大丈夫か聞かれました。とはいえ、艦娘にとって仕事ができるという意味の食事はこれです。
人が食事を取らないと仕事ができない、仕事ができないと食事ができないように、艦娘も生きるという意味では違うけど、そういう意味では同じです。
そう説明すると、提督はすごく怒っている気配がします。顔は微動だにしてないけど、怒っているのが伝わります。だって自分の体だから、自分との違いが比較しやすいのです。
急に上から水が降って来ました。びしょ濡れですが、いつも海で濡れているため大して変わらないです。でも、妖精さんが逃げていくので、あたしも追いかけます。
たくさん遊んだので、食事にします。先に捕まった妖精さんが料理を作ってくれたので、提督さんのぶんはあります。あたしは弾薬でも食べます。
「それ、美味しいのか?」
バリボリ食べていると提督が質問してきました。同じ体だし食べられそう、と思い渡そうとすると、遠慮されました。むぅ残念。
弾薬の味はね、時々海上でも楽しめます。敵の砲弾があたったときなどは、無理やり口の中に入ります。前世でも時々ありました。
とりあえず補給が済んだのでまた長距離練習航海に行きます。そうして艤装を用意していると、提督に止められてしまいました。
「そもそも、艦娘ってのはどんな存在なんだ?」
これはどう答えたほうがいいのかな?先まで前世のことを思い出していたので、どうにもそっちの話に引っ張られてしまいます。
前世のことをツギハギのように、辛くなさそうな部分だけピックアップして伝えてみました。でも、提督はとても怖い顔をしています。どちらかというと自分を責めているような。
そして、開発をすることになりました。資源は上限の750しかないけど、いっちばんいいのを作ります。けれど意外と難しいです。ペンギンとモコモコが沢山できました。
なにか背後に怖い気配を感じながら、ようやく一つ完成したのが、こちらの22号対水上電探です。でも、これをつけれるわけではないです。
気がつくと日が暮れ始めていました。急いで夕餉の支度をして、寝ます。今回はあたしも食べたいため、よりいっちばーんです。
そして、少し少なめの食事をとって寝ます。ブルーシートに寝ると、昼間の提督の怖い顔を思い出します。やっぱり辛かったのかな。
あたしは一番のお姉ちゃんなのに、他の人を不安にさせていい訳ないです。理由は一番のお姉ちゃんだからです。
とは言っても相手は提督。こんなことをしてもよいのでしょうか?たぶん寝てるよね。
「ごめんね、きっと提督のほうが辛いはずなのに、過去のあたしの話をしちゃって。あたしと関わったせいでこんな島に連れてこられて、あたしと関わったせいで同じ見た目になって」
疲れているはずの提督に、あたしが辛かっただけで頭を撫でている。頭を撫でるのには、あたしのお姉ちゃんとしての自己満足もある。
嫌われているのが伝わってくるせいで、あたしは辛いんだって、こんな島に連れてこられたのが嫌なんだって、ただ伝えたくなってしまっただけです。
「あたしは…ううん、提督も疲れてるんだよね。気持ちが混じり合っていて、きっとそれは辛いよね」
ごめんなさい、寝ている人に言っても意味なかったね。
そして、急に爆発がおきました。つまり敵襲です。艤装を展開して、出撃の用意をします。きっとさっきの爆発で提督だって起きています。
「提督、起きた?ちょっと待ってて倒してくるから」
そう言って白露、抜錨します!
電探の反応していた場所に向かって動きます。敵艦が動いていたら見つけられませんが、いなかったら戻ればいいだけです。
『てきかんはっけんやで』『じょうほうかいせきかんりょうや』『ほな、いきますか』
相手は…重巡ネ級?!前の鎮守府でもθ中将がことあるごとに怒っていた敵艦です。あちらは改とかエリートだったけど、あたしにとっては十分すぎる強敵だよぅ。
あの深海棲艦を島に近づけては提督に被害が及ぶから、いっちばん頑張ってひきつけます。旗艦は沈まないよ!
