夜戦、それは日本の水雷戦隊にとっては恐いものです。夜の闇に紛れ密かに撃沈する。日本の水雷戦隊は確かにとても強かったです。しかし、夜は混乱しやすく何隻もの轟沈を見届けています。
ただし、艦娘の駆逐艦の強さを発揮できる機会でもあります。夜戦なら駆逐艦でも重巡並みに活躍できます。
「1号はここでその傷、治して…って治せなかったわね。後ろから援護は…危険ね」
叢雲ちゃんが、ブツブツと言っています。
「中破なら、まだ、攻撃できるから、一緒に、頑張ろうよ」
「何言ってるのよ。アイツでも夜戦に中破では参加させないわよ」
「でも、ホ級が…」
「練度で言えば私のほうが上なのよ。…それにアイツは轟沈艦を出したことがないわ。1号はどうか知らないけど、私は少なくとも沈まないわね。なら危険な場所に行くのはこの私になるのよ」
そんな、確証がないことをなんで信じるのでしょう。提督はいつでも鎮守府にいます。そして、あたし達の背中を支えています。でも、だからこそ、沈む艦娘もいるんです。
なんとなく、妹でも見ている気分です。危なっかしくて、一匹狼になりたがる妹です。あたしの姉妹にはいないタイプです。でも、いたとしたら、あたしは嫌がっても構いに行ったでしょう。…本気で嫌われちゃやだけどね。
「あたしは旗艦だし、沈まないよ。あたしは、あたしの提督を護らないといけないから、力を貸してほしいな」
「し、仕方ないわね。相手の旗艦だけでも沈めるわよ」
なるべく元気に返事をし、敵艦隊の場所に近づきます。あの3隻は全く動いておらず、簡単に発見しました。まずは、奇襲攻撃です。
「魚雷投射ッ」
魚雷はイ級にあたり、轟沈を確認しました。けれど、どちらのイ級かは分からないです。そして、私達の位置に気づいた敵艦は動き出します。
「ここからが、私の本番なのよ!」
叢雲ちゃんも続いて撃ちます。と、暗闇の中に一瞬だけ爆発が見えました。敵艦の砲撃です。とりあえず回避に専念します。
「や、やだ、…ありえない」
叢雲ちゃんに命中したようです。近づいて確認します。
「機関部がやられたわ。ほとんど航行できない状態よ」
叢雲ちゃんを肩に担ぎ、逃げます。最初は嫌がっていましたが、すぐにそれもやめました。あたしは砲撃も雷撃もして、牽制します。叢雲ちゃんもあとに続くように攻撃してくれます。
それでも相手の攻撃はやみません。だんだんダメージも蓄積し、疲弊してきます。今や敵艦も軽巡ホ級を残すのみです。でも、それに対しあたし達は中破と大破。勝敗は決定しました。
…ここで沈んじゃうのかな。
そんな物が頭をよぎりました。頭を振ってその考えを払いのけ、前を向きます。そこに見えたのは小島です。あたし達は、逃げた結果帰ってきたようです。
あとに引けるところがありません。
「ってー!」
当たれ、当たって、そして大破になれ。そう願わずに要られません。相手は小破か中破と言ったところです。可能性はあります。
「――――」
当たった。たしかに当たりました。でも、なお倒れておらず。あっちの方から砲撃の音が聞こえました。ただ聞こえただけです。真正面に見ていたはずなのに光すら見えずに。
ああ、目を閉じていたんですね。受け入れがたい現実があっ…、――…、。
そして、意識が途切れました。