俺はあの艦娘のような化け物とはまた違った化け物である。吐き気がする。
白露より劣等であることに嫌になり、彼女を化け物に仕立て上げ、今度は自分が化け物となった。しかし、この体であれば永遠に守られる側――下等であるということだ。反吐が出る。
今までは体が同じなため、力においての劣等であったが、今は力では同じで、体において下等である。いつまでたっても、俺が白露と対等になることはない。
よし、逃げよう。そもそもこんな島にいるつもりはない。
憑依云々言っていたが、まあ大丈夫だろう。身体こそ変わってはいるものの、人間のような見た目だ。日本という人間社会で生きることはできる。
「じゃあ、日本に――」
「それは無理だ」
まだ言い終わってないんですけど。
まあ、諸問題を伝えれば、何かしらの対応をとってくれるはずだし、最悪、白露を帰すことが出来ればそれでいい。
あの艦娘がいなければ、多少この嫌な感覚からは脱せられるだろう。
「食糧が――」
「ここから魚を捕らなくなって久しい。釣りをすれば安定して捕れる」
「鎮守府が――」
「狭いから仕方ない」
「最前線――」
「ここらへんに深海棲艦はあまり来ない」
「入渠が――」
「……彼女は一旦こちらで預かろう。ドックはそう簡単に作れるものでもないからね」
妥協点である。
そう思っていると、青妖精が話しかけてきた。
『提督、あの人間は大破しても入渠させない奴だよ?もしかしたら、白露さんにも同じことするかも知れない』
「ははは、そんな事はしないよ。ちゃんと彼女には高速修復剤を使うさ」
α中尉、地獄耳かよ。
ただ、いくら耳が良くても後ろに目はないようで
「い"ッ」
背後の魚雷を持った電がその魚雷を振り下ろし、α中尉は頭から砂浜に突っ込む。
あの高さの頭を魚雷で打って、地面まで落とすって死んでもおかしくないだろ。
「このっ、くそっ、司令官っ、さんっ」
追い打ちをかけるように顔を蹴る。
なにか向こうで、ぼの!?って声が聞こえた気がする。
まあ取り敢えず、うわぁと言った感じだ。
「うわぁ」
というか電さん、今真面目な会話してたんです。ギャグはその後にでもどうぞ。
そのギャグみたいな光景は艦娘ならではの力で、頭がどんどんと砂に埋まり、最終的には見える部分が胴体と足だけになる。
「ふぅ、服に砂はつけていないのです。感謝したほうがいいのです。あっ、自分でつけたら知らないのです」
悪魔だ。天使の皮をかぶりそこねた悪魔だ。怖っ。
α中尉も最初は手で顔の周りの砂をどけていたものの、十数秒もすれば暴れだした。危ない。
『あ、あのそろそろ助けてあげて』
青妖精ですら助けるほどだ。相当である。
俺を死地へ送っておいてよく言う、と思うほど自分を棚に上げるバカではない。
「仕方ないのです」
そう言って、魚雷を地面に突き刺し少し離れる。それに倣って俺らも離れる。
数秒後、俺らの見守る中、バンッと魚雷は爆発し、α中尉は数メートル程吹っ飛んだ。流石に死んだんじゃね。
「α司令官さんに頼んで作ってもらった、人間が死なない魚雷なのです」
……解説ご苦労です。