「じゃあ、僕たちは失礼するよ」
そう言ってα中尉は艦娘らに号令をかける。
青妖精が、あんな人間のところに艦娘をおいておけない、と言っていたが、あれだけ叩きのめすところを見れば、おそらく大丈夫だろう。
「そうそう、君とは良好な関係を築きたい。欲しいものがあれば手の届く範囲でとってこよう」
俺が帰ることを拒んだくせによく言う。
白露を丁寧に船に乗せ、艦娘に囲まれて来たときと同じように出発する。
そうすると必然的に俺はこの島で一人となってしまった。……ん?一人?
「川内がいない!?」
急いで船の方を見るが、周りより背の高い艦娘はいなさそうだ。
えっホントにどこ行ったんだ?
「提督ー!こっちー!」
どこからか来た声が降り注ぐ。これは川内の声だ。
周りを見渡すと、丘の上に何やら人影が見える。おそらくあれが川内なのだろう。
森というか林というかと言った木々をくぐり抜け、膝ほどの草の生える丘に出る。その先には川内がいて崖の下を見下ろしている。
「およ、来たね提督。見て見て、これ」
それは先程通ってきた木々の一つだった。
川内は自分の身長の2〜3倍程ある木を一本抱え、地面に突き刺す。
流石、艦娘。馬力は優秀である。
「ここらへんってログハウスすらないじゃん?だから、私好みで小さい建物、作ってもいい?」
「は?作れんの?」
「もっちろん!」
か、艦娘ってそんなに優秀なのか…!
建築と言えば資格を取るのが相当難しい部類だ。確かに資格取らなくても犬小屋ぐらいは建てられるのかもしれないが、艦娘が、それも生まれたての艦娘がそんなことを出来るのか。
というか、人間が住むということは、犬小屋では足りない。
「妖精さんも手伝ってもらって、う〜ん、4日前後はかかるかなぁ。白露が帰ってきたらもっと早く終わるよ」
ふと、一晩であの小さな倉庫――一人で暮らすには狭すぎるあの倉庫を、妖精は作ってしまったことを思い出す。
妖精たちが一晩であの大きさなら、4日では随分としっかりしたものができるのではないか。
そこにあの怪力が加わるのだ。もし艦娘が一般に知れ渡ったら、ショベルカーとかブルドーザーとか諸々の掘削機を始め、力仕事が艦娘の仕事になるではなかろうか。
「あっ、そうそう、提督にも手伝ってもらうからね」
「よし、指示出しをしよう」
ふっふっふー。これこそ、俺の数少ない技、面倒くさそうな作業を回されて最初に役割をとっていくことで積極的に取り組んでいることを知らせつつ自分にとってやりたくないものを遠ざける方法、である。
そもそも、提督という指揮する立場でもあるのだ。大義名分はバッチリである。