僕ことα少尉は今、とても大きな課題に直面している。
元々、僕はデンちゃんと同じ部屋で過ごすというのはなんてことなく、話し相手も増えるのでいいことだと思っていた。
だがしかし、考えてみてほしい、高校生男子の部屋に女子が入ってくるのだ。彼女とかならまだしも、部下である。
いや、流石にロリコンになった覚えはないが、年下の女子と同じ部屋というのは、健全な欲求を持った不健全なメンタルはブレイクされる。
欲求が発散できないのは結構厳しい。食事も睡眠も出来なかったら、イライラするだろう。つまりそういうことである。
よって、それを可能にする為に、彼女には別の部屋に行ってもらおう。
口実としては、他の艦娘と仲良くなるべきだとか、男性と同棲というのは怖いだろうとか、その辺にしておこう。あくまで気遣いである。
僕はこの部屋に来てから、ぼうっとしているデンちゃんに話しかける。
「デン……電ちゃんはさ、姉妹艦とかと同じ部屋のほうがいいよね」
なるべく明るく話しかける。
自分が邪な理由――直接、デンちゃんに被害は及ばないが――でこの話を切り出しているとは悟られてはならない。
しかし、優しいデンちゃんならばこう返すだろう。
「い、いえ。電はα司令官さんの秘書艦なのです。最初のうちはここにいさせて欲しいのです」
くっ、デンちゃんに気を遣わせている罪悪感ガガガ…。
だが、僕にも後に引けない事情があるのだ。折れてもらうよう説得するしかない。
「いや、でも――」
「だめ、ですか?」
グハァッ。デンちゃんの上目遣いは非常に効く。
僕の心は完全に死んだようだ。そのため、自然とこちらが折れてしまった。
仕方なく僕は腹を括り、デンちゃんの座布団を用意し、僕から右斜め前に座らせた。
今からするのは臨時の執務である。
特例提督として一ヶ月の滞在中にやるべきことは、主に艦娘の運用と書類仕事である。
その片方の執務をこれから行うのだ。
今朝方届いた資料をデンちゃんと黙々とやっていく。と思っていたのだが、デンちゃんのでは止まっていた。
「ちょ、ちょっと見せてもらうのですっ」
「?」
既に済ました書類をデンちゃんが見る。確認作業をしてくれているのだろうか。嬉しい限りだ。
「う、嘘です…。あり得ないのです…」
「なにか不備があったのかい?」
「そんなことはないのです!」
うお、びっくりした。勢いでペンを落としてしまった。
畳の上に転がったペンを取り、デンちゃんの方に向く。何かいけなかったのだろうか。
「ただ、α司令官さんはなんでキチンと書けているのかなって、思ったのです」
えっ、キチンと書いちゃいけなかったのか。
そうやって分からないという文字を顔に貼っつけていると、デンちゃんが察してくれて続きを話した。
「ぁ、違うのです。α司令官さんは悪くないのです」
どういうことなのだ。
もう少し説明して欲しいと伝えると、わかりやすい答えが帰ってきた。つまりは
「初めての書き方で、完璧に書けるというのはおかしいのです」
だそうだ。確かにその通りである。