《じゃあ、こっちからは以上だから、切らせていただくよー》
《いやいや、夜戦がどんなものか知りたいから、聞こえるようには、しといてくれ》
俺は片耳についている送信の方を外し、受信のみ出来るようにする。川内の声は聞こえるので、今のところ問題はない。
さて、どうしたものか。夜までは時間があるので暇になった。食料も今のところない、というか、半端に食べたせいで余計にお腹が空いた。
じゃあ、久々に崖下のところにでも魚を捕りに行くか。
崖下は魚にとってはトラップのようになっていて、満潮と干潮の差によって魚が時々いるのだ。
森の中を通り、砂浜を歩き少し行くと、崖下に着く。2日前にはここで軽巡ホ級と対峙し、夜戦というものの怖さがよく分かった。
「んぐっ」
突如感じる肉の腐った匂い。魚でも打ち上がったのだろうか。
結論から言えば、近からず遠からずで、肉ではあるが魚ではない。
あの夜、この岩場で血の匂いがしていたことを思い出す。その血痕を辿ってみれば、そこに落ちているのは人の腕――否、白露の片腕である。
白露は確かに、隻腕であった。その落とし物は既にカビていて、見ていられるものではなかった。
理性ではなく、本能で明らかなる異物、未知の存在、忌避すべき怖いもの、と認識している。
腹の上のあたりが気持ち悪くなり、そこから上へ上へと気持ち悪さが上がってくる。
「おえっ、ゴエッ、あ"ー」
不幸中の幸いで、食べた物はすでに消化済みであった。胃液のみの黄色い液体は、思ったより少なく、海の上を漂っている。
男の時は、効果音でいうとオロロロロってぐらい出るものだが、こうも少ないのはきっと、喉が細いからだろう。後、食べなさ過ぎて胃が小さくなっているのもある。
海水で酸っぱい口を濯ぎ、多少の気持ち悪さを無くす。海水は海水でまた別の気持ちの悪いものがあるが、この際気にしない。
そして、襲ってくるのは、吐いたあとの倦怠感。食欲も失せたため、家(半壊)に帰ってもう寝よう。夜には川内の行動も把握しなければならないし、早めに寝ておくのもいいだろう。
ということで、俺は面倒臭いなと思いつつ、坂道を上り家の中で寝たのだっ…。
「寝れねぇ!」
妖精台風の再来である。
妖精達は嬉しそうに悲鳴を上げながら四方八方へ流れていく。木の枝とかも飛んでいるため結構危ない。
ブルーシートは裂けて使い物にならないし、家も壁が一枚剥がれるとかいう、凄まじい被害を与える。
こういうときに森の偉大さを感じる。激しく揺れているが、風を緩和してくれている。ただ、残念なのは小高い場所は守られないことだ。
枝が痛い。小石が痛い。砂が目に入る。砂利が口に入る。葉が肌にくっつく。風が横殴りに吹く。妖精がぶつかる。
今回のことで分かったことをまとめます。
「自然には勝てないよね」
クリスマス中には無理そうです。せめて日曜には出したいです。