織田を客室に案内し終えて執務室に戻る。部屋に残っているのは大淀だけ・・・小森も見当たらないから大淀だけだな。
「北条は陸奥が迎えに来たか?」
「ええ、先程一緒に行かれました。少々北条さんのテンションに陸奥さんが困っていた様子でしたが、たぶん大丈夫かと。」
「・・・陸奥ならきっと大丈夫なはずだ。」
北条は少々常識外れの事をするだけで、基本的に悪い奴ではない・・・はずだ。色々と苦労した記憶はあるが、北条から悪意を感じた事はなかったからな。だからと言ってあいつもただのバカではないからなぁ・・・
「それよりも明日の取材用の質問がいくつか届いていますが、どうされますか?」
「ほう、早いな。少しだけ目を通すか。」
大淀からいくつか手渡された書類には、質問者の所属とこちらに対する質問が箇条書きで書いてあった。ざっと目を通したが内容は人事部の中井が話していたものと大差なく、特に関心を惹くものは無さそうだな。
「たいした事は書いていないようだな。これは明日に質問を締め切ってからまとめて確認すれば十分だな。となると・・・少し時間も出来るし面談の続きをするか。」
「え?お客様の相手をしなくて良いのですか?」
「北条には仕事を頼んでいるし、霞は体調が悪いからゆっくりさせてやりたい。だから北条の仕事が終わるまでは時間に余裕がある。」
「えっと・・・織田さんは?」
「あいつも今は客室で休んでいる。」
「そうですか。では誰を呼びますか?」
「まずは大和と話がしたい。次に潜水艦の二人も呼んでくれ。」
「分かりました。」
――――――――――――――――――
コンコンコン
「失礼します。大和です。」
「入れ。」
執務室に入って来た大和はなんだか少し暗い雰囲気だ。長門からは大和が何か話したい事がありそうだから、話を聞いてやって欲しいと聞いているが・・・ひとまず大和を椅子に座らせて対話が出来る状態にする。
「まずは今朝の戦いではよくやってくれた。砲撃もだが対空迎撃でも活躍したとの報告を受けている。」
「ありがとうございます。しかし先程の戦闘では中破してしまい・・・ごめんなさい・・・」
「気にする必要は無い。ある程度の損害は想定の範囲内だ。轟沈者が誰も居ないのであれば問題無い。」
「そう・・・ですか。」
どうにも歯切れが悪いな・・・
「何を気にしているのだ?せっかく二人で話をする場を設けたのだ。話したい事はしっかりと話しておいたほうが良いと思うが?」
「あ、いえ、その・・・私は他の皆さんよりも消費が激しいですので・・・」
「そんな事か。大和を出撃させるからには、その程度の事は折り込み済みだ。それに資材であれば呉鎮守府からの支援も届いたから、まだまだ余裕がある。」
「その・・・その資材は・・・どうやって手に入れた物なのですか?」
大和は俯いたまま絞り出すかのようなか細い声で質問してくる。
「どうとは?呉鎮守府からの支援だと言ったはずだが?」
「提督は呉鎮守府の傘下に入る事を断ったと聞いております。それなのに支援をタダで受けられるとは思いません。ならどうやってその支援を引き出したのですか?」
「ふむ、質問の意図は分かった。だが悪いが交渉した結果としか答えられん。」
「そう・・・ですか・・・」
「逆に聞こう。なぜ資材の出所を気にする?」
「ッ!?し、失礼しました!!」
私の言葉に大和は弾かれたように反応して、慌てて謝罪する。
「謝る必要はない。私は理由をなぜかと尋ねているだけだ。私には言えない話ならば無理に聞き出すつもりはないが・・・」
「いえ・・・その・・・提督を疑うような事をつい・・・ごめんなさい・・・」
「今までの環境を考えれば、すぐに私が信用出来ないのは当然の事だ。一々気に病む事はない。それにまともに話をするのはこれが初めてなのだから、いきなり信用しろと言うほうが無理と言うものだ。」
「そ、そんな事は!!提督はこの鎮守府を良い方向へと変えて下さっています!!それは・・・分かっているつもりです・・・」
さて、どうしたものか・・・何か気がかりな事があるのだろうが、おそらくそれは私を非難する内容なのだろう。
「気になる事があるならば今のうちに聞いておいたほうが良いぞ?それに答えられるかは保証出来ないが、答えられない質問や私を非難する内容だったとしても怒りはしない。」
「・・・少し私の話を聞いて頂けますか?」
しばらく黙って俯いていた大和だったが、ようやく話をする気になったようだな。
「ああ、話してみろ。」
「私は・・・以前の提督からは厚遇されていました・・・私が生まれた時、大森提督が大喜びで迎え入れてくれた事を今でも覚えています。」
懐かしそうに静かに語る大和を黙って見守る。あの戦艦と正規空母が大好きな奴なら、大和が着任したら大喜びだろう。むしろ大和の着任を喜ばない奴は居ないか?
