補給途絶鎮守府   作:フユガスキ

79 / 254
ばりぞうごん

「それならば、大本営に連絡できないのか?」

 

 大本営?

 大本営というと、大本営発表とか何とか言って日本史に出てきた覚えがある。しかし、それは昔の話であり、今ではもう無かったはずである。いや、海軍があるのだし、大本営があってもおかしくはないか。

 

 ただ、一般人に毛が生えた程度の俺が、そんな堅苦しい人々との連絡手段を持っているはずがなく、そんな連絡手段があればとっくの昔に使っているわけで、電子機器など、ここには存在しないのである。

 

「いえ、ないです」

 

「では、近くの島との連絡は…?」

 

「いえ、ないです」

 

「」

 

 というか、大佐なら無線だの何だのの通信機の一つぐらい持っていてほしい。

 

 そうすれば、直ぐにでも帰れるだろうに……ん?帰れる?

 そうか、この人についていけば日本に帰れる可能性があるのか。そうなると、尚更β大佐をさっさと発見してほしい。ついでに帰らせろ。

 

「そういえば、貴様は少尉であったな。それで提督ということは、特例の奴か。ならば、初期艦がいるだろう。それを呼び出せ」

 

 しょきかん…?書記のことだろうか…?

 まあ、俺のところに書記官と呼ばれる役職を持つ人はいないので、いないで良いだろう。

 

「いえ、ないで――」

 

 急に口を抑えられた。俺の口を抑えているその手の持ち主は川内で、またもや小声でなにか言っている。

 

「初期艦は白露じゃん、提督。というか、合わせてって言ったのに、何で進んじゃうかなぁ」

 

 書記官が白露だとは知らなかった。

 でも、白露って書記っぽいことしてたっけ?そもそもここに紙などの文字媒体もなければ、書く内容もない。書記官の意味ないと思う。

 

「初期艦は白露ですが、大破しているため今はα中尉にご配慮いただいて別の場所にいます」

 

「ほう、α中尉を知っているのか。ならば迎えはすぐに来るな」

 

 おや、β大佐もα中尉を知っているのか。世間が狭いのか顔が広いのか、どちらにせよβ大佐は帰れるらしい。

 

 しかし、俺は帰れなさそうだ。昨日にα中尉から日本に帰ることを断られたばかりだからである。はあ、いつになったら帰れるのだ。

 

 空は夕焼けの橙から段々と暗くなってきており、今にも夜の闇が訪れそうである。

 もう慣れてしまったため違和感がないが、日本にいた頃は日が落ちても起きていたし、むしろ日が落ちてからが本番であった。

 

 全くもって慣れとは恐ろしいものである。いつも通り眠ろうとすると、丘の方に移したことを忘れていた。

 

 そして、もう一つ忘れていたものがある。そう、β大佐及びその艦娘達の寝る場所である。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。