補給途絶鎮守府   作:フユガスキ

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今回は文月視点。世に文月のあらんことを………


快進撃!遊撃部隊!

 どうも、司令官曰く、遠征でいつの間にか改二に成っていた方の、二人目の駆逐艦文月改二です。一人目の方は自分の艦隊相手に演習をして、練度上げまくってケッコンカッコカリも結んでいます。

 

 今回はあたしも初めてとなる中規模作戦への参加で、睦月、如月、皐月も同じである。旗艦の五十鈴は何回も登板しているベテランで、千歳も最上も今回が初めてではないらしい。

 

「そろそろ、提督の言っていた戦闘マスに到達するわ!最上、瑞雲を出してちょうだい!」

 

「あいあいさー、ってね」

 

 敵が近くになってきたから艦載機を出す、なんてちょっぴり不思議な感覚である。本来であれば、周囲の警戒用に数機を出しておくものだ。

 それに偵察機ではなく爆撃機というのも妙だ。まるで空母がいるなんて考えてない、と言っていると驕っているかのように感じられる。

 

「お、発見!提督が言ってたように、PTの数が多いね。駆逐艦と軽巡もいるから、先に片付けておくよ」

 

「お願いするわ」

 

 え、あの話、本当だったんだ。睦月も如月も皐月も、司令官凄いね!と笑っている。

 そして、緊張感もなく進んでいくと、旗艦に警戒陣を取るように言われ、練習通りの位置に付き、接敵間際になると、どこかの艦隊に所属しているであろう艦娘が深海棲艦と血塗れになって戦っている場についた。

 

「気にしてる暇なんてないわ!先に進むわよ!」

 

 怯えて呆然と周りをフラフラと見回しているあたしに気づき、五十鈴は気合いが入るよう声をかけた。その言葉に、同じような状態だった睦月たちも気を取り戻し、行進し続けた。

 

「ちょっと!アンタたちどこの艦隊!?って編成的に輸送ね、遅いのよ!」

 

 左目とその付近が焼けただれた霞に声をかけられ、あうあうとしている間に鬼のような形相で急ぐように急かされた。

 なんでこんなド素人を連れてきたのよ、と捨て台詞を吐かれ、まだ改の霞は自艦隊の隊列に戻っていった。

 

「ほら、そろそろ戦闘開始よ!シャキッとしなさい!」

 

 遂に戦闘が始まり、陣形を崩さずにPTに対して放火したが、一発、二発、三発と射っても一向に当たる気配がない。

 

「ふえぇ、当たらないよぉ」

 

 PTも射ってくるが弾道が簡易なため避けることは可能だ。旗艦の取り敢えず逃げ切る、という判断のもと無傷で戦いを終え、次の対潜マスへと向かった。

 

「ここも追われない程度にダメージを与えてから、逃げるわ」

 

 まるで、敵を屠る気がないような、消極的な作戦だが、本当にこんな作戦でいいのだろうか。改二になって、そこそこの深海棲艦なら――例え戦艦だったとしても――相手取ることは可能だと自負しているため、ただでさえ多い深海棲艦の低級を倒さずに進むというのは、理解しがたいものだ。

 

「提督から伝言があるわ。とにかく、道中でのダメージは少なくして、できるだけ小破以下でボスマスに向かってほしい、とのことだったわ」

 

 司令官のこの言葉は、あたしが遠征していた頃から、作戦があるたびに祈るようにして発言していたものだ。いつでもはっきりと、机の上で手を組んでいる様子が思い出せる。

 というのに、司令官は深海棲艦を積極的に減らそうとはせず、回避の方向をとっている。意味がわからない。

 

「単横陣!」

 

 旗艦の指令により、一斉に横並びになり、来る潜水艦を待ち構えると、五十鈴が爆雷を投げた。

 

「五十鈴には、丸見えよ!」

 

 ソナーで潜水艦隊三隻のうち、一隻を撃沈したのを確認し、次いで来る潜水艦からの攻撃を回避する。そして、いとも簡単に残りの二隻を片付けてしまった。

 

「凄いね、司令官!やっぱり、ボクの司令官は超能力者なんだ!」

 

「そういえば、実は異世界人だって、聞いたことがあるにゃしい」

 

「そういえば、先輩達が噂していたわねぇ」

 

 司令官が実はこの世の人ではない、という噂が鎮守府内で語り継ぐられている。正直、交戦場所をマスと呼んだり、深海棲艦の主力部隊をボスと呼んだりして、中々普通では持ち得ない感性をしているが、この世ならざる人とは思えない。噂は噂に過ぎないと思っている。

