遠くに見えるのは4人の人型に囲まれた一隻のボートである。どう見ても中将に位置する人が乗るような船ではない。
鎖国中の黒船を見た人もこんな顔をしていたのだろうか。自分でもわかるくらいには阿呆な顔をしている。この島の原住民にでもなった感じだ。
近づいてくると人型が手を降っていることに気づく。慌てて手を振り返すと、遠くでお腹をおさえているように見える。笑い声が聞こえてきそうなほど、リアクションが大きい。
「何か、いけなかったんだろうか…」
けれども、全く近づいてる気のしないため、妖精の回収を優先する。砂浜に埋もれている妖精や、木の枝にぶら下がっている妖精、面倒なのは木の葉に隠れている妖精である。
あれから、10体ほど多く回収した頃にようやくボートは浜辺についた。と言っても完全に浜辺ではなく、海の上で浮いたまま人がその中から出てきて、艦娘に運ばれてきている。
「白露!」
名前を間違えて駆けてくるのは、長い青髪を後ろに垂れ流しているたぶん艦娘である。艤装を消して水しぶきをあげながら近づいてくる。
「うぁぁぁぁ〜」
その時脳内では清楚なイメージから、ドジっ娘属性に変換が行われた。何もない砂浜で躓き、空中を飛ぶ。時が止まったかのように一コマずつ動いてるあの感覚。
思ったより重い衝撃が伝わり、後ろに一緒に倒れる。額同士をぶつけ、軽い脳震盪のような感じである。フラフラしながら上部が黒い視界で青空のような髪を見る。
「あっその、ごめんなさいぃ」
馬乗り状態で謝られる。うん、まずそこをどこうね。苦笑いしていると、青髪の娘はその状態で後ろを向く。
「白露を見つけましたっ」
見つけましたって探されてたのかよ…。そろそろどいてもらうように声をかけようかと思っていると、次いで来たピンク髪の娘が気を遣ってくれた。
「サミっち、そこどいてあげようよ…」
「あっごめんなさい、ごめんなさい」
立ち上がってペコペコと頭を下げる。では、改めて白露ではないことを伝えなければ。そう思っていると、どこかの片田舎に居そうな艦娘が近づいてきた。
「叢雲ちゃん!叢雲ちゃんはいますか?!」
お、おう。ちょ、ちょっと待って。勢いがすごいな。叢雲といえば今はおそらく寝ているはず。しかし、大破していたのを考えると、心配でもしているのだろうか。
「いっちばーん!」
急に視界へ飛び込んでくるのは白露である。青髪の娘に飛び込み抱きついている。
「五月雨ぇ、よく来たねぇ」
そう言ってよしよししている。そんな和んでいるムードで異様な雰囲気を放つのが後ろにいる。何もしなくても一歩引いてしまう、何かがある。
周りより一際小さい茶髪の艦娘に運ばれているのは、鋭い目つきのしている俺と似たような白い服を着る男である。絵面的には可笑しな場面だが、笑うこともできない。
こいつが叢雲を大破させた奴か、最もな感じだ。