イムヤ達が去るとすぐに執務室に大淀がやって来た。
「て、提督?先程のイクさんの叫びは・・・提督も頭を抱えられて・・・いったい何があったのですか?」
「色々と想定外の事があってな・・・」
「私で良ければお話を聞きますけれど?」
「いや、こういう話を女性に相談するのはどうかと思うが・・・だが対処に関しては同じ女性の方が分かるのか?」
大淀に話すべきか迷っていると、大淀が深いため息を吐く。
「あぁ・・・なるほど、イクさんに言い寄られたのですね。」
「そんなところだ・・・」
「それで提督は私達にそういう事をさせるつもりは無いと公言しているにも関わらず、イクさんが誘って来るので対処に困ったと?」
「まあ・・・そうだ・・・」
「提督にその気が無いのであれば、普通に断ったら良いのではないですか?我々艦娘は提督のご命令には逆らえませんので、提督がそういう関係を拒絶されればそれまでかと?もし提督がイクさんとそういう関係になりたいのであれば、合意の上であれば誰も文句は言わないと思いますよ?イクさんですし・・・」
大淀は本当に不思議そうに尋ねてくる。と言うか最後のイクさんですしってなんだ?艦娘達もイクがあんな性格だと言うのが共通認識なのか?
「いや、私にその気は無い・・・無いのだが、安易に拒絶してしまうだけで良かったのかと考えてしまってな・・・」
「と言うと?」
「性欲は食欲・睡眠欲とならぶ人間の三大欲求だろう?お前達の話を聞いて様子を見る限り、食欲は燃料で誤魔化しは効くものの、普通に食事をさせなければ士気の低下を引き起こす。睡眠欲も普通の人間よりは耐えられるが、長時間不眠で働けば性能の低下を引き起こす。ならば性欲はどうなるのだ?」
「え、えっと・・・そこまでは考えた事はありませんでした・・・」
「私もそっち方面の欲求不満で能力が低下したという話は聞いた事がないのだが、艦娘が女性で提督の多くが男性だという事を考えると、艦娘達がそういう相談を提督にする可能性は低く、表沙汰になっていないだけなのではないかと疑ってしまう。給料をきちんと貰って外出許可も出せる鎮守府であれば、各自で何かしら対応して貰う事が出来ると思うのだが・・・給料はもうすぐなんとかなりそうだが、外出許可を出せるようになるまではもう少しかかりそうだからな・・・」
「え!?私達に給料を支給されるのですか?」
大淀は本当に驚いたような雰囲気だ。まあ、前任者のやり方に慣れていれば無理もないか。これは意識の改革から手を着けなければならない案件だろうか?
「一応規定では、提督は所属する艦娘達に給料を支給する義務がある。財政難等を理由に支払わない者も多いのが現状だがな・・・」
「財政難ですか?前任者の大森提督は金銭面で困っているようには見えませんでしたが?」
「それでも通ってしまうくらい有名無実の規定ではあるな・・・そもそも人間の給料と比べてしまえば、艦娘の給料はお小遣い程度に設定されている。」
「え、えっと・・・とりあえず今まで貰った事がありませんでしたが、困った事はありませんでしたので・・・」
「それは鎮守府では衣食住を提督が保証するからなのだが・・・それすらしてない奴が多いのが現状だからなぁ・・・そもそもお前達は大森提督のやり方に慣れてしまっているからな・・・」
ここまで説明しても大淀はあまり理解出来ていない様子だ。これは意識改革もかなりの大仕事になりそうだ。
「えっと、私達が給料を頂けるという話は分かりましたが、その給料の使い道はどうなるのでしょうか?艦娘として生まれてから一度もお金を使った事が無い者がほとんどだと思いますが?」
「ああ、それも外出許可が出せない理由の一つだな。艦娘達にある程度人間社会の常識を理解して貰わなければ、トラブルを起こす事が目に見えている。金銭感覚やある程度の常識がありそうなのは、外部の人間と接触する機会がある大淀・明石・間宮あとは明石の手伝いをしている夕張くらいか?」
