クリスタルのお嬢と別れて食堂に入り、α大尉の金で料理を食べる。なぜ俺がα大尉に奢られているかと言うと、α大尉の艦娘だかららしい。もしや、艦娘って無一文なのか?
まぁ、だとしても奢られるというのに悪い気はしないので、遠慮なく食べよう…と思っていたが、昨晩は下痢をしたので少なめの食事をとることにする。
「……」
いやぁ、それにしても、加工した料理が食べられるってのはいいことだ。
無人島にいた頃は焼き魚がメインだったが、それだけでは素の味は誤魔化せない。どうせ何かを食べるのなら、なるべく食べ物は美味しく食べたい。
というか、俺って二週間もよく生き残れたな。何か、前にも思っていた気がするが、本当にすごいと思う。もちろん俺だけじゃなく、白露も川内も神通もいたので俺だけの力ではない。それでも、無人島生活は辛かった。この辛さは終わってから実感するタイプなだけに誇張な感じもするが、やはりあの時の精神状態は危険だったと思う。
だって、ネ級やホ級といった深海棲艦を見たら、怖すぎて逃げるのが普通だ。むしろ逃げたくても逃げられないのかもしれない。けれども、俺はそれなりに立ち向かっていた。
これについて批評を加えようと思えば、背水の陣だった、や、生存が難しい状況で極限状態に陥っていた、などときっちりと科学的に見ればいくつも出てくるだろうが、そんなものは後出しジャンケンであり、考えるべきはそこではない。
……おっと、難しいことを考えようとすると箸が止まってしまう。時間がないので早く食べねば。
取り敢えず、消化に良さそうなものを食べ終わり、α大尉とともに部屋に戻ることにする。ちょうどその時、ι少尉とクリスタルのお嬢、いや元·クリスタルのお嬢とすれ違い、その際に元·クリスタルのお嬢に手を握られた。
「?」
急に握られたため手を固めていると、元·クリスタルのお嬢は手を離し、俺の手にはぐしゃぐしゃになった紙切れが置いてあった。
「どうかしたのかい?」
「いや、何でもない」
握らされた紙切れをポケットに入れて、トイレに行くとだけα大尉に伝える。
「さっきも行ってなかったかい?」
「女子のトイレは早いんだよ、知らんけど」
空いている個室に入り、紙切れを見てみると、どうやら文字が書かれていた。
内容は、この後、お話を聞きたいので迎えに行きます。準備をお願いします。とのことだった。
「拒否権はないんですね、分かります」
まぁ、拒否する気はないが、α大尉にこれを伝えるべきだろうか。いや、伝えないほうがいいな。たぶん。
文の最後には榛名と書かれていて、恐らく差し出し人の名前だと考えられる。まぁ、もしかしなくても元·クリスタルのお嬢だろう。
いや、でも、これが艦娘の名前だとすると、迎えを用意するのは艦娘だということだ。つまり、何が言いたいのかというと、この迎えにι少尉が関係していない可能性が高いということだ。
要するに艦娘の独断で動いているのだとしたら……って考え過ぎか。艦娘が独断で動くことなんて……いや結構心当たりあるな。漣とか朝潮とか。
そうすると、やっぱり艦娘の独断か?うーん。分からん。