「おお、おぉぉぉお!」
最大ノットである37ノットはとても速い。時速にすると確か68.5キロぐらいだろうか。車とかだとだいぶとばして走っているぐらいの速さである。
まず、風が強い。腕とか千切れそうである。妖精パワーがあるため楽になっているが、それでも明日には筋肉痛確定である。
そして、水がかかる。服はびっしょりと濡れていて、せっかく乾かしたものが台無しだ。もう本当に水で前が見えない。
ドゴンッ
そんな爆発音が聞こえ、薄目ながら前を見る。遠く離れているが白露と、煙の中から黒い物体が見える。白露はおそらくこちらに気づき、黒い物体と俺の間に滑る。
「うわっ」
それまで直進していたが、急にギザギザと動き出しバランスをとるのが難しい。今まで神業のごとく態勢を保っていたのに、ここに来て一気に難度が上がった。
目の前―と言っても声が届かないぐらい離れているが―にいる白露は、俺よりも遥かに綺麗に走っている。砲も撃っているのだから驚きだ。
こう見ると何もできない劣化品の俺が惨めに思えてくるが、白露が化け物であると言い訳をする。
「あっ」
白露が少しぐらついて、減速をする。助けに行くべきだろうか。そう思ったのも束の間、黒い物体の付近で何かが爆発し、そこから黒い物体は失せる。
「なにしてんの、提督!島に戻るって言ったじゃん!」
「いや、帰るに帰れなくてな」
俺は赤子か?まあ白露から見れば年齢的には赤子同然だろうけど。しかしながらこちらも言い分がある。
「な、何があったのさ」
「どうやら、島に深海棲艦がいるらしい」
そう言うと妖怪百面相のように表情を使い、最終的にはふんす、と意気込んでいる。戦うことにしたようだ。
「じゃあ、今回は中断して、占領された島を取り返すよ。地の利はこちらにあるからね」
海の上で地の利って関係あるのだろうか。まあ、その手のプロが言うんだからあるのだろう。とりあえず帰路につく。
「数と艦種は分かる?」
『わからなーい』『しらなーい』『きにするな』
それぐらい確かめてくれば良かったか。というか、島の周りに適当にいれば良かったんじゃ…気にしないでおこう。
ところで、この今着ている服は厚めの服である。つまり、水分をよく吸収して重くなっている。肌につく感覚も好ましくない。
その点艦娘の服はすごい。あれだけ動いてもあまり濡れておらず、服でカバーされていない頭や足は水が滴っているが、透けるとかそういうラッキースケベは起きない。
「まあ、望んでもないが…」
「?」
提督服を脱ごうとすると止められた。日焼け云々と言われたが、半袖のやつに言われたくはない。
そこは白露が頑固だったので、脱ぐことは叶わなかったが、そろそろ島も見えてきたので緊張を緩める作業は終わらせる。