疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 今回は前後半でガラッと雰囲気が変わります。落差が半端ねえ。


144話(潮ちゃんお手製甘々コーヒー漣スペシャル)

 鶴野提督がどう動くのかわからないので、とりあえず届いた質問状に目を通していく。基本的に自分を追及するものがほとんどだが、少し原田提督を追及するものも混ざっている。状況も混沌としてきたので、誰が何を狙って動いているのかが見えてこない。

 

「ほう?これは・・・」

 

「なに?気になるものでもあった?」

 

「ああ、ちょっと読んでみると良い。」

 

「えっと・・・え!?これ原田提督だけじゃなくて、鶴野提督も批判してるじゃない!?」

 

「ああ、原田提督の艦隊指揮能力の低さ、敵前逃亡をした件、長門市への避難勧告が遅れたせいで被害が拡大した件を追及している。そして日本海側を管理しているのに、そんな奴を提督に据えていて、救援も送らなかった鶴野提督の責任を追及するものだな。」

 

「あと私達が長門鎮守府の救援に向かわなかったのは、鶴野提督と久藤提督の派閥争いが原因ではないのか?なんて書かれてるわよ!?」

 

 ふむ・・・質問状の差出人は特に聞いたことのない無名の新聞社のようだが・・・ずいぶんと攻めた質問をする奴だ。鶴野提督の批判だけでも珍しいのに、同時に久藤提督の批判もしている。何故か北九州鎮守府が久藤提督の派閥に入れられているのが気に食わないが、他の質問はまともな事ばかり書いている。

 

「・・・曙はこれをどう思う?」

 

「すごく的を射た質問ばかりね。少しは話の分かる奴も居るじゃない。会見の時にこの質問状を使いたいくらいね。そんな事は大本営が許さないと思うけどね。」

 

「・・・そうか。」

 

 曙から見てもそう感じるか・・・

 

「なによ?気になる事があるならちゃんと言ってよね。」

 

「この質問状がこちらにとって都合が良すぎるのが気持ち悪くてな。」

 

「どういう事よ?」

 

「我々が久藤提督の傘下であるという認識を除けば、私の考えとほとんど一緒の内容だと言っても良い。質問の仕方も分からないから聞いていると言うよりは、こうですよね?という確認している感じで、事実にかなり近い質問ばかりだ。」

 

「確かにちょっと不自然ね・・・」

 

「それにここまで直接的に鶴野提督を攻撃しようとするのも不自然だ。この件が鶴野提督の耳に入ったら、無名の会社など潰されるだけだぞ?斬新な記事を書けば知名度が上がるかも知れないけれど、リスクが高過ぎると思う。」

 

 曙も少し考えてから納得したようだ。

 

「それもそうね・・・それで、提督はこの質問状をどう考えているの?」

 

「そうだな・・・今のところ思いつくのは、この質問状が使われない事を前提に送られたという可能性だな。」

 

「え?どういう事よ?」

 

「つまりこの質問状を私が読んで、内容的に会見では使わないと判断している場合だ。」

 

「質問に答えて貰えないと考えて質問状を送ったって事?そんな無駄な事するかしら?」

 

「一見無駄には見えるかも知れないが、この質問状を送ってくる事で私の印象に残る。そして個人的に接触してくるという可能性だ。」

 

 少々回りくどいかも知れないが、今回の会見では報道関係だけでなく多くの有力者が来る事になる。ここまで情報を集める能力があって頭が回るのであれば、会見がまともなものにならないと考えても不思議ではない。ならば個人的に接触する機会を作ろうとするのも理解出来る。

 

「うーん?まあ、分からなくはないわね。」

 

「それともう1つは逆に私がこの質問状を会見で使うと考えて送った場合だ。」

 

「えぇ・・・大本営を無視してこんな質問に答えるなんてリスクが高すぎるでしょ?」

 

「別に正直に答える必要はないさ。こんな質問がありましたが、大本営の意向で回答出来ませんと言えば良い。なんならそんな事実はありませんと答えても構わない。」

 

「・・・つまりこっちは鶴野提督の失態を追及しないけれど、集まった記者達に鶴野提督に落ち度があると印象付ける事が出来るってことであってるかしら?」

 

「そういう事だな。この場合この質問状を送った奴の名前も公開して、そいつを生け贄にするつもりだがな。」

 

「ふーん、でもそれだとこんな質問状を送るリスクが高すぎないかしら?久藤提督にでも守って貰うつもりかしら?」

 

 確かに鶴野提督を真正面から批判するのであれば、敵対する久藤提督の差し金だと考えるのが妥当なのだが・・・

 

