「えっ生きてるの?!え、えと、喋らないようにしてね」
白露は仰向けになっている叢雲の頭を引き、口を上にして気道を確保している。いや、海水を飲んだわけじゃないんだから、処置は違うだろ。
目立っているのは全身の火傷と、右足の膝から下の壊れ具合、足元のおそらく骨折ぐらいである。顔は見てわかるとおり、どう止血すべきなのか検討もつかない。
火傷をすると基本的に血は止まる。海の固形物にでもぶつからない限り出血することはない。叢雲を見ても汚れている血は固まっているものが多く、血が新しく流れているところは少ない。
骨折は木を当ててどうにかなりそうではあるが、それでも全てに関して衛生的に悪いだろう。できれば濡れている砂の上より、ブルーシートの上に持っていったほうが幾分か楽になるだろう。
「ブルーシートのとこ持ってくぞ、妖精も手伝ってくれ」
『任せといて。みんな、叢雲さん運ぶよ』
『ちからのみせどころ』『えんのしたのちからもち』『わたしのせんとうりょくは53まんです』
『わしらのでばんやで』『わいがせんとう』『ほな、いってきますわ』
思っていたより多いが、これだけいれば頼りになる。白露は補給用の資源を、俺は青妖精を連れて飲水の確保に当たる。
水の生成としては雨水を使用したい。正直、雨水も相当汚いが、海水を飲むより飲めるだろう。…たくさん飲まなければ大丈夫だと思う。
前に妖精たちによって海水を白露もろとも浴びたときに使ったバケツがあったはずだ。修復剤のバケツはなぜか消えている。
そのバケツを見つけてみれば、ちゃんと水が入っていることが分かる。良かった、風に飛ばされていたら完全に振り出しに戻るところだっただろう。
一滴もこぼさないようにバケツを運んで、ブルーシートの前に戻ると、燃料を飲ませている白露を発見した。あれ?もしかして飲料水いらない?
「あっ提督。ちょっとそのバケツ貸して」
白露は俺の手に持っていたバケツを奪って、叢雲の近くにおく。そこからが奇妙で、自分の服を破り始めた。大体15cm幅で自分の体2週分を取り、更にそれを半分に切った。
片方を膝の上に置き、もう片方を折りたたんで水浸しにする。そして、水浸しの方で叢雲の体を拭いている。
「これは、妖精さんに教えてもらったんだよ。ここにいる妖精さんたちはほとんどが工廠の妖精さんだから、詳しいんだって」
白露らしからぬ手際の良さに納得しつつ、自分のやることを考える。やること…やること。いや、妖精に聞けばいいじゃん。
「妖精、俺ができることなんかあるか?」
『うん、長めの枝で足を固定しよう』
そう言うので枝を十数本用意して、青妖精の指示に従って、応急処置をしていく。
「よくこんなの知ってたな」
『…前の提督の命令だったからね』
大破艦娘がたくさんいて、その艦娘らの入渠時間を減らす措置だったらしい。初期はおやつとか貰えてWin-Winでやってるつもりだったが、人間と艦娘の格差に気づいてからはずっと大破し続ける艦娘からおやつを貰うのは辛かったそうだ。
俺としては勝手に感情を分かった気になって勝手に傷ついてるだと思う。とはいえ、事実だけ取ればこういう場面で活躍しているのでいいことだと思う。