そしていきなり陸奥を建造出来たので、浴衣姿の陸奥を眺めてニヤニヤしております。
衣笠に声をかける為に探そうとしたが、こちらが探す前に既に衣笠が来ていた。
「ちょうど良かった。話を聞いていたのか?」
「そりゃ朝潮ちゃんと不知火ちゃんが大声出してたからね。皆気になってたし衣笠さんの名前が出て来たら気になるでしょ?」
そう言われれば食堂から出ていないのに、あれだけ騒いでいたのだ。注目されないほうがおかしいか。
「それもそうか。なら話が早いが衣笠は夜戦に参加するか?もし祝勝会を楽しみたいなら他を探すが?」
「絶対に出るからね!!衣笠さんは料理もデザートも充分楽しんだからもう大丈夫♪それに美味しい食事食べてやる気満々なんだよ?こんな絶好調の時に断る娘なんて居ないって!!それより問題なのは・・・ほらあれ。」
衣笠の指差す方を見てみると、球磨と五十鈴が睨みあっていた。
「ここは球磨に任せておくクマ。五十鈴はケーキでも食べてゆっくりしてれば良いクマ。」
「はぁ?五十鈴に引っ込んでろって言うの?冗談じゃないんだけど?球磨こそ大好物の鮭でも食べてれば良いのよ。」
「それはもう喰ったクマ!!だから元気いっぱいで球磨の野性が暴れたがっているクマ!!今回は対潜じゃないから球磨のほうが良いに決まってるクマ!!」
「はぁ!?追撃戦は五十鈴の十八番よ!!今回は散り散りの敵を各個撃破するんでしょ?なら五十鈴の出番じゃない!!」
「クゥ~~マァ~~!!」
「むむむむ!!」
「良いね♪良いね♪夜戦への最高の情熱を感じるよ!!どっちが夜戦への情熱を持っているか勝負だね!!」
球磨と五十鈴が唸りながら睨み合いを続け、一触即発の雰囲気だ。てっきり祝勝会の料理を楽しんでいる途中だから、出来れば出撃したくないのかと思っていたのだが・・・これは少々誤算だったようだな。そして川内は煽るな。
「ほらね。あの二人もやる気でしょ?ほら、ちゃんと提督が決めないと、あの二人いつまでも睨みあってるわよ?」
「そうだな。お前達のやる気を少々甘く見積もっていたようだ。」
「なんだかんだ言って私達艦娘は戦う為に生まれた存在だからね。ほら、その・・・存在意義的なやつかな?ボロボロの状態だったらともかく、万全の状態なら皆活躍したいって思うよ。まあ、青葉みたいに別の事に情熱注いでる娘もたまにいるけど。」
ふむ、なるほど。そう言われればここの艦娘達は酷い扱いを受けていたにもかかわらず、出撃する事に関してはほとんどの艦娘が肯定的だ。こういう精神的な強さも艦娘としての特殊性というものだろうか?
「そういうものか。とりあえずあの二人を止めてくる。」
衣笠にそう言って喧嘩をしている二人を止めようとしたが、その前に木曾が間に入った。
「おいおい、五十鈴も球磨姉も落ち着けよ。」
「なによ?五十鈴に文句でもあるの?」
「木曾は下がってるクマ!!ここは姉ちゃんがカッコいいとこ見せてやるクマ!!」
「いや、二人とも出撃してぇのはすげぇわかるけど、こんなとこで喧嘩すんなよ。出撃してぇのは本当によく分かるけどよ・・・」
「「う・・・」」
喧嘩の仲裁に入った木曾が落ち込んで、当事者二人に同情されるという奇妙な空間が出来上がってしまった。よほど夜戦に参加したかったようだな・・・
「ほ、ほら?木曾は明日の朝から任せたい仕事があるって言われてたじゃない?だから心配しなくても大丈夫よ?」
「はぁ・・・仕方ないクマ・・・今回は五十鈴に出番を譲ってやるクマ。球磨は姉ちゃんとして木曾を独りぼっちにするのは忍びないクマ。」
「そ、そう?じゃあ五十鈴が出るわね。」
ふむ、どうやら決まったようだな。木曾としては不本意かもしれないが、結果として見事に場を収めてくれたようだ。
「あー、では川内・衣笠・五十鈴は出撃の準備をしてくれ。」
「やったぁ♪夜戦だぁ♪夜戦だぁ♪♪」
「はぁーい♪衣笠さんにお任せ♪」
「ふふっ♪五十鈴に任せて!!」
元気良く走って行く三人を見送って、今後の予定を考える。夜戦をすると決めた以上、こちらも指揮をする準備を整えなくてはならないな。
――――――――――――――――――
『メーデー、メーデー、メーデー。こちら駆逐艦陽炎所属妖精、誰か応答願う。』
『こちら北九州鎮守府通信設備妖精、状況報告を求む。』
『陽炎がケーキを食べ損ねて落ち込んでいる。しかも朝潮と不知火に睨まれてるから、誰かに頼む事も出来ない状況だ。なんとか出来ないか?』
『甘えるな馬鹿野郎。妖精に出来る事じゃないから諦めろ。』
『クソッタレ!!甘いお菓子なんて食べた事無いから物凄く楽しみにしてたんだぞ!!たくさんあるなら分けてくれても良いじゃねぇか!?』
『だからそれをどうやって伝えれば良いと思っているんだ?俺達の言葉は艦娘にも提督にも伝わらないんだぞ?金平糖くらいならともかく、ケーキなんて大物運べないだろ?』