「それはそれで違和感がある。久藤提督の差し金ならば、鶴野提督と久藤提督の派閥争いの話をするメリットが無い。この話をすると久藤提督が私に援軍を送らせないように指示をした事になってしまい、責められるのは久藤提督だ。」

 

「じゃあ誰なのよ?」

 

「そうだな・・・おそらく差出人は捨て駒か実在しないと考えて良い。黒幕の目的は鶴野提督と久藤提督の勢力を削るのが目的だろうか?これ以上は情報不足だな。」

 

 案外海原弟が絡んでいるのか?だがあいつは腹黒いが簡単にボロが出るような真似はしそうにないのだが・・・まあ、そもそも前提が仮定の話なのだから、もしそこで間違っていれば結論なんて出るはずもないか。

 

「それもそうね。」

 

 曙もこれ以上の考察は無駄だと判断して、残りの質問状の確認をしようとしていたら・・・

 

「ご主人様お待たせしました!!」

 

 明るい声と共に漣達が帰ってきた。そう言えばコーヒーを淹れてくれるとの事だったが、思ったより時間がかかったな。だが自分が漣達を怖がらせてしまったようなので、心を落ち着ける為の時間をとったと考えれば仕方ない事か。漣は気持ちを切り替えたようで満面の笑みだが、朧は気まずそうに目線を反らしていて、潮は漣の後ろに隠れてしまっている。

 

「ああ、戻ったか。」

 

「ええ、では潮ちゃん!!さっそくご主人様にコーヒーを渡したげて!!」

 

「・・・ど、どうぞ。」

 

「ああ、ありが・・・・・・とう?」

 

 コーヒーを渡す役目を潮に任せた事を意外に感じたのだが、お盆に乗せて差し出されたそれに目を奪われてしまう。

 

「な・・・これはなんだ?」

 

 お盆の上にはアイスコーヒー?のグラスが5人分用意されていた。それは良いのだが・・・そのコーヒー?はアイスとクリームとフルーツで彩られていた。しかもなにか刺さっている・・・これは自分の知っているコーヒーではない・・・

 

「名付けて『潮ちゃんお手製甘々コーヒー漣スペシャル』です♪」

 

「そ、そうか・・・どうしてこうなった?」

 

「えっと、コーヒーの準備をする為に食堂に行ったのですが、漣達はご主人様の好みを知りませんでしたのでご主人様のお友達に相談したら、ご主人様はコーヒーは甘いほうがお好きとお聞きしました。」

 

「確かにコーヒーは甘いほうが好みだが・・・だからと言ってこうはならないだろう?普通は砂糖とミルクではないのか?」

 

「いやまぁ、普通にコーヒーを淹れても印象に残らないかなぁと思いまして、食堂にある材料を使って漣が個性的な一品に仕上げて見せました♪」

 

「そ、そうか・・・」

 

 まさかコーヒーを淹れるだけの事に個性を求めてくるとは思わなかったな・・・潮はお盆を差し出した状態で目線を下げてプルプルしていて、朧は気まずそうに目線を反らしたまま頬を掻いている。

 

「私と潮は止めたんだけど・・・漣がね・・・」

 

「はぁ・・・なにしてんのよこのクソピンク。」

 

「おおう!?ぼのたんから久し振りにクソピンク頂きました!?」

 

「余計な事するからでしょ!!コーヒーくらい普通に淹れなさいよ!!」

 

「いやいや、ご主人様のご機嫌取りの為に精一杯頑張った結果ですぞ!?」

 

「逆に困らせてるのよ!!クソピンク!!」

 

「でも甘い物食べたら幸せな気持ちになると漣は思う訳ですよ。」

 

 漣と曙が言い合いを始めたが・・・今回ばかりは曙が正しいと思う。とりあえず今後はコーヒーに漣は関わらせないようにするべきか・・・

 

「あ・・・あの・・・」

 

「ん?ああ、潮、待たせて悪い。そこに置いてくれ。」

 

「えっと・・・漣ちゃんがごめんなさい・・・新しく淹れなおしましょうか?」

 

 せっかく潮が少し話をしてくれるようになったと言うのに、最初の話題がこれとはな・・・潮にとっては災難だったな・・・

 

「いや、そのままで良い。食べ物を粗末にするのは良くないからな。」

 

 潮が私の前にコーヒー?とスプーンを置いてくれた。これはあれだ、コーヒーと思うから違和感があるのだ。こういうスイーツだと考えればそれほど問題はないのではないか?そんな事を考えていると第七駆逐隊にも謎のコーヒーが配られていた。

 

「はぁ・・・こんな事になるならあたしがコーヒー淹れてくれば良かったわ・・・」

 

「ふふっ、本当にそんな事言って良いのかねぼのたん?」

 

「なによ?クソピンク。」

 