「最初は本当に幸せでした。私は資材の消費量が多くて扱い難い艦であると自覚していますが、大森提督は資材は十分にあるから気にせず出撃して構わないと言って下さいました。その言葉に応えるべく何度も出撃して戦果をあげて、上機嫌な大森提督に褒めて頂ける。軍艦時代には大和ホテルなんて揶揄されて、あまり活躍の機会が得られなかった私にとっては本当に誇らしい事でした。」
まあ、気持ちは理解出来る。大和型と言えば最強の戦艦として名高いが、その資材消費量も半端ではない。通常の弾薬や燃料の消費ももちろんだが、もし大破してしまえばその修理に大量の鋼材が必要になってしまう。故に大和型は安易に出撃させる事が出来ない。しかし資材の供給に不安がないのであれば、これ以上無い戦力とも言えるだろう。
「ですが私は知ってしまいました・・・私の幸せは他の艦娘達を犠牲にしていると・・・」
「それで資材の出所が気になったと?」
「はい・・・提督は大森提督がどうやって資材の確保をしていたかご存知なのですよね?」
「大まかな話はな。汚職や艦娘の密売、それに風俗的な扱いもしていたと調べがついている。あとは艦娘達へ使うべき金を抑えての節約か。そうやって得た金で資材を買っていたのだろう?」
「それと私達戦艦や正規空母を守って修理に必要な資材を節約する為に、駆逐艦の子達を盾として扱っていました・・・逆らう艦娘には厳しい罰もありました・・・」
「ああ、その話も聞いている。だが私はそのような戦術を使うつもりはないから安心しろ。」
目を見てはっきりと伝えると大和は少しだけ安心したような雰囲気になったが、まだ何か気になる事があるような気がする。
「ええ、ここ数日の戦いの話は聞いています。提督は私達が沈まないように配慮して下さっていると皆さんが言っていました。実際に私が参加した戦いでも、大破した者の撤退を援護する部隊を準備していてとても驚きました。」
「それなりの損傷を覚悟した戦いだったから、対応出来る準備をしただけだ。」
「そう・・・ですか?」
「ああ。」
しばらくの沈黙が続き、大和はまた俯いてしまう。
「私は弱くて臆病で卑怯な艦娘です・・・」
ポツリと懺悔をするように大和が呟く。
「私には大森提督に逆らう勇気はありませんでした・・・私に優しく接してくれる大森提督が他の娘達に酷い事をしているのを知ったのに、私には皆の為に動く事が出来ませんでした・・・もし怒りの矛先が私に向かったら・・・もし逆らう艦娘は不要だと捨てられてしまったら・・・そんな想像に怯えて何も出来なかった・・・何も変えようとしなかった・・・そんな弱くて臆病で卑怯な艦娘なんです・・・」
なるほど、これが大和が抱えていたものか。他の艦娘達がどんな処遇だったかを考えれば、恐ろしくて動けないのも無理はない。
「話は分かった。私から言わせれば全ての責任は大森提督にあると考えるが、大和は他の艦娘達に引け目を感じていると。」
「そう・・・ですね・・・今までも、そしてこれからもきっと迷惑をかけて生きていくと思いますから・・・」
「それで資材の話に繋がってくると。」
「はい。提督は大森提督とは違って、真っ当な方法で資材を集められるでしょう。きっと駆逐艦の娘達がコツコツと遠征で資材を集めてくれるのだと思いますが、私が出撃すればその資材を湯水の如く消費してしまいます。だから私はまた他の娘達に負担をかけてしまいます。それでも・・・それでも私は・・・戦場で活躍したいと夢見ずにはいられないのです・・・」
ほう、駆逐艦達への罪悪感を感じながらも、それでもなお戦場で活躍したいと考えるか。よほど活躍していたのが嬉しかったのだな。
「ふむ、大和の考えは分かった。だが組織と言うものをあまり理解していないように感じる。」
「組織をですか?」
「ああ、組織を上手く運営するには役割分担が必要だ。前線で戦う者、資材の回収をする者、後方支援に徹する者、各自がそれぞれに与えられた仕事をする事で組織は運営されており、その全てを管理するのが私の仕事だ。だから資材を集めてくれる駆逐艦達に感謝をするのは良いが、引け目を感じる必要は無い。そんな事を気にして自分の与えられた仕事に支障が出れば、その方が駆逐艦達に顔向け出来ないと知っておけ。」
「そう・・・ですね。もちろん戦場で活躍する機会を頂けるのであれば全力で戦います!!」
「それと大森提督に逆らえなかった件だが、私としては気にする必要は無いと思うが、私が気にするなと言っても気になってしまうのだろう?」
「ええ・・・」
「それならば今後は守られる側から守る側になる事を目指すと良い。」
「守る側ですか?」
「今までは駆逐艦達を盾にして守られて来たのだろう?ならば今度は大和が駆逐艦達を守ってやれば良い。大和は強力な戦艦だ。その火力と射程は敵の脅威を遠距離から排除する性能を持っているし、対空能力も高いので敵鑑載機から味方を守る事も出来る。だからもっと強くなって駆逐艦達や随伴艦を、もっと言えば鎮守府を守れる存在になれば良い。」
大和は私の言葉を深く噛み締めるように目を閉じてしばらく沈黙していたが、顔を上げてこちらを真っ直ぐ見つめてくる目には覚悟を感じる事が出来た。
「ありがとうございます。提督のおかげで私の進むべき道が見えました。」
「ならば今後も宜しく頼む。資材の兼ね合いもあるから頻繁には出撃させてやれないだろうが、いざと言う時の切り札として期待している。」
「はい!!お任せ下さい!!」
立ち上がって良い笑顔で敬礼する大和に頼もしさを感じる。どうやら今回の面談は上手くいったようだな。
気が付けばいつもよりかなり長めの内容になってしまった。まあ、そんな時もあるか。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!