それぞれ、適当に口に運べるものを手にし、スクリーンの前に集合する。流石は中佐ということもあって、キリサキの連れであれば割といい席に陣取ることができた。
開始のアナウンスが流れたあと、紅白に分かれて戦うルールとメンバーの発表がなされ、初戦が始まった。ルールによると、全10試合での勝敗数で勝負が決し、試合を追うごとに高度な戦いになっていくらしい。具体的には、初戦が特例提督の中から選出した提督で、次からは階級に分けて争うようだ。
「この演習は、いい試合をすれば昇進のチャンスを掴めるからね。皆、躍起になっているさ」
急に声をかけられ驚いたが、どうやらα大尉が来たらしい。
キリサキに、あれ、演習は?と問われ、まだ少し先だからね、と焼きそばを3箱片手に隣に座った。
「それに、今回、僕は手の出しようがないからね。ルール上、執務室にいなきゃいけないけど」
「へー、あっ、そっか。対戦相手、そういえばプラズマちゃんと同期だもんね」
……?俺のわからない話をしないでもらえますか?いや、別にいいけど。
「あ、白露提督は知らないんだっけ。実はね、α大尉の初期艦の娘が、対戦相手のκ少佐の初期艦と同期の娘でね」
顔に出ていたのか、キリサキが解説をし始めた。
曰く、初期艦と呼ばれるものには、それになるための試験があり、試験までの知識を蓄えるための施設――所謂学校で3ヶ月ほど学ぶらしい。また、決められた艦娘が集う機会のため、性能の差の振れ幅の測定にも一役買い、そのカリキュラム内にある戦闘としての強さの、一位と二位が、デンちゃんとκ少佐の艦娘――吹雪らしい。
因みに白露はその学校を卒業しているのだろうか。いや、多分してないな。初期艦というか、説明を聞く限り秘書艦というものは、提督の補佐らしいので、あまり補佐というほど補佐していない白露は、その教育を受けていないと思う。まぁ、そこで学べない特異な例なのかしれないけど。
「じゃあ、お邪魔したね」
α大尉はそう言って空の焼きそばを3箱持って会場の方へと言ってしまった。食うの速いな。
すると何やらキリサキは、おーい!と手を振って、ホットドッグサンドを食べているロr……幼じ……女児たちを呼び出した。女児はセーフか?むしろ変態差が増した気もしなくもない。
呼ばれた女児――おそらく艦娘たちは、タタタッと駆け寄って、一人はキリサキの膝の上に、一人は左隣、一人は右隣、そして最後の一人は後ろから抱きつく形に収まった。この娘たち、どこかで見たことある気がする。
「両手に花よりも豪華ね」
「めちゃめちゃいい匂いですやん。もしや、風呂上がりですか」
「入渠してるんだから、当たり前じゃない」
遅れて歩いてやってきた三人のうちの一人、ツインテの子が、まるでロリコンを見飽きたけれど一応注意しておこう、ぐらいの気持ちの籠もった言葉をやり取りした。
ところでこいつのオパーイはすごいな。身長に比べてメチャクチャロケットしているオパーイだ。普段あまり胸に目はいかない、というより下を見がちな俺だが、それでもあのオパーイには目が引き寄せられた。まさにオパーイである。
思わず凝視しているとツインテの艦娘は怪訝な顔をして腕で胸を隠した。ふむ……この巧い具合の恥ずかしさと絶妙な胸囲、そしてツインテと口調。総合的に見て主観的な意見を述べると、この艦娘は完璧すぎて逆に刺さらないタイプと言えよう。
という紳士的な判断をしていると、隣で芋を食べている白露に足を踏まれたので振り向くと、見すぎ、と注意された。
「いや、あの絶妙なバランスで彩られた美しさは目に焼き付けておいて損はないからな」
「キモ」
白露、遠慮なくなったな。
キリサキの右隣を陣取っているロリが、こっちの白露さんたちは誰にゃしい?とキリサキに問うたので、キリサキがそれぞれを説明し始めた。
どこかで見たことがあるな、と思ったら、先程の戦闘を繰り広げていた艦娘たちだったようだ。
「白露さんってどうやって提督になったのか、ボクにも教えてほしいなっ」
「あたしも、知りたい」
金髪の……さつき?とかいう艦娘と、キリサキニに覆いかぶさるようにして抱きついている文月に急かされ、提督の成り行きを説明しなければならなくなった。しかも、キリサキも思い出したかのように、そうそう私は聞いたことなかった、と便乗するので、なおさら説明する状況が組み上がった。
だが、どう急かされても、特に何もないわけで。なんかなっていた、としかいえない。
「提督ということに、いつの間にかなっていたからなぁ」
「え、じゃあボクも提督になれるかな?」
「さぁ?」
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―――――――――
「さぁ、次のステージに上がるのは、この二人だ!」
試合数に連れ段々と集まった観客のボルテージを熱烈に上げる司会は、続々と挑戦者を紹介していった。
