ふと、その空母らから目線をずらせば、口角を少し上げた状態のままでいる翔鶴が見える。
先程から微動だにしないで笑っている。少し怖い。ただ救いとしては、後ろの駆逐艦達が楽しそうに食事をしていることである。
昼食を食べに来ていたのを思い出し、冷めないうちに料理を食べる。うむ、相変わらず間宮と伊良湖の料理は美味しい。
そして、駆逐艦の娘たちとの会話を楽しんでいると、次は龍驤がやって来た。
「なあ〜キミィ、うちの艦種、何やと思う?」
「軽空母だね」
まあ流れからして聞いてくるノリであったので、即答できる。
龍驤はといえば面食らったように驚いている。というかいい加減、この流れは何なのだろうか。龍驤はこういう流れに乗らないタイプだと思っていた。
だが、今までとは違い、走ってもとの場所に戻っていない。逆に他の空母を招いているまである。
そうなってからようやく翔鶴の笑いも止まり、ふっと倒れる。それを蒼龍と飛龍が受け止め、横に寝かしていた。だ、大丈夫なのだろうか。
――――――――――――
―――――――――
「敬礼ッ」
豪華なものが好きなη少将の趣味により、必要以上の迎えを用意する。
僕より階級が上の中尉や大尉も、η少将が帰ってくるまでは少尉の部下である。とても不思議だ。
「α少尉、後で執務室に来なさい」
加賀は僕にそういった後、η少将と赤城の近くに戻った。
遂に、執務室に入室する許可を得た。つまり、これから艦隊の指揮が見れるという意図である。
ただし、注意しなければならないのは、彼が道化だということである。もし、予想を逸脱する質問や命令がされれば、期待する応えを返せる自信がない。
そして、積み荷も運び終わり、私室で身だしなみを整えデンちゃんに留守を頼んでから外に出る。
執務室前の扉につき、深呼吸をする。ここが正念場である。
冷や汗がツーっと顔の輪郭に沿って流れる。
よし、よし。完璧にこなせば良いだけである。覚悟オーケー。
さ、最悪、空母の指揮を見ることができれば儲けものである。うん。最悪それであれば、どうにだってなる。はず…。
周りとは一風変わった扉を4回ノックし、入室許可の声を待つ。
ワンテンポ遅れて、どうぞ、の声がし、失礼しますと言って入る。高校の職員室とかこんな感じだったなぁ。
「………」
入った瞬間、時が止まったような錯覚に陥った。こういう感覚は主に常識外れの状況を目の当たりにしたときに起きる。ソースは僕。
光景としては高級そうな机に、その前のこれまた高級そうなソファ。ガラスのテーブルにその上に乗った書類の束。
そして、驚くべきことに赤城がいる。それだけでも僕にとっては何が起こるか分からない恐怖に駆られるが、それ以上に唖然とするものがある。
それは鼻メガネである。
笑うべきなのか、スルーすべきなのか迷う。すごいのは意味が分からなすぎて呆然としてしまう僕がいることだ。
普通ならば笑っていたであろう。失礼だと思って堪える努力をしたはずである。
「――席に、どうぞ」
促されるままに席に座る。
完全に覚えていたものを忘れてしまった。マジやばい。