補給途絶鎮守府   作:フユガスキ

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色々とする⑨

 そんなことを思っていると、食堂の利用可能時間が来て、利用客が一気に雪崩込んだ。やはり15分という短い時間で食べ終わらなければならないため、少しでも早く食べたいらしい。

 

「じゃ、僕は中のトイレを使うことにするよ」

 

 そう言ってα大尉は中へと消えていき、男子トイレの前には俺のみが残った。

 

「ま、入るか」

 

 これでトイレが使用できるので、中に入って個室で小便をする。女子の体だからね。仕方ないね。

 ただ、座って小さい方をする感覚は、男の頃とは違って中々慣れない。

 

 適度に尻を拭いて、手を洗いに行くと丁度誰かが入ってきたようだ。

 

「え、あ、すみません!間違えました……え、あれ?え?」

 

 その男――ι少尉は俺の顔を見るや否や飛び退いて外に出て、けれどもまた入って近づいてきた。なにがしたいんだ?

 

「あの、白露。ここは男子便所だが?」

 

「そうですね」

 

 それがどうかしたのだろうか。男が男子トイレを使う。別に普通……あ、そっか。ι少尉には艦娘だと思われていたのだった。

 

 やばいなぁ。一応、α大尉の艦娘として演じなければならないのに、どう言えば言いくるめられるのだろうか。

 

「取り敢えず、出ていってくれ」

 

「はい」

 

 おぉ、良かった。話さなければバレることもないだろうし、一件落着である。

 

 男子トイレの出入り口から出ると、そこにはι少尉の近くにいた艦娘が立っていた。

 あぁ、これはもう読めた。先の流れが読めてしまう。これぞ、一難去ってまた一難。

 

「ι提督、お早いで――ぇ、白露ちゃん?」

 

 その艦娘は俺を見た途端、目を大きく見開き口をパクパクさせながら固まってしまった。きっと、漫画ならカチコチになっているだろう。

 

「ぁ」

 

 そういえば、この艦娘の名前は何というのだろうか。……そうだな。カチコチなのだし、クリスタルのお嬢とでも呼ぼうか。って、本人に言えるわけ無いだろ。

 というか、あだ名で呼べるほどの仲じゃないので、あちらから話しかけてもらうことでしか会話ができない。決して、俺の会話デッキが皆無だから、とかそういう理由ではない。

 

………話しかけてこいよぉ!なんだよ!こっちは気まずいんだよ!

 いや、待て。冷静に考えれば、話す必要無くないか?むしろ、マイナスではなかろうか。

 うん、そうだな。よし、適当に挨拶をしてここを去ろう。いや、挨拶をしなくてもいいかもしれない。適度に頭を下げるだけで問題ないはずだ。

 

 頭を少し下げてクリスタルのお嬢の前を通り過ぎ、食堂に入る。よし、よし。我ながら完璧なムーブだった。足音を立てずに相手の視界の端へと消えていく。うむ、完璧すぎる。まぁ、何回も使ってきたので、今回も成功しただけなのだが。……あれ、何か涙が。ペロッ。これは精神的ダメージを負ったときの味ッ。




元ネタは汗を舐めてる方。青酸カリじゃない。
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