え、妖精?妖精が喋っているのか?
「ああ、聞こえてる」(もしかして妖精と喋れるのか!マジか!)
じゃああの騒がしかった声も、ここにいる妖精が全員喋っていたものか。何が原因かは分からないが、とにかく妖精の声が聞こえるようになった。
「聞こえてる」
2回も言ってしまうぐらいには嬉しかったり、また信じられなかったりしている。今まで知らなかったものを、死んでからも知ることになるとは思わなかった。このようなファンタジーなものであれば、特に。
『うたげのはじまりだ』『さけをもってこい』『アタタタタタ―』
(なんか思ってたよりファンタジーじゃないな、特に最後)
白露はこんな騒がしいのをまとめていたのか…お疲れ様です。そんなことを思っていると海の方から声が聞こえた。そちらに向くと何やら黒い点が見える。
『しらつゆさんだ』『おかえりー』『激流を制すのは静水』
妖精たちが言うには、あの黒い点が白露ということだろうか。だんだんと近づいてきて、手を振っていることがわかった。
白露は陸に上がり、艤装を解除して、横にある流木に座る。
「もう、せっかくあそこ作ったのに、砂のうえで寝たでしょ。背中の砂払ってあげるから」
背中を向けるように言われる。大人しく背中を向けると容赦なく叩き始める。
「あっそうだ妖精さん。小さな倉庫を作ってくれない?弾薬や鋼材置きたいからさ」
『あいわかった』『がんばります』『てめえらのちのいろはなにいろだーっ!!』
そして騒がしかった声が、遠ざかって行く。しかしあの妖精だけは近く―頭の上にいる。
「ふふっ懐かれたね、その妖精さんに。でもやっぱり不思議だよ、野良の妖精さんが1日も経たずに心を許すなんて」
そりゃ艦娘みたいな人間と近しい存在より、妖精のようなもっと曖昧な方が互いに疑心暗鬼しないだろう。そんなことより、もっと気になるものがある。
「弾薬と鋼材ってどこにあるんだ?」
「それは、妖精さんが持ってるんだよ。だけど、限界があるから倉庫が必要なんだよ」
はい、できた。と言って砂を払い終わる。そしてニカッと笑って
「うん、バッチリ!」
と言う。こうして見るとただの美少女なのだが、どうにも「化け物」という言葉が頭の片隅にある。この行動を人間に落とし込むと
(ただの世話好きなお姉さんだよなぁ」
「もっちろん!一番艦だからねっ」
「…俺なんて言った?」
「お姉さんだよなぁ、って」
マジか、声に出ちゃったか。
「あっそうそう。長距離練習航海っていつもはあたしと村雨と海風と江風で行ってたんだけど、今回は一人だったから思ってたより少なかったよ。2回も行ったんだけどねぇ」
村雨?と…なんだっけ?とりあえずよくわからない艦娘だろう名前が出てきて混乱してくる。
「それで、不思議なことにバケツが手に入ったんだ。あっバケツってのは高速修復剤のことね。噂で聞いたことない?」
高速修復剤?あーそういえば何かトイッターでそんなこと言ってた人がいた気がする。記憶の中を探るため集中していると、死んだときのイタみがよみがえり少し苦い思いをする。
「不思議といえばさ、提督も不思議だよね」
「なんでだ?」
不思議なことと言われると、死んでいることとか妖精が感じられることだとか、色々あるがどれだろうか。
「だって…提督って見た目完全にあたしじゃん」
「今更だな、確かになんでだろうな」
これが俺の「化け物」と言う根本の理由である。