補給途絶鎮守府   作:フユガスキ

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お久しぶりです。


艦娘って人間とは違う

 白露が展開した艤装と、今目の前に佇む艤装とを互いに見やると、なるほど、確かに細かい部分が変わっているようだ。

 

「えーと、何を改装すればいいんだ?」

 

「いや、提督は改装の許可だけ出してくれればいいよ。そうすれば、あたしが入れ替えておくから」

 

「そうか」

 

 昔、小学生のときにこういう許可というか命令というか嫌がらせ的な縦社会の遊びをしたことがあったな、と懐かしく思いつつ、結局あれはイジメだったことも思い出し、吐き気の催すような嫌悪感を感じながら、白露に改装の許可を出した。

 

「なんか、顔怖いよ?」

 

「いや、やっぱり、俺って上司って性格じゃないんだなぁ、と思ってな」

 

 まぁ、やれと言われたらできなくはないが、ストレスが溜まりそうではある。主に思い出によって。

 

「ふぅん」

 

 白露は興味なさげに相槌を打って、艤装を弄っている。

 素人目であるが見たところ、主砲は今まで白露が持っていたものより、少し小さな物のようだ。とすると、火力が弱かったり飛距離が近かったりするのだろうか。

 そしたら、主砲は交換しないほうがいいと思うが、わざわざ交換するのだし、何かしらの理由があるのだろう。それが対空CIなるものに繋がっているのかもしれない。

 

 そして、その小さな主砲が二つと、艤装に取り付けられてる円柱状の何かの装置を取り外し、自分の艤装に設置した。

 

「それは?」

 

「あぁ、これ?これはね、高射装置っていうんだよ。91式だね」

 

「高射……装置?91式…?」

 

「あー、えっと。高射装置っていうのは、えーと、取り敢えず、対空砲火に役立つもので、さっきの対空CIに使うもので、91式っていうのは、零式の前のものだよ」

 

「ゼロ戦の話?」

 

「あーうん。それそれ」

 

 どういう計算してるのかよく分からないが、取り敢えず必要なものなのだろう。知らんけど。

 

「っていうかさCIって何?ゲームならカットインだけど」

 

「同じだよ?」

 

「え?」

 

 何言ってんだこいつ。リアルにカットインが存在するわけないだろう。さっき、技術だとか言っていたのに、それ関連じゃないのかよ。

 

「えっとねぇ。魚雷カットインとか対空カットインとか、あと弾着カットインとか、色々とあるんだけど、全部、なんかこう、いける!って思った時にするものなんだよね。んで、それは戦ってるうちに身につくから技術かな」

 

「でもカットインだろ?」

 

「うん」

 

「カットインってどこから来た?」

 

「…………さぁ?」

 

 というか、何となくの攻撃って戦闘としてアリなのだろうか。戦闘ってできることを100%こなしていくイメージだったが、そうでないとすると、それほど練習の詰めない環境下にあるか、それとも本当に所謂カットインなのか、のどちらかだろう。

 白露の提督は元々はθ中将だったし、そういうところをしっかりシステム化してると思うんだがなぁ。ほら、イージスシステムってあるし。

 

「とにかく、戦艦とか空母って凄いんだよ!カットインで全部バーッて。かっこいいよね」

 

「そうか」

 

 全くイメージが湧かないが、取り敢えず相槌だけ返しておく。

 すると、どこからか、スピーカーのプツッという音が聞こえ、放送がなされた。

 

――1445、作戦基地にいる第四艦隊第七八九輸送部隊、第四五六護衛部隊に告ぐ。1455より艦娘の出撃準備を完了し整列、1500にて作戦開始せよ――

 

「――ッ、提督、どうするの?」

 

「そうだな。俺にはなんのことか分からないし、キリサキのところに行くのが先決だろ。たぶん」

 

 そもそも、輸送部隊ってなんぞ?字列だけ見れば何かを運ぶ部隊だろうと予想できるが、何かを運べと言われてないため、俺には関係のない話だろう。

 なので、取り敢えずは知り合いのところに転がり込み、何がどうなっているのかを聞き、俺が何をすべきかを考えるのが先である。無論、首を突っ込まなくて良いならそれに越したことはないが、この場に来た以上どこかで関わらねばいけないはずだ。例えば、α大尉とι少尉との談話の場を用意するとか。

 

 兎も角、善は急げと白露を連れて工廠を出て、作戦基地に戻ることにした。途中、海水と血液でビショビショになって歩いてる艦娘の横を通り過ぎ、受付のようなところに入ると、ちょうど探していた人物がそこにいた。

 

「いや、だから、私は部屋を使いたいんですけど、何号室が空いてるのか分からないから、部屋割を見せてと言っているんです」

 

「いえ、あの、一般の方にはご覧いただけないものでして……」

 

「だから、私は中佐ですって」

 

「ですから、それを証明できるものをご持参頂けませんと、こちらとしても対応しかねます」

 

「ちょっと、忘れただけなんだって」

 

 うわー、関わりたくねぇー。まだ長そうだし、先に自室にでも帰っておくか。いや、キリサキのいる場所が分からないと、何かと困るだろうし、ちょっと待っていようか。

 ということで、キリサキが厄介客のようなことを言っているので、一旦外に出ると、白露が辺りに見当たらず、代わりに漣がいた。

 

「あ、漣。ペットの放し飼いは推奨されてないぞ」

 

「え?えっと……どこの白露さんでしょうカ?」

 

 ン?