「この潮ちゃんお手製甘々コーヒー漣スペシャルを食べた後でも同じ事が言えるかな?」

 

「ふん!!」

 

「まあまあ、物は試しって事で・・・」

 

 まずは朧が喧嘩する曙と漣を仲裁しながらコーヒーにスプーンを伸ばす。

 

「うん、上の部分は普通にクリームだから甘くて美味しいね。」

 

 確かに朧の言う通り、上に乗っている部分に関してはただのクリームとフルーツだからな。朧に続いて他の姉妹もコーヒー?に手をつける。

 

「キタコレ!!甘くてウマウマですな♪」

 

「・・・そうね。でもこれなら普通に別のお皿に盛って出せば良いじゃない。」

 

「これだからぼのたんは・・・もっと遊び心を持とうぜ!!」

 

「あんたは遊び過ぎなのよ!!」

 

「・・・でも甘くてとっても美味しいよ?」

 

「おお!!潮ちゃんの優しさが染み渡る!!さぁさぁ!!提督もどうぞ!!」

 

「そうだな。」

 

 それにしても漣は本当に遠慮なくぐいぐい来ているな。本当についさっきまで私を怖がっていたのだろうか?こういう軽い態度は不快では無いのだが、理解が追いつかない。こういう感情で動くタイプは苦手だな。同じ感情で動くタイプでも川内みたいに分かりやすい奴なら良いが・・・

 

「ふむ・・・やはり上の部分は普通のスイーツだな。グラスのふちに刺さっているリンゴが邪魔になって食べにくいが・・・」

 

「うーん、ウサギリンゴ可愛くないです?やっぱり第七駆逐隊的にはウサギは外せないと思うんですよ!!漣も潮ちゃんもウサギ好きですし、ぼのたんも実はこっそりと艤装にウサギマーク付けてますし。」

 

「ちょ!?なに言ってるのよ!!」

 

「本当はおぼろんのカニ要素も入れたかったのですが・・・流石にスイーツにカニはキツイかなぁと自重しました・・・」

 

「うん、アタシがカニは絶対に入れないでって漣を止めました。」

 

 これにカニの足が突き刺さっていたかも知れないと考えると・・・

 

「そうか・・・朧、良くやってくれた。」

 

「うん、アタシもカニ入りは食べたくなかったから・・・」

 

「いやいやいや!?漣だって本当にやろうとは思ってませんよ!?」

 

「どうだか?あんたは悪ノリが行き過ぎそうで怖いのよ。」

 

「素っ気ない態度でそんな事を言いつつも、漣スペシャルを楽しむぼのたんであった。」

 

「うっさいわね。思ってたよりまともだったから食べてるだけよ。」

 

 確かに見た目で驚いたが、実際に食べてみるとそこまで悪くない。曙が言っていたように別のお皿に盛って出しても良いとは思うが・・・問題はコーヒーがどうなっているかだな。

 

「まあ、そこは潮ちゃんが頑張って作った一品だからね。」

 

「・・・?漣スペシャルって言ってたから、あんたも一緒に作ったんじゃないの?」

 

「人には得手不得手と言うものがありましてですねぇ・・・漣はアイデアを出しただけで、調理は潮ちゃんが全てやってくれました。潮ちゃんの女子力半端ねえっすわ。」

 

「漣・・・あんたねぇ・・・」

 

「じゃあぼのたんはコーヒー淹れられるの?」

 

「それくらい普通に出来るわよ。・・・でもこのコーヒーあたしが淹れたのより美味しい。」

 

「ふっふっふっ、潮ちゃんとの戦力差を理解してしまったようですな。」

 

「あんたが威張るな!!このクソピンク!!」

 

 ほう?コーヒーのほうも美味いのか?試しにコーヒーを飲んでみるとコーヒーは甘さ控えめにしており、上のスイーツと一緒に飲むのがちょうど良いくらいだ。あんまり時間をかけすぎるとアイスが全部溶けて台無しになりそうだが。

 

「ほう、美味いな。」

 

「あ、ありがとう・・・ございます。」

 

「よっしゃあ!!見たかぼのたん!!ご主人様からお褒めの言葉を貰った!!つまり漣達の勝利って事だよね!?キタコレ♪」

 

「もうそれで良いわよ・・・さっさと食べて仕事に戻るわよ。」

 

 まあ、想像よりも美味かったのは本当だし、多少なりとも第七駆逐隊との交流するきっかけになったと思えば、この謎のコーヒーも良かったのではないだろうか?もしかするとこれが漣がおかしな事を始めた本当の狙いだったのかもな?




 おまけで付けるつもりだったコーヒーの話が思っていたよりも長くなりました。というかこれIf並みの甘さでは?
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