正に化け物と呼ぶに値する形相である。良く言えば満身創痍になるまで戦った、になる。悪く言えばなんでそれで死なないの?になる。
血みどろな白露と血みどろな叢雲と、白く光っているホ級。……ん?いま変だったぞ。えっなんでそんな光ってんの君。
緊張の糸が切れたように白露が前に倒れる。支えに行こうと動こうとしたが、腰が抜けて動けない。しかし、驚くべきことに、その白い光が支えていた。
もう少し厳密に言おう。その光の中から現れた誰かに支えられていたのだ。その人は明らかに先の深海棲艦とは違う。もっと人間味があり、憎悪なんてものもない。
「ん、朝だねぇ。これなら着任してから出撃すれば…って白露?!なんだ、大破か…。おやすみ」
あの緊迫感もどこへやら。急に出てきた人に場の空気が一掃される。えっと、どちら様でしょうか。
「他の艦娘は…叢雲と、あれ、白露?」
俺と白露を交互に見ている。というか、白露と叢雲を知っているということは艦娘なのだろう。見た目は高校三年生ぐらいな感じだが、ほんの少しだけアイドルな感じがしなくもない。
「ん?あっ提督だね。んんっ。川内、参上。夜戦なら任せておいて!」
もう一時間早く来て?!いやいや、状況がわからない。因果関係を作るなら、深海棲艦から生まれたことになる。だがしかし、今までそんなものはなかった。は?どゆこと?
それに、なんで俺が提督だって知ってんだ。叢雲は分かってなかったし、未だに信じようとしてない。本当に一体どうなってる。
「とりあえず、私が白露を運ぶから、叢雲は提督を運んでくれない?」
「はあ、だらしないわねぇ。それでも、司令官かしら」
そう言って俺を背負う。すまねぇ、腰が抜けたんだ。いや、痛いんだけどさ、そんなことを言う場面じゃない。気恥ずかしいというか、なんというか、どこにそんな力があるんだってぐらい軽々と持ち上げる。
そして、いつもの砂浜に戻り、白露をブルーシートの上に寝かせる。
「さて、えー、川内。…なんでいんの?」
これしか思いつかなかった。捉え方次第では酷いことを言っていると思うが、つまりはどうやってここにいるのか、状況を整理したい。
「何気にひどいっ」
「あー、それなら私から説明するわ。この夜戦バカはドロップ艦娘と言って、深海棲艦を沈めると出てくるのよ」
何それすごい。深海棲艦と艦娘って同じということか?違うか?違うな。改心した敵のようなイメージにしておこう。
「でも、今まで出なかったよな?」
「ええ、2号の運が悪かったんでしょうね。でも、これによって分かったこともあるわ」
あーそれな。トラックにはねられるし、勝手にこんな島連れてこられるし、運が悪いな。というか、その運の問題はさておき、艦娘が深海棲艦を沈めたら現れるって普通の考え方なのか。
「そもそも、ドロップ艦娘って泊地がないと出ないのよ。つまり、ここが泊地であるということの証左になるわ」
えーと泊地って何って感じだが、とにかく今はいい。ところで、なぜ叢雲は簡単に治っているのに白露は治らないんだ。
「そうなのか。で、白露を治すにはどうすればいいんだ?」
我ながら突飛なことを言った自覚はある。しかしながら、この島で艦娘が増えることがわかった今、とにかく人手がほしい。
「なんだ、ちゃんと1号のこと心配してるじゃない。…そうね、アイツにバケツを持ってこさせるわ。それで治るわ」
アイツって言うのが誰かわからないが、ありがたい。というか、アイツって人がここに来られるのなら帰ることもできるわけで、したがって目標である日本に帰ることができる。
「来たみたいだわ」
そう言って叢雲は手を振る。よく分からなくて目を凝らすと、その先には驚くべきものが存在していた。その海の先にいるのは元祖海を征くものだった。