所変わって、作戦基地内にある二階の奥から3列目の大部屋。ここがキリサキ中佐の一時的な執務室となるらしい。現在謹慎中のθ中将の代わりだとか何とか。
だが、大部屋と言っても、俺と白露とα大尉とデンちゃん、キリサキに漣、その他の艦娘7名の計13名が介すと流石に狭く感じる。
「今回の第一海域の第一ゲージは相変わらず、輸送だから、今回も大発を積んでもらうんだけど、空襲が一回入ってちょっと強めだから対空装備を皐月と五十鈴の二人で固めといて、後、対潜があるけどこっちはあんまり気にしなくても大丈夫。一応、五十鈴にソナー着けとくね。で、Qマスのボスだけど、S勝利2回でギミックあるから、最初は戦闘面重視で、ギミック終わったら輸送重視。あと、索敵も若干あるから睦月に電探と千歳に瑞雲六三四空、乗せといて……」
?????
こいつ、本当にキリサキか?テキパキしすぎだろ。というか、ゲージってなんだよ。ギミックってなんだよ。マジで意味がわからない。
「んで、旗艦が五十鈴で、二三番艦が千歳、最上、警戒陣あるから睦月と如月、皐月が第四五六番艦。七番艦は文月さまね。通信機は五十鈴と文月さまが所持してるから、連絡はどちらかに伝えてね」
「五十鈴に任せなさい!」
トラックみたいな名前の艦娘が返事をし、ツカツカと部屋を出ていき、他もそれに続いて出ていった。
「あれ?そういえば、漣は行かないのか?」
「ええ、そうですネ。作戦中は忙しいので秘書艦が必要になりマスし、むしろ、猫の手も借りたいぐらいですネ」
へー。キリサキって大変なんだな。腐っても提督ってことか。
などと思っていると、α大尉がこれで失礼しますと言って、急に立ち去ってしまい、残されたのは俺と白露、キリサキと漣の4人となってしまった。
「あれ?白露提督はここにいて大丈夫なの?」
「特にやることもないしなぁ。いやまぁ、出ていけというのなら、出ていくけど、なんかα大尉にお前の近くにいろと言われてしまったからな」
「え、やっぱり、もしかして、白露提督って提督じゃない?いや、何というか、所謂軍人みたいな感じじゃないの?」
「ん、まぁ、違うな。特例提督?っていうの聞いたことない?」
そう聞くと、あるっちゃあるけどない、とキリサキは答えた。どっちだよ。
「でも、安心したわ。私も中佐って言うほど軍人じゃないし、そもそも高校生だし」
え、てことは、キリサキも特例提督なのか?と、すると、俺ってもしかして、特例提督の中でもだいぶ弱いほうなのでは……?
「でも、にしては、キリサキ、だいぶ艦娘多くない?」
「あー、それは、まぁ、うん。そうだね」
「どうやって増やしたし」
「あー、それはちょっと企業秘密かな〜」
キリサキは徐にスマホを取り出して、画面に注視した。あ、話題を流そうとしているな。
「じゃあさ、どうやって戦ってるのか見せてもらえる?やっぱ意見交換って大事じゃん?」
「白露提督、なんか遠慮なくなってない?」
言いながらキリサキは漣の方に視線を向けると、漣は肩をすくめて、まぁいいと思いますよ、と言った。
「あ、それってあたしも見ていいやつ、ですか?」
今まで空気だった白露が久しぶりに発言したが、キリサキはまたもや漣を見て、漣は一人も二人も変わりませんよ、と返した。
「じゃあ、川内さん達、呼んでくるね!」
「いいのか?」
「まぁ、漣が良いって言うなら、良いよ。というか、そしたら、大きめなディスプレイを持ってこようか。漣、頼める?」
「分かりましタ。少尉も一緒に来てくだサイ」
「おけ」
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「少尉、正直言って、ご主人様の戦略は参考にならないですヨ」
漣が、二番倉庫と書かれた倉庫の出入口から体格に見合わないディスプレイを軽々と持ち運んで出てきながら、そんなことを言った。
「ご主人様は前提条件として、深海棲艦の出没地と編成を事前に知った上で、こちらの編成を組み上げていマス。動きの読みづらい潜水艦や、航空機による奇襲、深海棲艦に最も重い打撃を食らわせる方法、などなど、それらを知った上で、デス。ハズレのない情報と、確実な未来視、むしろ、未来予知の域、をまず、揃えていマス」
「うん」
「しかも、普通は護衛艦隊と輸送艦隊と主力艦隊の三艦隊が役割を分担して攻略しているものを全て担う、たった一部隊で攻略しているのだから、作戦自体もあり得ないし、それを可能とする艦娘の練度も異常デス」
「ん」
「だから、ご主人様を真似るなんて、はっきり言って少尉には無理ですヨ」
「そか」
ごめん、何も聞いてなかった。いやまぁ、真似できないよ、というのを力説してるのは伝わるけど、そこからどうして欲しいのか、分からない。
参考にならないから諦めてくれ、と言っているのか、参考にしてもいいけど真似しようとは思わないでね、と言っているのか。どちらにせよ、俺には戦い方なんて知らないので、例え異質であったとしても知っておきたい。
「あ、そういえばさ。ι少尉って、分かる?」
「いえ、知りませんヨ」
「なんか、その人に世界平和目指そうぜ、って話しされたんだけど、ついでにα大尉とお喋りしたいから場を用意してって頼まれたんだけど」
「あー、場が用意できないから、漣に頼みたい、ってコトですカ?」
「そゆこと。よく分かったな」
白露にない頭のキレの良さに少々感心したが、漣の、ご主人様は漣から聞かないと喋ろうとしないですからね、という言葉に納得した。
何やかんやと話していると、先の部屋に着き、足でドアを開いて、持ってきたディスプレイを中に入れた。大きなドアで良かったが、それでも斜めにしてギリギリである。
「提督、遅いよ!」
一番に声を上げたのは白露だった。そのままこちらに駆け寄りそうな勢いだったが、予想外に大きなディスプレイにちょっとたじろいでいた。
「お、提督〜、手ぇ治ったよー」
「ご無沙汰です。提督」
川内がドックのときに消し飛んだ右手をヒラヒラと振ってアピールし、久しぶりに顔を見た神通はどこ怯えた表情がサッパリなくなっていた。
「提督殿、揚陸艦神州丸です」
そして、フードを被って異彩を放っている彼女は、おそらく俺の、え、誰?という視線に気づき名前を名乗った。え、誰?
必死に思い出そうとするが、あの島にいたときにいた艦娘に、彼女はいなかったような……?
「あの、後がつっかえてるんで、早く入ってもらえませんカ?」
「あ、悪ぃ」
大きなディスプレイを壁に設置し、キリサキのスマホから画面を飛ばしてディスプレイに映した。
すると、大海原を駆け巡って戦闘を繰り広げる大勢の艦娘達の姿と、その艦娘達と対等に戦ってる深海棲艦の群れが確認できた。
「PTか……」
キリサキがボソッと呟いたが、それ以上は言わず、また黙りこくって海戦を見入った。
『相変わらず、よく避ける奴らね!』
『ふえぇ、当たらないよぉ』
「取り敢えず、そこは倒さなくてもいいから、攻撃を受けないうちに進んで」
通信用のマイクにそう伝え、それが伝わった旗艦からの指令により七艦娘のスピードが上がり、映し出される動画を撮るカメラのスピードも上がった。
「そういえば、このカメラって誰が持ってるんだ?」
「え?文月」
「持たせてたっけ?」
「いや、目からそのまま」