これだけ傷だらけであるのに深海棲艦の襲撃はなく、すんなりと小島に戻った。
普通が通用するのか分からないが、普通、逃げる事もままならない程の傷を相手に負わせれば、とどめを刺しに行くものである。
刺しに来ないとなると、それより重大な理由が深海棲艦側にあるのだろうか。例えば、逃がす事で何かしらの利益があったり、逃さざるを得ない状況下に陥っていたりなど。
逃がす事での利益……う〜ん、思いつかない。しかし、逃さざるを得ない状況は想像がつく。
β大佐以外にも交戦している人がいた場合だ。他の艦娘の攻撃に手一杯になり、この6人の艦娘を追うことが出来なかったと考えれば、なんとなく納得いく。俺は戦闘に詳しいわけではないので、本当になんとなくである。
「おい、お前の提督は何処にいる。私が来てやったのだから、すぐに出迎えにあがるのが当然だろう」
β大佐がこの島に着いて直ぐに川内にそんなことを言っている。まあ、目の前に白露の見た目をした提督はいるけどな。というかむしろ、一緒に海にいたまである。
ただ、俺が提督だとは知らないそうなので、仕方ないというか、俺が言わなかったのが悪いので、普通に失礼だった。
「しょ――」
「あちらが私の提督、少尉です」
そう言って川内はこちらに手を向ける。もちろんそんなことを予想もしてなかったであろうβ大佐は一瞬、こちらを睨めつけたが、直ぐにその目を川内に向けて
「艦娘の分際で、ふざけるな。どこをどう見ればあれが人間に見える。その無い頭で考えても分かることだろう」
いやぁ、川内は嘘ついてない。ただ、β大佐がそう思うのも分からなくないところが辛いところか。とはいえ俺が提督だと証明できるものはない。
そう思っていると、川内が小声で話しかけてきた。
「ねね、提督。私に改装を許可して。確か、電探があったはずだよね?」
「ああ、そうだな。けど、なんで?」
「いいから!」
小声で強調するって、なかなか器用なことするぁ。
そして、俺はよく分からないが川内に改装を許可し、川内は偵察機を外して電探を積んだ。
すると、β大佐は驚いたような顔をして、俺をまじまじと見ている。
「ふむ、貴様が提督で間違いないようだな」
どういうこと?俺が改装を許可して川内が改装しただけだよな。改装が何なのかは知らないが、もしかすると改装と呼ばれるものを許可するのが提督の権限なのかもしれない。
「だが、確か白露とかいう……貴様、ここにドックはあるのか」
「いえ、ないです」
白露が前にイメージ云々言って説明していたドックがあるといえばあるが、危険だと言っていたので止めといたほうが良いだろう。