すっかり夜も深まり、いつもなら夕飯時な頃合いにスクリーンに映る戦闘は終わった。
一日かけての戦闘。これを毎日やるというのだから、本当にどうかしていると思う。まぁ、ここまでしないと勝てないのかもしれないが。
先程まで俺たちは、キリサキが持ってきたポテチの袋を破り、ムシャムシャと食べながら観戦していた。どうにも手持ち無沙汰で無性に食べたくなってしまったのだ。
見終わってからの感想というと、何やってるのか分からないが、すげえな、って感じである。小並感。
神通は興味津々に画面に食入って見ていて、川内は夜戦まで寝るねー、と言って寝入り、今は興奮冷めやらぬ様子で起きて、私も行ってくると言って出ていった。意外なのは、白露が終始集中して見ていたことだろう。へぇ珍しい、とか、まぁそうだよね、などブツブツと呟いていた。
また、フードを被っているしん……しん何だっけ。しんまる?何か間に入った気がするけど、まぁいいか。のしんまるは途中で寝落ちした。隣が川内だったので、川内の肩に頭を乗せていたが、夕方になって目覚めた川内が肩から自分の椅子へとしんまるの頭を置き、川内は立っていた。
「神州丸、であります」
(こいつ直接脳内に……!)
しんまる、もとい神州丸はいつの間にか起き上がり、漣が注いだ麦茶を飲んでいた。あ、それ俺にも頂戴。
キリサキは、割と被害なく突破したし、輸送増やそうかな、とか、こっちは心配なさそうだし第二ゲージも進めるかぁ、などと呟いていた。
「あ、漣、バケツ渡して来て」
「分かりまシタ」
バケツ……!バケツは聞いたことあるぞ!確か、高速うんたらとか言う、艦娘の回復を促す緑色の液だったはずだ。
っていうか、あれって貴重なものじゃなかったっけ?そんな軽く使って良いものじゃあなかったと思う。
漣が部屋から出ていく姿を見送ると、いつの間にか神州丸がそばに立ち、紙コップに麦茶を注いで渡してくれた。
「神州丸、もしかして心が読めたりする?」
「いえ、特には」
落ち着いた調子でそう答えると、今度は割り込むようにして白露が、で、提督、これからどうするの、と質問した。
「そうだな。……何すればいいと思う?」
対空カットインなるものは確認しておきたいけど、夜に艦載機を飛ばせるわけではないらしいから、今はできないし、俺がいない間、何があったのか聞いておきたかったけど、その話は川内がいたほうがいいし、特別やることがない。
……あ、そういえば、神州丸がどんな艦種なのか聞いていなかったし、それを確認するのは必要だろう。まぁ、後でやるか。
白露に目を向けると、白露は白露でいい案が思いつかないようで、頭を捻っている。それを見たキリサキから、じゃあさ、と提案をもらった。
「友軍で支援してくれない?うまくいけば、輸送一回減るし」
「じゃあ、そうするか」
友軍って、どこかで聞いたことがあった気がするけど、どこだっけ?ってぐらいにしか、友軍について知らないが、キリサキが言うのだから、まぁ、大丈夫だろう。
明日の方針も建ったところで、そろそろお暇するよ、と伝え、部屋に戻ることにした。
――――――――――――
―――――――――
部屋に入り、時計を確認すると、時刻は22:05。夕飯時を少し過ぎたところである。
ちょっとしたら飯にでも行くか、と言うと、いや、私達必要ないし、と返答された。あっはい、そうですよね。
というか、そもそもどこで食べれるのだろうか。外にいたときに食堂らしいところは見かけなかったため、この施設内にはないのかもしれない。そうなると、インスタント食品が置いてあったりするのだろうか。
そう思って部屋の戸棚を一通り開けると、入っていたのは雑多な機械の線関係。俺は機械のは疎いほうなので何なのかは分からない。取り敢えず今は関係ないので閉まっておくことにする。
他にはないかないのか周りを見渡してみるも、特に目新しいものも見当たらず、諦めて座布団に座った。
机の上に上半身を預け、ぐだーっとしていると、座敷机の上の、菓子の入っているカゴの底に、円形のカゴに合わせるようにクシャクシャになった広告を見つけた。内容が何か気になり取り出してみると、何やら大きな文字で「祭」と筆で書いてあった。
なんのことかと思って、姿勢を正して見てみると、どうやら基地内で作戦決行の前夜祭が行われるらしく、それに乗じて地域の人々の協力のもと、屋台が出店されるらしい。しかも、タダである。
もう一度言おう、タダ飯である!
開始時刻は22:00からなので既に始まっているだろう。港から離れた内陸側の基地内でお祭りが賑わっているらしく、大目玉は巨大なスクリーンに映し出される艦娘の実践演習である。大きさは球場のスクリーンも白目を剥くらしい。
「なあ、近くでおまつ――」
「白露提督ゥーー!!前夜祭いこーぞ!!!」
誰も鍵を締めていなかったドアをドーン!と開け、行くっしょ?ねぇ、行くっしょ?と自然に流れるように手を組み、みんなも来なよ!と白露たちも誘って、俺の止める間もなく会場へと向かった。
外に出てすぐから、すでに周りの雰囲気はお祭り感を醸し出しており、昼間の戦場はどこに行ったのか、生々しい死を感じることはない。行き交う者全てがお祭りを楽しむことに全力であり、元から提督とはエンターテイメントだったと、錯覚してしまいそうになるほどである。
「そういえば、α大尉も実践演習出るらしいけど、見ない?」
「見る」
面白そう。
あと20分くらいで一試合目が始まるから、焼きそばでも貰ってこようか、とキリサキが言うので、じゃあ人数分貰うか、と答えて人数を数えようとすると、神通が、私は大丈夫です、と断った。
そのまま、神通は雑踏の中に紛れ込んでいき、おそらく知り合いらしい艦娘に挨拶をした。見た目は神通に酷似しているが、どこか神通とは違う。まるで、白露の改装前と改装後のような違いである。
「あれは、改二だね。ここ、改二少ないし、主戦力かな」
キリサキがいうのであればそうなのだろう。白露は焼きそばじゃなくて、焼き芋が食べたいと言って走っていき、神州丸は、飲み物を貰ってきますが、どうしますか、と訊いてきた。いや、貰えるもの、麦茶とビールだけなんだが。
俺とキリサキは、麦茶でお願いします……、と伝え、神州丸は、分かりました、と言って取りに行った。
「……というか、あいつら食べんのかよ」
「え?普通じゃないの?」
あれれ〜?おっかしいぞ〜?どうしてこうも、キリサキと俺は環境が違うのかなぁ〜?(ネットリ)