「……さて、α少尉。単刀直入に聞こう。君は何派の人間だ?」
鼻メガネをつけたままそう言う。
何派とは何だ?航空優位思想と大艦巨砲主義のことだろうか。
というか鼻メガネ外してください。
でも、そんなことを駆逐艦のみの特例提督に聞くのだろうか。
そもそも僕はどちらでもなく、駆逐艦のみで艦隊を組むつもりである。これにも理由があるが、まあ適当に誤魔化しておけばよいだろう。
「どちらでもないです」
「ほう…、完全勝利派でもなく、艦娘消去派でもないと言うか」
完全勝利派?艦娘消去派?……あ〜そういえば、そう言うのもあったなぁ。
つまり、この海軍内で誰の傘下に入るのかということだろうか。だんだん思い出してきた。僕は無所属で行きたいと思っている。
そうだった、僕がこの場を利用して伝えたいのは戦後のことである。
戦後、艦娘というのは十中八九酷い有様になる。忌避や差別、主従に迫害と、現状、どんな筋道を通ってもそうなるのは目に見えている。
故に完全勝利派であるη少将及びθ中将を説得し、世界平和派を抱き込み、他派閥を崩壊させ海軍を一枚岩にしたところで、戦争を終結させることが艦娘の人権尊重に繋がる。
そう信じている。
それをするための対談の場はあり、鼻メガネをしているが一応真面目にしているはずである。
というか鼻メガネが面白い。
「――粗茶です」
鼻メガネをつけたままの赤城が、僕が話そうとしたタイミングで茶を出す。
どちらかというと洋風な部屋に合わず、緑茶が目の前に置かれる。
「α少尉の処理した書類は見せてもらったよ。いやぁ凄いな。なんたって、明らかに初期艦からでは学び得ない機密事項の処理すら済ませてあるのだから、な」
そう言って書類の束から無造作に何枚か抜き取り、指で指し示す。
そこには海軍内の上層部のみ知り得る、艦娘のステータスの詳細の数値が書いてある。
最近、装備として乗せるものによって一部の艦娘にはより高い攻撃力があることが分かり、本当にそうなのか実際のデータを集めているのだ。極秘裏に。
「さて、今から俺の見解を話そう。これは勝手な妄想だが、聞いておいた方がどちらにせよ、いいぞ」
η少将が言うには僕を推薦したのはγ大佐で、そいつは艦娘消去派であるため、僕がスパイである可能性が高く、もしスパイなのであれば自分がいない間に資料を片っ端から漁るのは当然であり、出港する直前までに見極めるつもりが、出会い頭にあの気迫を見てその可能性はなくなり、というより面白そうだと思い、野放しにした結果まんまと釣れてしまった。
つまり、有り体に言えば手のひらで転がされていたということだ。
「それで、α少尉、この近くに近々新しく建てられる泊地があるのだが、そこの正式な提督になる気はないかい?」
利用する気が満々だったことが恥ずかしくなるぐらい利用され、それでもまだ仕掛けてくるようだ。
もちろんこれは罠かもしれない。僕がスパイなんてことは全くないのだが、言ったところで証拠がなく意味がない。
だが、断る理由がなく、というより、ここで断ったら明らかにスパイ確定である。
よって自分の意思に関係なく、了解した。