歩いて目の前に工廠が見えてきて中に入ろうとする。
すると、後ろから声をかけられて、振り向く。
「大淀ぉ、貰ってきたよー」
「本当に間宮の料理は美味しいのよね。データも十分よ」
コンビニの帰りのような、小さなビニール袋を片手にこちらに来る。
どうやら僕には気づいているようだが、特に気にしてないようだ。駆逐艦の子たちから聞いたのか、それともそういう性格なのか、とにかくあまりない反応である。
「で、大淀。そちらの方は?」
「こちらテイトク(以下略。α少尉さん、明石と夕張です」
手で指しながら説明をする。
ピンクの髪を膝上まで伸ばし、頭の横に…あれはどうなっているのだろうか。束にして、束ねたところから10cmぐらいで切っている、といった感じで、スカート?袴?が際どいのが明石である。
夕張はメロン要素がリボンに出ている。緑のような銀髪をポニーテールでまとめている。また、前髪をぱっつんにし、服の配色にも拘っていそうだ。
「なるほどねぇ。じゃあ、α少尉もお弁当食べる?」
「いえ、僕は食べてきたので」
鳳翔の料理は割と量が多いのだ…勘弁してください。
工廠の中に入り、彼女らは昼飯を食べる。
一応、気遣ってどこかに行こうと思ったのだが、転校生でもよくあるように、質問攻めにされた。
大淀は仕事と女子トークとに板挟みになり、無口となっていたが、明石と夕張はそういう足枷もないため遠慮なく話している。
「テートクになる前は彼女とかいたの?」
「いえ、特に…」
「身長高いよね、いくつ?」
「185.6ぐらいだったと思います」
所謂、女子である。どちらかと言うと年う……おっと一瞬目がヤバかった。
ただ、同年代に見える少女に囲まれるのは、中々この歳ではない状況だ。なるべく不躾でないようにしつつ、楽しみたい。
そのためにはまず、話題を変えよう。丁度いいことにここには機械がたくさんある。
工作艦である明石と実験艦もとい軽巡である夕張にとってもこういう物は話しやすい内容であるだろう。
近くに見つけたピンクのふちのメガネが目に入る。
「これなんて、どういう物なんですか」
「あぁ、それはまだ作ってみただけの模型。度も入ってないしコスプレ用だねぇ」
「へー、明石つけてみてよ。きっと可愛いはずだから、ね」
大淀がここに来て初めて話した。と、言うより僕のことを忘れている気がする。丁寧語もなくなっているし。
ふと、件のメガネの近くにあった紙が目に映る。
髪の上部に太字で〇〇メガネと書いてある。〇〇の部分は角度が悪くて見えない。
態勢を変えて、頭の位置を動かし、それを見ようとする。後もうちょい。
「あっこんなところに企画書落ちてたわ。明石、はい
」
なんて書いてあったのか分からずじまいになってしまった。
そして、そろそろ工廠の作業が始まるので出ていくように、と言われたので、大淀とともに外に出る。
大淀は本当に僕のことを忘れていたようで、明石に指摘されるまで気付いていなかった。
大淀はもっと真面目に仕事をするイメージがあったので、いい一面を見れたと明石たちには感謝している。流石にずっと仕事モードというのは疲れるのだ。