改二、それは従来の艦娘を大きく上回る性能を、それ相応の資材を消費して得ることのできる改造である。それ故に、改の艦娘では普通歯が立たず、この試合はα大尉の負け、と思うものが多かった。というより、それが常識である。
しかし、戦闘は尚も拮抗し、焦る吹雪と相手の隙を窺う電、という対面が続いていた。
だが、その緊張も壊れる音が聞こえた。
画面の向こうには血だらけで意識のない川内と、担ぐ吹雪と電。この場は、陽気だった司会が避難指示を行い、一気に混乱状態へと陥った。
「住民の避難を優先にし、小破以下の水雷戦隊を編成後、今より読み上げる提督は島の北地点1に集合し、ε大将の指示を仰ぐように」
ε大将は、確か神州丸の提督だったはずだ。ということは神州丸が元の提督のところに戻るには、いい機会だろう。
そう思って神州丸の方を向くと、青褪めた顔で明らかな嫌悪感じる声音で一言、考え直して頂けませんか、とか細く呟いた。まだ、何も言ってないが?
ワケアリのようなので視線を神州丸からキリサキに移すと、そこにはもうキリサキはいなかった。
「えー、α大尉から伝達。少尉は直ぐに、作戦基地へ戻れ。繰り返す……」
え……俺?まぁ、取り敢えず行ってみるか。
そうして俺らは作戦基地の方に向かった。
――――――――――――
―――――――――
「少尉、君にはキリサキ中佐の補佐を頼みたい」
作戦基地に着き、受付嬢にこちらですと案内されて部屋に入ると、開口一番にα大尉から告げられた。内容はキリサキの保有する第五、六艦隊の指揮である。
「すまないが、命令だ。キリサキ中佐には話を通してある。直ぐに中佐の補佐にあたってほしい」
そう言い終わるとα大尉は、海図を前にして、囲うように並ぶ偉そうな雰囲気を纏った人達と、なにやらよく分からない会議を始めてしまった。
あまり状況が飲み込めないまま、また受付嬢に案内され、キリサキの待つ場所へと向かった。
向かった先は工廠で、多数のゴツい艤装をつけた艦娘やらこれから決戦にでも向かうかのような目つきで話している提督やらがまばらにいる中、一際大きな集団とその中心でまとめ上げている少女を見つけた。
「お、来たね。じゃあ、早速で悪いんだけど、この娘たちの指揮を頼むね」
手で指し示した先には、先の戦闘で活躍していた艦娘の五十鈴、睦月、如月、皐月、文月、と川内と雰囲気の似ている艦娘と、全く知らない艦娘が6名の計12名である。
「あなたが私達を指揮するというのね。……ま、赤城さんの指示をそのまま伝えてくれれば、問題ないわ」
「だめですよ、加賀さん。私ではいざという時に力不足です」
何がとは言わないが、デカアァァァイ!!説明不要!な青と赤の弓道部が、圧倒的な威圧感でこちらに話しかけてきた。特に青い方。
「えぇと、はい、私が正規空母赤城でこちらが同じく加賀さん」
「加賀よ」
「また、第五艦隊の旗艦を務めさせていただくのが、私赤城、そして」
「第六艦隊旗艦加賀です。特に研鑽も積んでいないような者が、赤城さんのような素晴らしい判断をできるわけがないでしょう。はやく、受信機を渡しなさい」
「もう、加賀さん言い過ぎですよ」
あ、ハイ。なるほどね。こういうキャラね。流石にもう慣れた。絶対に提督に対してあたりの強い艦娘が、1艦隊に一人はいると、経験上知っている。
それよりも、怖いのは加賀ではなく赤城の方だ。一見、赤城は指令という立場を避けているだけのように見えるが、その実、発言内容は謙遜しかなく、否定はない。つまり、俺が指示をするのは役不足である、ということだ。
「あ、提督、ようやく見つけたー」
この声は白露だろう。白露の声に振り返ると、白露はその勢いのまま飛びついてきた。な、なんだ!?
「急にいなくなっちゃうから、探したよ」
そういえば、途中から艦娘立入禁止になっていて、基地内に入れていなかったな。忘れてた。
メンゴメンゴ、と謝り白露の奥に目を向けると、神通と神州丸がいた。
「川内は?」
「今、ドックにいるよ。ひどい怪我だったからね」
聞くところによると、どうやらあのスクリーンに映っていた川内が、俺らの川内らしい。マジか。
なるほど、そうすると、川内が夜戦に行って、そこで深海棲艦を見つけたと考えるべきだろう。
「川内さんとその知り合いの艦隊で偵察中に深海棲艦の艦隊を見つけたんだって」
俺冴えてね?
「あ、白露提督。その神通借りていい?というか、そっちの艦隊に組み込んでもらえる?」
「え?なんで?」
「いや、ちょっとここにいる軽巡少ないから少しでも主力艦隊に改二は回したいんだよね。それにその練度なら夜戦任せられるし」
「?」
冴えていたと思ったがそうでもなかったらしい。意図は読めないが、川内似の服を着た艦娘が外されてそこに神通が入った。
「えぇ〜、那珂ちゃん外されちゃうの〜。神通ちゃんと一緒がいい〜☆キャピッ」
「じゃあ、五十鈴こっち来て」
「分かったわ」
う〜ん、この。いまいち何がどのくらいの規模で起こっているのかわからない感じ、好きじゃない。とはいえ、深海棲艦が攻めてきていて、俺は提督としての仕事をしなければならない、という明確にやることがあるため、手持ち無沙汰にはならないところが、居場所が提供されているようで居心地よく、結果としてなぁなぁのまま、何も知らずに事が進んでいきそうである。
いや、つまり、自分が全部知っていて、どういう風に動くべきかを決めたいという自己中心的な話なだけだが。
「じゃ、白露提督はこれを耳につけて。作戦は伝えたから、もし何か異変が起きてこれに通信が来たら、それを私に伝えて」
そう言ってキリサキは作戦開始の合図を出し、漣を連れて執務室に戻ったので俺もついていった。