 

「えっと、さっきまで船で一緒にいたじゃん?」

 

「え……と、たぶんですけど、それはまた別の漣ですネ。私はα大尉隷下、駆逐艦漣改デス」

 

「え、キリサキ中佐じゃなくて……?」

 

 ど、どういうことだ?漣はキリサキ中佐の秘書艦だったはずだ。

 でも確かに、あの漣のような気迫というか雰囲気は感じないため別人のように思えるが、漣は漣一人しかいないだろう。

 

「あーー、思い出しマシタ。あの島の2号の方ですか。その節は靴じゃなくて命を落としかけたツンデレラちゃんこと叢雲がお世話になりマシタ」

 

「えぇ、まぁ――」

 

「――って、そんなことより、なしてアンタがここさいるべなぁ?」

 

 どこから来た、その方言。なんてツッコミを入れつつ、漣のキャラのあまりの代わり映えに困惑した。

 どう考えても、あの月曜日の朝のような目をしている漣が、今の祝日が入り2連休になった日の2日目の朝みたいな目をする漣に変われるとは到底思えない。

 

 とかなんとか思っていると、後ろから同じ声質だが落ち着いた声音が聞こえた。

 

「あれ、意外と早かったですネ、少尉」

 

 アイエーーー!ナンデ!?サザナミ、フタリ!!ナンデ!!?

 

「どうしまシタ、少尉。そんな街の雑踏の中に美少女を発見したような顔をして」

 

「そりゃあ、同じ漣なんだから、美少女に決まってるじゃないデスカ〜。テレテレ」

 

「えー、と。……え?」

 

 俺のイメージ通りの漣と真反対の性格の漣の2人がやいのやいのと俺を囲んで話している。

 いやいや、まじでどういう状況だ、これ? 艦娘って双子とかあるのか? いやでも、そういえば、姉妹艦というものがあるらしいし、双子があっても不思議ではないのか。

 

「それで、少尉。そちらの艦娘はお知り合いですカ?」

「2号さん、そっちの漣はどこ所属ですかネ?」

 

 被った声に互いに驚き、困惑する二人と、全く何もわかっていない俺が集まったの図。三人寄らば文殊の知恵とはよく言ったものだが、必ずしもそうとは限らないらしい。

 

「二人は双子とかじゃないのか?」

 

「「いやいや、全然、全く、一ミリも」」

 

 とてもお似合いなことだ。

 俺の知る漣の方は、キリサキ中佐初期艦兼秘書艦と名乗り、俺を2号を呼ぶ漣の方は先ほど俺に名乗ったように名乗った。

 

「あー!やっと追いついたぁ!」

 

「ぁ?」

 

「もー、待ってって言ってるじゃん。って、どうしたの?」

 

「いや、別に?」

 

 そういえば、俺の見た目は白露なんだし、これはこれで双子と思われるかもしれないな。

 

「そういえば、キリサキは?」

 

 そもそもここに来たのが、キリサキを探しに来ていたことだと思い出した俺は、キリサキの方の漣にこれを問いだしてみると、まぁなんか長そうだったので置いてきた、と答えられた。まぁ、そうっすよね。

 

「おまた〜、ってあれ?どうしたの?こんな、集まっちゃって」

 

 噂をすればなんとやら。本人の登場である。しかも付属してα大尉と艦娘まで付いてくる始末だ。

 

「おや、少尉くん、心配したよ。元気そうで何よりだ」

 

「こんな、人一人守れない無能を押し付けてしまい申し訳ないのです。ほら、さっさと謝れなのです」

 

 ちょっとキレ気味に背の高いα大尉の膝を蹴って、目線が同じくらいになるように両膝をつかせた。急なことにかつてない驚きが……いや、この驚愕ぶりは前に一度あったような……。

 そうだ、思い出した。まだ孤島にいた頃に、叢雲を探しにやってきた艦娘の内の一人で、名前は確か

 

「デンちゃん、だったか」

 

「その名前、誰に教わったのです?吐かなかったら、半殺しなのです。吐いたらα司令官さんの首を吹き飛ばすのです」

 

 な、なんで、α大尉の首を吹っ飛ばすんだ?

 いや、まぁ、確かに、この名前はα大尉がそう呼んでいたから勝手に俺が覚えただけだし、その意味でα大尉に教わったと言えなくはないけれども。

 あ、なるほど。既にα大尉から教わったと気づいているということですね、分かります。とデンちゃんの言葉の意図に気づいた頃にはもう遅く、手に持ったイカリの尖った部分を頭に振り下げていた。

 

「この世のすべてをそこにッ」

 

 いや、解りづらいわ。途中でセリフ終わらせるなよ。確かに断頭台っぽいとは思うけど。

 α大尉は上手く首を使って、イカリの切っ先を逸らし、コンクリに頭を打ち付けることで死を免れた。

 

 だが、その判断はデンちゃんにとっては好意的な状態で、その頭の上に足を乗せて、更に追い打ちをかけようとしたが、途中でやめた。

 

「流石に、解体はゴメンなのです」

 

「そうだね。ここらで切り上げないと、僕らの将来に関わる」

 

 取り敢えず、キリサキ中佐の執務室にお邪魔しようか、とα大尉が提案し、漣二人と何やらアニメの話をしているキリサキは話半分に快諾して、部屋に向かうことになった。

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