赤連合、κ少佐。艦隊の規模もそこそこ、甲勲章を獲得したこともある期待のルーキー、特例提督の中でも艦隊指揮に評価の高いカリスマ、らしい。
白連合、α大尉。駆逐艦だけと侮ってはいけない。不死身の艦隊の異名を持つ5隻を率い、抜群の撃沈数を積み上げてきた名高い実力者、海軍将校とも張り合う特例提督のNo.1、らしい。
カメラは赤コーナーから入場してくる艦娘にフォーカスして、艦名を読み上げていく。
旗艦、特型駆逐艦一番艦、吹雪。
同じように白コーナーにカメラを向け、入ってくる1名の艦娘のみを映し出す。特Ⅲ型駆逐艦四番艦、電、とだけ司会は読み上げた。
両者1名のみである。
会場にいる観客は予想外だったのかどよめき始め、キリサキや白露なども、あれ?という顔をしている。俺もちょっと何言ってるのか分からない。
そんな観客の心境は追いつかないまま、今度は執務室にいるだろうκ少佐にカメラが近づき、やけに自信満々な顔の少佐に、艦娘の選出の理由と、演習の展望をインタビューした。話す内容からも勝利への自信が伺える。
次にα大尉にもインタビューしに行ったが、α大尉はあまり多くを語らず、すぐに演習の海上へとスポットが当たった。
「えー、それでは!赤連合、κ少佐と、白連合、α大尉の演習を始めさせて頂きます。……では、始めっ!!」
夜空に打ち上げられた光る弾――照明弾を合図に、両駆逐艦は一息に距離を詰め、互いの射程距離ギリギリで右回りに半回転し、手始めとばかりに2発程撃ち合い、即座に距離をとった。
「流石に主砲の性能が違うね。電ちゃんは10cm高角砲をなぜか使ってるっぽいけど、吹雪の方はD型改二で、あたしはよく手に馴染む砲だね」
白露が何やら玄人っぽく分析しているが、専門用語過ぎて要領得ない。こうかくほう……?広い角度に撃てるんか?
両者共に態勢を立て直し、相手を正面に構え次の行動を予測し始める。だが、白露の言うように吹雪の方が電より装備の強い分、次の行動の選択肢が多く、最適解を導くのにより多くの時間を要する。その差が電の、本能に近い行動を選択する一歩の差となった。
電は、時間を与え次の手を打たれるより、自分がより早く行動し戦闘の主導権を握ったほうがいい、と判断して一直線に距離を詰め、被弾一発の傷を負いつつも、ゼロ距離射程圏内へと入る。
吹雪の激しい弾幕の中で傷を修復しつつ、確実に吹雪にもダメージを与える。これで、回復手段の持たない吹雪の負けは確定する。……はずだった。
「相変わらず、着弾を確認しない癖は抜けてないですね!」
近い。
そう察知した電は一旦攻撃を止め、あたりを見回し敵影を探す。しかし、水柱によって塞がれた視界では情報を集めるには不適切と察し、弾幕から逃れて射線の先を見ようとするも、それは叶わずにどこからか飛んできた弾丸に貫かれてしまった。
「……はぁ、初見殺しが3つあれば仕留めることができる、と言っていたのを思い出したのです」
「あれ?今のは当たったと思ったのになぁ……」
ちゃんと当たっているのです。まぁ、修復したのですが。
これでまた両者共々、拮抗状態は崩れず、はじめと同じ状態になった。否、互いに近い分、被弾のリスクを考えると、電のほうがやや有利な対面である。
ここは一旦堅実に魚雷を発射して相手の行動を少しでも制限するのが吉、と考え、吹雪は直線に電のやや左気味に投げて、電は扇状に投射した。
吹雪は魚雷で電が左に行くのを封じた、ということは、右からの攻撃が来る可能性が高い。そのため、右舷に注意を向け、近づいてきたところを意表をついて攻撃するべきだ、と電は推測し、装填の完了した主砲を撃ち鳴らす。すると、予想通りに右から砲撃が飛んできたので、修復しながらその方向へと突っ込み、手を伸ばせば届く距離にまで近づいた。
「ンなっ…!」
「仕留める、というのはこういうことを言うのです」
吹雪は方向転換しようとするが、艦娘の回転や横移動の速度は前進に比べて遅いため、ここまで近づかれると逃げる事はできない。それは電もまた然りである。
電は、これが見えますか、と言って手を徐ろに挙げると、そこには五連装酸素魚雷がぶら下がっていた。
吹雪は一瞬下を向き、また電を見て、それは私の……、と額に嫌な汗をかきながら言った。
何をするんだ、と聞くまもなく、電は躊躇なくそれを海に落とし、自分で踏み抜いて五連の爆音と巨大な水柱で吹雪もろとも自爆した。
無論、電には修復がある故の荒業である。
呆気ないのです、と服の吸った海水を絞ろうとすると、爆発の直後に5色の光がこちらに飛んできて、もう片方の艦娘の中へと入った。
「改二は公平じゃないから遠慮していたんですが……」
回復し、更に性能も大幅に強化される最後の切り札。改装第二段階、通称改二。電は未発覚のため改二までにはなれず、性能的に大幅な遅れを取ることになる。
「もう負けるのはヤなので、全力でいきます!」
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