「それならば、大本営に連絡できないのか?」
大本営?
大本営というと、大本営発表とか何とか言って日本史に出てきた覚えがある。しかし、それは昔の話であり、今ではもう無かったはずである。いや、海軍があるのだし、大本営があってもおかしくはないか。
ただ、一般人に毛が生えた程度の俺が、そんな堅苦しい人々との連絡手段を持っているはずがなく、そんな連絡手段があればとっくの昔に使っているわけで、電子機器など、ここには存在しないのである。
「いえ、ないです」
「では、近くの島との連絡は…?」
「いえ、ないです」
「」
というか、大佐なら無線だの何だのの通信機の一つぐらい持っていてほしい。
そうすれば、直ぐにでも帰れるだろうに……ん?帰れる?
そうか、この人についていけば日本に帰れる可能性があるのか。そうなると、尚更β大佐をさっさと発見してほしい。ついでに帰らせろ。
「そういえば、貴様は少尉であったな。それで提督ということは、特例の奴か。ならば、初期艦がいるだろう。それを呼び出せ」
しょきかん…?書記のことだろうか…?
まあ、俺のところに書記官と呼ばれる役職を持つ人はいないので、いないで良いだろう。
「いえ、ないで――」
急に口を抑えられた。俺の口を抑えているその手の持ち主は川内で、またもや小声でなにか言っている。
「初期艦は白露じゃん、提督。というか、合わせてって言ったのに、何で進んじゃうかなぁ」
書記官が白露だとは知らなかった。
でも、白露って書記っぽいことしてたっけ?そもそもここに紙などの文字媒体もなければ、書く内容もない。書記官の意味ないと思う。
「初期艦は白露ですが、大破しているため今はα中尉にご配慮いただいて別の場所にいます」
「ほう、α中尉を知っているのか。ならば迎えはすぐに来るな」
おや、β大佐もα中尉を知っているのか。世間が狭いのか顔が広いのか、どちらにせよβ大佐は帰れるらしい。
しかし、俺は帰れなさそうだ。昨日にα中尉から日本に帰ることを断られたばかりだからである。はあ、いつになったら帰れるのだ。
空は夕焼けの橙から段々と暗くなってきており、今にも夜の闇が訪れそうである。
もう慣れてしまったため違和感がないが、日本にいた頃は日が落ちても起きていたし、むしろ日が落ちてからが本番であった。
全くもって慣れとは恐ろしいものである。いつも通り眠ろうとすると、丘の方に移したことを忘れていた。
そして、もう一つ忘れていたものがある。そう、β大佐及びその艦娘達の寝る場所である。