「そうですね・・・あとは鳳翔さんも大森提督が着任される前に着任されてますので、もしかしたら大丈夫かも知れないです。」
「まあ、そんなところだろうな。とにかくしばらくは明石を経由して買い物をして貰い、金銭感覚を身に付けて貰うつもりだ。ある程度金銭感覚が身に付けば、私が戦艦や空母などの比較的落ち着きのある者達を連れて街に出る。そこで問題無いと判断出来れば、その者達が引率する事が条件で他の者達にも外出許可が出せるようになるだろうと考えている。」
「な、なるほど。先が長そうなお話ですね。」
「ああ、本当にな・・・」
この辺の常識を教えるなんて話は普通の兵士では起こらない艦娘特有の問題だろうな・・・そもそも給料を貰って外に買い物に行けるような鎮守府であれば、新しく着任した艦娘を他の艦娘達が案内するので、問題など起きないのだが・・・
「まあ、そんなわけでしばらくは外出許可が出せないのだ・・・ならばそれまでは何かとこちらで配慮する必要があるのだ・・・そして食欲や睡眠欲に繋がる居住環境の改善については、私も理解出来るし対応も容易だ。心に余裕が出来て何か欲しい物があれば、明石を通して購入させれば問題無いだろう。だが性欲に関しては・・・」
「そう・・・ですね・・・そもそも嫌な思いをしてきた者達が多いので、今の環境で不満を持つ者はほとんど居ないと思いますが・・・どこにでも例外は居ますから・・・」
「ああ、本当に想定外だったからここまで悩む事になったのだ・・・外部の人間の相手をさせれば接待の疑惑が生まれる。かと言って私が相手をすれば無理やり迫った疑惑を持たれるし、そもそも私はお前達とそういう関係になるつもりは無いのでな・・・」
「手詰まりですね・・・」
「ああ・・・」
大淀と二人で頭を抱えるが、それで解決策が思い浮かぶ程度であればここまで悩んでいない。
「ん・・・提督、曙さんから通信です。今姫級の居た拠点に到着したので、資材を積み次第帰還するとの事です。」
「ほう、かなり早かったな。」
「道中の安全を横須賀の艦隊が確保していましたので、輸送船も含めて全速力で航行出来ましたからね。それに暗くなると周囲の警戒が難しくなってしまいますから、かなり急いだようです。」
「なるほど、叢雲の判断だろうな。横須賀の戦力があってこその判断だろう。」
「帰りは資材を積むので多少時間はかかると思いますが、19時頃には帰還出来ると思います。」
「分かった。では祝勝会は全員揃ってから出来そうだな。間宮には20時から始めたいと伝えて欲しい。」
「分かりました。・・・間宮さんもなんとかしますとの事ですが、手の空いている娘達に手伝って欲しいとの事です。」
「分かった。では人選は間宮と大淀に任せる。料理が出来ない奴を向かわせたら逆に邪魔してしまうだろうからな。」
「お任せ下さい。提督はこれからどうされるおつもりで・・・すいません、陸奥さんから倉庫区画に来て欲しいとの事です。北条さんが提督を呼んでいるそうで・・・」
ほう、おそらく値段の設定が終わり、北条が購入したい物の交渉と言ったところか。とりあえず成果を確認しておきたいところだな。
「分かった。私が対応する。何かあれば陸奥経由で連絡してくれ。」
そう大淀に言い残して執務室を後にする。結局イクの件はどう対応するか決まらなかったが、しばらくは様子を見るしか無いだろう・・・これ以上面倒事が起きなければ良いのだが・・・
大淀と性欲の話をしてますが、普通に考えたらセクハラですね・・・二人とも真剣に考え過ぎてて気にして無いですが・・・大淀さん、文句を言っても良いやつですよ?
―追記―
白露if更新中です。今回も続き物になるので、まずは前編だけ投稿してます。
―さらに追記―
一周年記念アンケートで、艦娘の中で最も票を獲得した大淀のifを投稿しました。かなり長くなりましたが、是非読んで見て下さい。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!