補給途絶鎮守府   作:フユガスキ

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最も弱い敵艦

『いきゅうがくる』『おぉもかあぁぁじ』『どうこうせんやで』

 

体が右に旋回する。急なことに対応できずに転びかけるが、何とか体勢を立て直す。一旦イ級から離れようとするが、イ級も随分速い。

 

『ぎょらいや、ぎょらいをうつんや』

 

妖精が言うと、体はバッと反転して後方に下がりつつイ級が目の前に見えるようになる。魚雷、というのは手に持っているものを言うのだろうか。いや、確かそうだったはずだ。

 

魚雷を構える。どう構えていいのかも分からず、そもそもどうこれで攻撃するかもわからない。ちょっとずつ視界が狭くなる。

 

『めいれいだけだしてくれればあとはうちらがやるで』

 

あの爆発を思い出す。これが攻撃として放たれれば、あの爆発が起き相手は死ぬことになる。死ぬ、そう死ぬのだ。俺がこれを放てばあの生き物は死ぬことになる。

 

死んだ魚は食べたことがある。実際、この島で何匹も殺した。そこに生々しさはあまり存在しなかった。しかし、ここまで大型の場合は別だ。自分を殺し得るものには生々しさが強く感じる。

 

「ぎ、ぎょら、」

 

膝が震える。殺される可能性がここまで間近にいる恐怖によるものだ。ネ級のときは絶対に殺されないという、妖精に対する信頼があった。それに対し今回は殺さなくてはならない恐怖も存在する。

 

ここまでくると、白露―化け物に潰し合いをさせて、逃げ出したくなる。いつもの俺ならそうするが、今の俺にはできない。こみ上げてくる憎悪によるものだ。

 

バンッと言う音と、眩しい光がイ級の近くで起こった。至近距離、と言っても50mほど離れているところからの銃撃だ。

 

『ようせいさんがーど』『ようせいさんばりあ』『あなたはしなないわ、わたしがまもるもの』

 

正面に火花が散ったかと思うとすぐ右に小さな水柱ができた。何が起きたか分からないが、とりあえず攻撃されたことはわかる。

 

『はよせぇや、てきさんもだまっちゃくれへんで』

 

まずは深呼吸。血の巡りを良くすれば、視界は開け頭も回る。ただ単に攻撃命令を出せばいいだけである。別に何も考えなければ、一瞬のことだ。

 

「やっちゃってくれ」

 

『しゃきっとせぇへんけど、ま、いいやろ』

 

目を閉じて、最低限バランスを保つ。どうせなら耳も塞ごう。あと何秒後に爆発するだろ…考えるな。もう目を背けよう。あちらの化け物の方がよっぽどいい。

 

耳をふさいでいたため少し小さめの爆発音と、後ろから来た光に少し驚きつつ、ため息を吐く。なんとも、見たくない結果だ。俯いたまま目を開け、前を見る。

 

すると、イ級とはまた違った容姿の何かがいた。全部が黒ではなく、人型に近しい形で白くなっている。肌として白いではなく、人間味のない白さである。

 

今度はイ級よりも大きな音が聞こえ光が見えた。

 

『ようせいさんがーど』『ようせいさんばりあ』『おまえはもうしんでいる』

 

―――――――――

――――――

 

強い風で飛ばされた妖精たちを集める。砂に埋まっていたり、気に引っかかっていたりするのでなかなか難しい。おそらく見渡す限り取り終えたので、いつもの場所に戻る。

 

「あっ提督。妖精さんをそんなにたくさんも…。いっちばんはあたしなんだから!」

 

そう言ってまた、妖精探しに出かける。いや、別に競ってるわけじゃないだろ。そんな声をかける暇もなかった。

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