ドック(←入渠施設)を作るって言ったって、どう作るんだ?そもそもドックってのがどういう形なのかすら、全く分からない。
「でも、もう完成してるんだよね」
「どゆこと?」
白露の説明はこうだ。艦娘というのはダメージのイメージを怪我として表現するから、その逆の治療だって想像すればできないことがない。
「時雨が夕立にしていてね」
つまり、この崖の下にある石に囲われた貝の群生地をドックとすれば、叢雲はドックだと思うから治療ができるということだ。
「騙してるみたいなんだけどね」
「それは、随分と安上がりだな。逆に言えば欠陥がありそうだと、俺は思うが?」
そう、それが可能な場合、ドックの存在が必要なくなる。ただの池をドックとすれば代用できることになる。ということはドックが治せる理由があるはずだ。
「やっぱり、提督は気づいちゃうよね。…そう、これは生死の賭けなんだよ」
これが出来るのは、あくまで何回も入渠した艦娘に限る。艦娘が治るを意識するから治るのであって、練度の低い艦娘はドックに入る数がどうしても低くなる。
治らなければより一層死をイメージして、最終的には沈むことになる。ということだ。なるほど、だから生死の賭けか。
いや、それなら聞けばいいじゃん。
「それとなく、練度を聞けばいいんじゃね?」
「必要ないんじゃないかな。ここは最前線だから相当練度高い状態で来てるはずだし」
だから、今回の賭けはそこじゃないよ、と付け加える。
「さっきも言ったとおり、ここは最前線だから、きっと名のある鎮守府から来てるんだよ。そうなるとそこの設備はいいはずだから、ここをドックと認めないかもしれないんだよ」
所謂、私、箸より重いものを持ったことがありませんの、ってやつか。つまりは、成功する可能性の方が低いらしい。
「じゃあ、そういうことにしといてね」
そう言って妖精達が集めた魚や貝を持って行く。俺も同様にして持っていく。叢雲のいる砂浜に戻ると、すでに焼けるようになっており、妖精たちに食材を渡すと次々と料理してくれる。
「あら、白露型のネームシップが二人もいるのに、料理もできないのね」
聞き慣れない声がする。しかし、大体の想像はつくがありえない。白露も振り返って
「叢雲ちゃん、立っ、って、えええ!?」
そこに叢雲はありえない姿で立っている。空中に浮く耳(?)は立ち、服は全て直り火傷すらなくなっている。頭の輪っかも空中に浮いている…のは元からか。
「何?そんなに治っててほしくなかったの?悪かったわね、治っててっ」
「「な、治ってるぅ!」」