なかなかに寝心地の良くないところで目を覚ます。視界にはムキムキではなく、かと言ってヨボヨボでもない一般的な足が見える。
どうやら、車で座ったまま寝てしまったようだ。高校生にもなって恥ずかしい限りだ。しかし、とても頭が冴えている。
「お目覚めですか、α少尉。もうすぐη鎮守府に着きますよ」
若い男の声が聞こえる。α少尉、いい響きだ。ここに来るまでに学んだことを思い出し、気を張る。さて、ここから頑張るのだと。
本当にすぐに停車し、運転手は外に出る。外には加賀が立っていて、運転手が開けたドアから外に出る。
「話は聞いているわ、α少尉。η少将の執務の補佐を務める加賀よ。では、こちらへ」
鎮守府の門の前に憲兵がズラッと並んでいる。その十数人は皆、敬礼をしている。僕も敬礼をして返す、我ながら完璧だと思う。
そう思っていると、加賀が驚いたようにこちらを向く。そりゃそうだ、なんたって特例提督――一般人が見事、敬礼をしてみせたのだからな。憲兵すら驚いている。
そして、一番奥の憲兵服に包まれた不動の男。彼がここの管理者であるη少将だ。自分でも長身だと思っているが、僕と同じ身長である少将も長身だろう。
「η司令長官、α少尉ただいま参上しました」
うむ、自分でもカッコいいと思えるほどいい挨拶。トーンも完璧。ナルシストとは違う。
ここにいるほぼ全員が驚いているのに対し、η少将は全く表情を動かさない。
「ははっ、いっぱい喰わされたな。赤城よ、彼は面白いぞ」
「そのようですね。ただ、この場に参列するまでもなかったと、そう思いますが」
「いやいや、期待以上の人材だ」
そうだった。この人はただ面白いというだけでこうも豪華に歓迎をし、自分でさえもモブの一員として参加する道化師だった。
あの赤城すらこの場に立たせるとは予想していなかった。どこまで僕に期待していて、どこまで予測していたのか、僕には考えが及ばない。
「ふむ、では加賀。待ち合い室の方に案内してやってくれ。それと茶も用意しといてくれ。資料も渡しておいて貰いたい」
「分かったわ」
そう言い切ると赤城とη少将は建物の方へ歩き出す。僕らは別の建物の方のようだ。加賀のあとをついていく。
出されたのは緑茶のようだ。弓道のような姿にはとてもよく似合う。少し飲み、ほうっと息を吐く。
「粉茶かな」
「…良くわかったわね」
今日何度目なのかわからないクールビューティーの面が剥がれた顔。粉茶といえば少し安物感があるが、割と手の込んでいるものである。高級品だけバンバン出されるよりかはずっといい。