川内が飛ばした零式水上偵察機が着艦し、その偵察機はどこかに消える。
川内の進路は、おそらく艦娘らの方に向いており、結構速く海の上を滑っている。川内はその艦娘らを助けるつもりのようだ。
ここで俺は一つ疑問に感じた。
「なあ、川内。それって助けてほしいのか?」
艦娘を見捨てると怒る青妖精の手前、あまり、助けるなとは言えないが、それでも、相手に助けてほしいと思ってなくても助けるのは、少々おせっかいではないか。
というのも、別に艦娘だけであるのなら、わざわざ助けるのを止めはしない。
しかし、今回の場合は人間がおぶられていると聞く。
俺のように艤装を使える人間は少なく、そうでない人が多いだろう。所謂普通の人は、艦娘程、海は自由でない。
つまるところ、俺以上に足手まといである。
そんな人を連れてこんなところに来るという事は、それなりの練度があるのか、自殺志願者ぐらいだろう。そうでも無ければ、その人は狂っている。
……何か、凄いブーメランを感じた。
まあとにかく、そういう理由で自己満足的に助けるのは気に入らない。
「そんなこと分かんないけど、私は艦娘で、艦娘は国を護ることが仕事だから、なるべく多くの人を救けないとね」
あ〜仕事ね。それは仕方ないなぁ。
仕事は仕事であり、そこには私情を挟む余地はない。相手がどう思おうが、自分は自分の役割を真っ当するのが理想的な仕事である。
それは命が直接的に関わる艦娘の仕事には顕著に出るだろう。死んでしまっては元も子もないからな、うん。
しばらくすると黒い塊のようなものが見え、更に進むとそれが数人の塊であることがわかった。
そして、最終的にはところどころに怪我を負った艦娘が6名と、そのうち、一番軽傷に見える艦娘に一人の太った男性が乗っていることが分かった。
ただ、その男性が乗っている艦娘が、その中で幼い見た目をしているので、絵面がだいぶ酷いことになっている。
あちらの男性もこちらに気づいたようで、比較的大人びた艦娘に指示を出している。その艦娘はよろよろと滑りながらこちらに来る。あっ倒れた。
「多摩、大丈夫?!」
多摩と呼ぶ艦娘に川内は駆け寄り、目線を合わせる。
「多摩はダイジョブにゃ。それより、川内はどこの所属にゃ?」
砲は圧し折れ、右足を失いところどころに切り傷のある体にしては、ハキハキと喋っている。それでも活発とは程遠い。どちらかというと、冷え切った口調だ。
「私はすぐ近くにある小島に住んでる。提督が泊地の名前を知らないから、泊地は分からないけど、野良ではないよ」
「そう、分かったにゃ」
そう言うと、多摩は元いた場所へと向かう。川内も同じように動き出し、その艦娘らの顔がよく見える位置にまで移動する。
よく見ると、そのおぶられている男性は肩や胸の辺りにキラキラとしたものを掛けていて、θ中将のようなお偉いさんといった風貌だった。
「おい、そこの艦娘。ちっこい方、私と変われ。そして、私を助けろ」
つまり、男性は俺と場所を変われと言っている。そして、その上で安全な場所に連れて行けと言っている。
うわ、くそウザい。