まずは魚雷攻撃です。夜戦の魚雷は見づらいから運がよかったら当たるかも。
「魚雷発射ッ」
『いてまうぞ』『くらいなはれ』『ほな、いってきますわ』
魚雷命中までの時間を数えます。その間にネ級の砲撃が始まりました。あたしも砲撃の用意を始めます。なるべく近くによって、攻撃を避けつつ攻撃をします。
『ぎょうかくこてい』『そうてんかんりょう』『ほな、いってきますわ』
魚雷は命中しませんでした。いつまでも残念がっているわけにはいきません。砲撃の秒数を数えます。相手は重巡のため魚雷はないはずです。
「15,14,13…10ッてー」
『めいれいがでたで』『しれいやで』『ほな、いってきますわ』
連装砲の中で爆発し、弾が発射されました。…あたってない。次発装填します。そうしてまた、砲撃の用意をしていると、ネ級の攻撃が来ました。
「――――」
右腕が吹き飛ばされました。肩から下はなくなり、体のバランスが不安定です。左手に連装砲を持っていたので攻撃可能ですが、当たりづらくなりました。
『しんじょうほう』『てきかんちゅうは』『ほな、いってきますわ』
中破?!じゃあ大破にすれば勝てるってことだよね。夜戦だったら戦艦と同じくらい活躍できるあたしたちだから、練度10のあたしでもいけるはず。
「一番に突っ込むよ!ついて来てー!」
『もちのろんやでじょうちゃん』『どこでもついてってやるで』『ほな、いってきますわ』
次発装填済みの主砲を打ち鳴らします。
「いーっけぇー!」
よしっあたった。妖精さん敵情報を教えて。
『あまりくらってないんとちゃうかなぁ』『せやね、こうかなしやね』『ほな、いってきますわ』
え…重巡ネ級ってそんなに硬いの…?無理そうだよ提督。あたしにあれは倒せなかったよ。でも、いっちばん重要なのは、ただ生き残ることそれだけです。
逃げたら提督に被害が及ぶから、護るためには他の方向に逃げて、敵艦をまくしかないです。注意をひきつけるためなので、仰角設定は特になしです。
重巡なのであたしより速力が遅く、後ろに下がりながら撃てます。うまく引き寄せつつ、相手に勘付かれないように緩急をつけます。
「――――」
2発目が当たりました。腕ではなく、お腹の部分で、腸がたらりと垂れています。全身の力が抜け、崩れ落ちます。
「フーッフーッ」
生きることのできないような傷、ただし普通の人間ならば、です。旗艦に沈むことは許されず、無限にも続く痛み。早くこんな痛みから逃れたいけど、護ることが優先の魂は失われない。
薄目でぼんやりと見えるのは、もう一人のあたし。旗艦は沈まないはずなのに、ドッペルゲンガーが来たように思えます。
しかし、それは救けるべき人で、あたしの提督でした。なんで艤装をつけてこの海を来られるのか、なんでこんな危険な場所に来たのか。聞きたいことは山ほどあります。
「て、提督?…なんで?」
そして、遠くで砲撃が響きます。でも、砲撃が聞こえるということは近い証拠です。
「ガッフ」
背中に砲弾が飛び込み、その先にいる提督を護ります。でも、踏ん張る力はなく、転がっていくことになってしまいました。
「白露、お前もう戻れよ」
そんな、酷い命令が下りました。提督のために頑張って護っていたのに、そんな言い方はあんまりです。でもあたしはお姉ちゃんなので、感情のままに言いません。
「それは、てい…提督のためになれないから、かな。まだ、た、戦える。護れるよ」
それで、力を振り絞って押した手は提督に何の影響も与えず、力尽きます。きっと提督のためならまだ戦えると希望を持ちます。
勝てないかもしれない、でも提督が助かるなら艦娘として十分な任務達成だよ。だから提督、逃げて。
「よし、白露。5分でいけるか?」
どこまで?と聞かなくても提督の目線の先と、言い方でどこだか分かります。提督の命令は続行のようです。
「往復なら、もう、少し」
「じゃあ未来を考えるな、過去か今を考えて、帰ってこい」
提督、艦娘に容易く過去とか言っちゃだめだよ。でも、たしかに力をもらえた。つまり、助かるかどうかを悩むのではなく、救けることは確定事項として動けということだと解釈します。
そしてノロノロと海の上を滑り、島まで戻ります。戻ったら…じゃなかった、あたしだって艦娘なんだ、だったら海を渡れる。