「あっ、ここにいましたか」
その声とともに入ってくるのは大淀である。
お風呂に入ったのか煤汚れがなくなり、制服もよれていない。
何故、準備中と書いてあるのに入って来たのかは置いておいて、なんで探していたのだろうか。
加賀が迎えに来たため、大淀の役割は終わったと思っていたが…。
昼も食べ終わったので、大淀の案内を再開する。
「では、工廠に向かいましょう。今は多分休憩中なので、入っても大丈夫だと思いますよ」
工廠といえば、建造をしたり、改修改造をしたり様々のことをできる場所である。
ただし、工廠は少し離れた場所にあり、少し歩かなければならない。
鎮守府の敷地内のため、その道すがら艦娘とすれ違うだろう。駆逐艦ならおおよそ緊張もなくなったと考えていいが、それ以外の艦娘はまだなのである。
そして、その艦娘に避けられるのはメンタルがきつい。
……だめだな。こうやって避けていては人間が艦娘に嫌われるのも仕方ないことだ。
「そういえば、α提督の年齢は何歳なのでしょうか?いえ、失礼なのは分かっているのですが、ただの興味といいますか…。すみません、忘れてください」
オウ、沈黙されるとどうしようもない。
そうだった。艦娘側だって避けてきたのだから話せないのは同じこと。おそらく、気まずいのだって同じだ。
僕が踏み込まなければいけないのだ。
「高校三年…17歳です」
「!」
急に反応して、首がグルンってなる。怖っ。
そして、恥ずかしかったのかすぐに前を向き、眼鏡をカチャカチャする。
「あ、あのっ――」
「もうっ、なんでさきにいっちゃうのよ!」
「不死鳥の名は伊達じゃないよ」
「暁、も〜と私に頼っていいのよ」
「はわわ、そんなに走ると危ないのです」
第6駆逐隊が走っている。
一瞬、初期艦に指定したデンちゃんが来たのかと思ったが、まだ加賀と別れてから一時間半ぐらいしか経っていない。
初期艦は大本営が送ってくるので、(それまでに艦娘を建造してもいいのだが)二日間は最短でもかかる。
「おや、テイトクだね。私は不死鳥だ。よろしく頼むよ」
「響はレディファーストを知らないの!」
「暁ちゃん、響ちゃんも、れでぃなのです…」
「私が雷よ!ふふん、雷は挨拶だって出来るのよ!」
素直な感想だと、微笑ましい。
やはり、駆逐艦の掴みは上手かったと言えよう。
「あ!暁ちゃん、発見です!」
道の向こうに阿武隈の姿が見える。
「ふむ、私はこちらに行くとしよう」
「じゃあ私はあっちねっ」
「はわわ、電はテイトクさんの後ろに隠れるのです」
「え、えっと、暁はぁ、暁は――」
「はい、暁ちゃんタッチぃ〜」
そして、暁はトボトボと歩いていき、阿武隈は何処かに走っていった。電もいつの間にかいなくなり、騒がしさがなくなった。
「嵐のような娘達でしたね」
「す、すみません」
そして、相変わらず少しずつ話しながら工廠に向かうのだった。