勝負事となれば俺は燃える質だ。
それも知っての上で、この喧嘩をふっかけてきたとすれば、川内は天才である。
ただ、一つ引っかかるのは、たった一日でここまで俺の性格について分かるのか、ということだ。
普通、一年とか二年とかかけて、だんだんと相手を知っていくのだと思うが、それに対して川内は一日である。明らかにおかしい。
一応、5日間を共にした白露ですら、俺を手駒に取るような真似は出来なかった。まぁ、川内を見ていると、白露も俺については知っていて、それでもそれをしなかった、とも考えられるが。
したがって、何か裏があるのではないかと思う。
それに、全ては始まる前の下準備で決まる、と経験則が語っている。
休憩も終わり、壁を取り付ける作業に戻って、片手間に話し始める。
「なぁ、川内。お前、生まれたばっかだよな?」
「艦娘としては、そうだね」
「じゃあ何で、俺と白露を仲良くさせたいんだ?」
もし、もしも、だ。心の中を読めるとか、それに準ずる不思議パワーがある場合、性格を知っているふうに見えたのも納得できる。
だが、情報として事前に知っている物――つまり、心を読むことではなし得ない、人間関係を知っているのなら、それは事前にどこかで知ったということだ。
例えば、俺がα中尉と話しているときに、白露もしくは叢雲から何かしらを頼まれたのだとしたら、仲良くさせようとする理由も納得いく。
要するに、白露から歩み寄ろうとしているのかを聞きたいのである。
それがあればおそらく、少なからず恐怖が解消されるだろう。俺が白露に対する恐怖は後天的なもので、似ているのに格下、というのが気に食わないから持っているものである。
だからこそ、譲歩があれば理性が恐怖を押し付けてくれるはずである。
「私はべつに、仲良くしろ、なんて言ってないよ。ただ、私が仲良くしてほしいだけで、相手にそれを押し付けるのは自分勝手が過ぎる、でしょ?」
考え方の押し付け。確かに俺が嫌うものではある。
しかし、何なんだこいつ。口調と表情によって、明らかに、からかっているのが分かる。そして、俺に酷似した言い回し。
だが、これは憶測に過ぎない。だから、俺の言葉をパクるなとも言えない。
おっと、もうちょっとクールダウンしようぜ。
いちいちこんな事考える必要はない。事実だけを抜き取れば、それで大半のことは解決する。
「はああぁぁぁあ、すううぅぅぅぅ」
大きく深呼吸をする。
突然、奇行に走った俺にびっくりし、川内はこちらを振り向き、俺の行動を伺っている。
「実はな、それは対等な関係でしか成り立たないんだよなぁ。よって、上司、部下の関係、つまり俺と川内の関係ではその式は成り立たない。だから、日本に帰るという目標は強制的に手伝わせることが出来んだよ」
「じゃあ、提督ってのを知らないとね」
「おう、だから、提督ってのを一から教えてくれ」