 だが、それにしては噂はあまりにも冗談っぽくなく、ちょっと確かめてみたい気持ちもある。

 

「さて、次は空襲よ!気合い入れなさい!」

 

 叱咤を受け、皆緩んだ気を引き締め、来る空襲へと備える。こういう時、司令官はよく祈っていたものだ。

 

 しばらくすると敵艦載機と思われる機体が群雲のように現れ、輪形陣のあたし達に対空砲火の弾幕をくぐり抜けて爆弾を投下してきた。

 

「散!」

 

 旗艦の判断により、一斉に互いと距離を取り、少しでも艦載機からの被害を減らす。妖精さんの不思議な守りも相まって、雪崩のように立て続けに降ってくる爆撃を躱しに躱し、全体を見ても特筆すべきダメージはなかった。

 

「次が来る前に逃げるわよ!」

 

 艦隊の速度を1段階上げて、敵艦隊の索敵圏外へと逃れる。だが、実のところこれは、一応敵の術中である。そのため、輸送物資を譲渡した直後、所謂ボスマスへと到着する。ボスをここで叩かなければせっかくの物資がなくなってしまうので、S勝利を目指したいところだ。

 因みにこの物資は、ここを突破したあとに使えるようにしているらしい。あとは航空基地とか諸々である。

 

 航路通りに進み、目的地に到着したあたしたちは、妖精さんに物資をおろしてもらい、その足でボスマスへと向かった。今回は軽巡の姫級とヲ級fragshipに、潜水艦数隻とPTが数隻がいるらしい。あたし達だけで大丈夫だろうか、と心配したが、司令官曰く、連合艦隊でないだけマシならしい。

 

「あら、来たようね」

 

 普通の艦載機より一回り大きな影が、艦隊の上空を通り過ぎ、艦隊の進行方向へと一直線に向かっていった。あれは、基地航空隊である。

 千歳と最上が、おーこれまた派手にやったねー、あらいい仕事をしますね、などと盛り上がりながら、時々実況も交えて伝えてくれる。どうやら、ヲ級を中破まで持っていき、潜水艦を一隻沈め、一隻は中破にしたらしい。PTのせいで攻撃が吸われた割には、良い成果であるようだ。また、基地航空隊が撃ち漏らした敵艦載機は、皐月と五十鈴により多少減らしている。

 

 そろそろいいかなー?と言って瑞雲を送り出し、最上と千歳はとりあえず制空拮抗の状態にする。あとはこちらが頑張る番である。

 

 まず五十鈴が潜水艦のもう一隻を沈めてくれたので、視認距離まで近づき、PTの掃討に取り掛かる。当たりづらいPTだが、距離が近づけば近づくほど回避は不可能へとなっていき、互いにダメージを負いやすくなる。相手より自分の方が耐久が高いので、多少のダメージになっても中破までにはならない。

 最上は中距離から軽巡と一騎打ちしているが、流石に姫級ということだけあって、主砲を積まなければ太刀打ちできない。そのため、あまりダメージは見込めない。

 

 そして、ヲ級は割合ダメージと呼ばれるダメージで、なぜか大破手前まで持っていくことができ、そのままズルズルと夜戦に持ち込むことになった。

 

 こちらは千歳が中破、それ以外は小破と、予想されたダメージ量より少し良い程度に収まり、深海棲艦は残り姫級が小破、ヲ級が中破となっている。

 

 敵からすれば、ヲ級をデコイにして姫級を逃がすことを注力するだろう。と、予知した司令官から優先的にヲ級を沈めるように、と指示がなされていたので、五十鈴、最上、千歳、睦月、如月らがヲ級を撃沈し、皐月とあたしで姫級を討つことになった。

 

 5隻は照明弾を打ち上げ、ヲ級を引きつけて軽巡から引き剥がし、あたしたちは闇に潜んで回り込む。十分に距離を取ったら、皐月の探照灯を照射して姫級への一本道を作る。

 姫だろうが空母だろうが、気づいた頃にはもう遅い。妖精さんが魚雷を取り出して、シャッシャッシャッ、という音とともに、軽巡の横腹を狙って投射した。

 

 闇の中、一際輝く炎も水柱に、雷のような音を轟かせて、軽巡棲姫は轟沈していった。と同時に、ヲ級も撃沈し、問題なくS勝利を達成した。

 

「あたったぁ〜、良かったぁ」

 

 ふとした安心感に詰まった息を吐ききり、帰投の合図で作戦基地へと向かった。

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