「で、α司令官さん。さっさと説明しろなのです」
そう、俺も気になっていた。
俺の見た目は現在、白露の体である。つまり、漣のように、提督服を着た白露と思っても仕方ない。というよりそれが普通だ。
でも、α中尉は少尉くんと、なんの疑いもなく言っている。
もちろん、この提督服に俺の知らない階級の見分け方があるのかも知れないが、それでも既知の身体に有り得ないものを羽織っていれば気になるだろう。
「あ、いや、あはは…。そうだな…、まず、少尉くんは男性だね」
「ご主人様、そりゃあひでぇよ」
俺に気を遣ったのか、漣はそんなことを言う。
まだ一言も喋ってないのに俺を男と分かるのは、どういうことだろうか。
「ああ、俺は男だが、どこで知ったんだ?」
考えられるのは、この島に来る前にθ中将の呼んだ車の運転手だろうか。船の中で話したことはないが、車のときは話したことがある。
だが、あの時は仕切りがあり姿が見えなかった。そのためそこで知ったという確証はないが、あり得るのはそれぐらいである。
「えっマジ!?キタコレ!TS娘パない!握手オナシャス!!」
き、急に元気になるなよ。
テレビで昔のやつだとよく見た告白シーンっぽい感じに手を伸ばし、こちらの握手を求めてくる。
軽く握るぐらいで握手をすると、無遠慮に手をニギニギしてしばらくすると手を離す。
「やべぇッスご主人様、もうこの手洗わないです。サンタさんもプレゼントをもう一つ増やすレベルですぜ」
そう言って叢雲の方に行き、見てみて〜TS娘に触ってもらった〜、分かるわけないでしょ。みたいなやり取りをしている。
「α司令官さん、電はとても寛容なのです。だから、いい加減になんでTS?してるのか説明しろ」
「怖いよデンちゃん。まぁ説明しないといけなかったし、いいのだけどね」
つまり、α中尉は俺が何故この姿なのか知っているということか?当事者でもないのに?
なんらかの試験を受けて、その結果から考えられるものを言われるのならまだいいのだが、憶測ばかりのものは宛にしたくない。
「さて、少尉くん。君はトラックに轢かれて死んだはずだね。だけども彼女は助けている。ここからの説明は彼女に起きてほしいんだけど、あの様子じゃ無理そうだね…」
まあ、言っていることは間違っていない。
ただ、ここまで知っているというのは明らかに間違っている。記録されていないはずのそれを、どうやって知ったのか。不思議だ。
「きっかけに関しては妄想だけど、本当に助けているのならば艦娘の硬さのおかげで、君は死なないはずだ。だから、君はちゃんとトラックにぶつかっていることになる。おそらく、その後に彼女が少尉くんの体を守り、轢かれることを避けた」
ふむ、なるほど確かにそうだ。
艦娘というのはいわば船の擬人化、船の能力を受け継いでいる。
だから、馬力も高く強固である。それなのに俺が死んでいるのは遅かったからに他ならない。
「まあ、理由はどうあれ、艦娘は船の魂の具現化なのは知っているね。つまり、もとを正せばただの魂だ。ここで重要なのは人間にも魂があるということ」
「彼女らの魂はどんな形であれ、人間の生きることを望んでいる。それを存在理由とする魂は、人間の魂を、器である肉体に入れ、生かそうとした。その結果、船の魂は外に出て、君の魂が白露の体に入り、君は生きながらえた」
「船の魂はいつものように肉体を形成し、新しい白露という体を作った。途中途中、心情的なものを理由としたけど、分かりやすさ優先だね。魂の持つ肉体化の傾向何だけど、説明するにはちょっと口じゃ足りないからね」
長ったらしい説明を終え、一息つく。
つまりは何だ、俺が白露の体を乗っ取ったということか?
「つまり、君は白露になったというよりも、憑依に近いと言える」
マジか。化け物の体を乗っ取ったのは俺である。
よって、俺はこの中で一番の化け物ということか。は、マジかよ。……マジかよ。