『うぅ・・・そりゃ分かってるけどよ・・・』
『あー、割り込み失礼。工廠妖精だ。落ち着け新入り。俺達がなんとかしてやるから大船に乗ったつもりで待ってろ。』
『ほ、本当か!?ありがてぇ!!』
――――――――――――――――――
『って事で小森の嬢ちゃん。なんとかしてくれないか?』
「う、うん・・・」
妖精さんから相談されたけど・・・陽炎さんってあの元気で明るい娘だよね・・・喋りかけられたら怖いんだけど・・・しかもあの真面目で大きな声で話す朝潮さんと目付きが凄く怖い不知火さんも近くに居るんだよね・・・でもせっかく楽しみにしてたケーキが食べられないのはちょっと可哀想だな。
「分かった・・・なんとかする。」
『おお!!ありがてぇ!!』
うん、私と妖精さん達とは持ちつ持たれつだから、皆を頼るからには頼られた時はちゃんと助けてあげないといけないよね。とりあえず妖精さんを肩に乗せて周囲の様子を伺う。幸いな事に今は五十鈴さんと球磨さんの喧嘩に皆の意識が向いている。動くなら今がチャンスだね。
『小森の嬢ちゃん、作戦は?』
「冷蔵庫にまだケーキの箱があると思うから、その箱に『夜戦出撃者ご褒美用』ってメモを付けようと思うの。」
『なるほど、それならとっておいてくれるだろうな。メモとペンはどこから持って来るんだ?』
「それは貼れるタイプのメモをいつも持ち歩いてるから大丈夫。」
『なんでそんなもん持ち歩いてるんだ?』
「何か伝えたい事がある時にメモがないと困るでしょ?」
当たり前の事を答えたけれど妖精さんは首を傾げている。何が分からなかったんだろう?とにかくあんまり時間をかけてもいけないから行動しよう。とりあえずメモの準備を済ませてから厨房へと忍び込む。食堂の方を見てニコニコしながら休憩している間宮さんに気が付かれないように注意して冷蔵庫へと近づく。うん、こっちには気が付いていないから大丈夫。そっと冷蔵庫を開けると中には使いきれなかった食材がたくさん入っていた。
『おお!!こりゃすげぇな!!』
感動している妖精さんには悪いけれど、今は隠密行動中だから静かにして欲しい。さっとお目当ての物を探すと、いくつかケーキの箱が残っていた。とりあえず基本はやっぱりショートケーキだと思うから、ショートケーキの箱にメモを貼ってそっと冷蔵庫を閉じる。うん、間宮さんにはまだ気付かれてない。慎重に厨房から撤退してこれで任務完了だ。
『やっぱり小森の嬢ちゃんはすげぇな。間宮さんは全然気が付いてなかったぜ。』
「慣れてるからね。」
さてお仕事も終わったし、私も席に戻ってデザート食べようかな?北条さんも織田さんも怖いけど、北条さんがくれるお菓子は凄く美味しんだよね。
『じゃあ、あとはケーキを確保してるのを陽炎に伝えたら任務完了だな。』
「・・・・・・え?」
『そりゃそうだろ?じゃないと悲しい気分で夜戦に行っちまうぞ?』
「・・・・・・分かった。」
――――――――――――――――――
「さぁ皆!!夜戦の準備は出来た?」
「はい!!朝潮!!いつでも行けます!!」
「不知火も問題ありません。」
「うん、私も大丈夫よ。」
川内さんが目を輝かせながら聞いてくる。これは一刻も早く夜戦に出たいって顔だなぁ。衣笠さんと五十鈴もやる気みたいだし。ケーキの件は諦めるか・・・運良く残ってたら良いけど。
「提督、皆準備出来たよ♪出撃して良い?」
「ああ、だが無理はするな。危険だと判断した場合は即座に撤退しろ。」
「うんうん、わかってるって♪じゃあ行ってくるね♪」
通信越しで指示を受けた川内さんに続いて、出撃港へと向かう。ああもう、今は出撃に集中しないと!!
「あれ?ねぇ陽炎ちゃん、艤装になにを付けてるの?」
「え?衣笠さん、何かついてます?」
「ほらこれ、メモかな?」
衣笠さんがとってくれたメモには「冷蔵庫にケーキを確保してる。帰ったら皆で食べて。」と書かれていた!!
「やったぁ♪ねぇねぇ皆♪冷蔵庫にケーキを確保してるから、帰ったら食べてってさ♪」
「へぇ?良いじゃん♪ますます夜戦にやる気が湧くよね♪」
「司令官の心遣いでしょうか?このような配慮までして頂けるとは感激です!!」
「ここの司令は優しい方ですね。良かったですね陽炎。」
「えへへ、よぉし!!川内さん、夜戦頑張りましょう!!」
「もちろん!!じゃあいっくよぉ!!」
「ねぇ五十鈴、提督がこんな回りくどい事すると思う?」
「ないわね。提督なら直接言うと思うわ。」
「だよねぇ。じゃあ誰かな?」
「さぁ?五十鈴にはわからないわね。」
「そっか。まあ、後で聞けばいっか。」
おまけが長くなり過ぎた。むしろおまけがメインと言っても過言ではないくらいですね。