疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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145話(夜戦忍者・綾瀬さん)

「提督、川内さんから通信が入ったわ。」

 

 思っていたよりも美味しかった謎のコーヒーを食べ終わって、一息ついたあたりで川内からの連絡があった。

 

「分かった、代わろう。川内、状況は?」

 

「提督!!今夜も最高な海だよ!!敵艦隊は予想通りまだ再編が終わってなくて、けっこう散らばってる感じかな。でも数はそれなりに居ると思うよ。だから今から奇襲をかけて各個撃破しようと思うんだ。」

 

「分かった。戦い方は川内に任せるが、危険を感じたらすぐに帰還する事だけは約束しろ。」

 

「は~い、じゃあ今から始めるけど、ちょっと本気で隠密行動するから、緊急の時以外は通信しなくても大丈夫?」

 

「分かった。ではこちらからも通信は控えておこう。では任せたぞ。」

 

「もっちろん!!夜戦なら任せてよ!!」

 

 上機嫌な川内との通信を終えて一息つく。それにしても夜の川内は本当に規格外だ。ただでさえ暗い夜の海なのに、敵の数が多いとかをどうやって判断するのだろうか?そもそも夜戦の気配を感じるとかふざけた理由で行動しているのに、実際に戦果を上げているからには何かがあるとは思うのだが・・・

 

「・・・・・・ずいぶんと川内さんの事を信頼してるのね?」

 

「まあな・・・夜戦の気配がするとかで動いてるめちゃくちゃな奴だが、実際に多大な戦果を上げている以上は上手く使うべきだからな。」

 

「それもそうよね・・・」

 

 まあ、曙の懸念も分からなくはない。曙もどちらかといえば感覚よりも論理派の人間だろう。だから川内に任せきりというのも不安を感じてしまうのだろう。

 

「おお?ぼのたん嫉妬ですかな?」

 

「うっさい。そんなんじゃないわよ。」

 

「ふーん?私も川内さんみたいにご主人様から信頼されたい、みたいなやつかと思ったんだけどなぁ?」

 

「違うって言ってるでしょ!!ふざけた事言ってないで洗い物でもしてきなさい!!」

 

「ほいさっさ~洗い物くらいは漣が一人で出来るから、おぼろんと潮ちゃんはぼのたんをよろしくねぇ~」

 

 そう言い残して漣は逃げるように執務室から去っていく。そしてからかわれた曙は不機嫌そうに執務室のドアを睨んでいる。

 

「いや、曙をよろしくって言われても・・・」

 

「怒らせるだけ怒らせて行っちゃった・・・」

 

「別に気にする事無いわよ。さっさと仕事をするわよ。」

 

「「は、はい。」」

 

――――――――――――――――――

 

 いやぁ、ここの鎮守府の夜戦はなんだか陽気で楽しいね♪川内さんは上機嫌でいっぱいお喋りしてくれるし、五十鈴さんと衣笠さんもすっごく優しい。真面目な朝潮と不知火も川内さん達に色々と質問したりしてて、とっても楽しい雰囲気ね。

 

「よぉし!!提督の許可も貰ったから、今から隠密行動で各個撃破するよ!!だからお喋りはここまで。こっからは静かにね。」

 

「「はっ!!了解しました!!」」

 

「陽炎も大丈夫?」

 

「あ、はい。大丈夫です!!」

 

「じゃあ、今からはさっき教えたハンドサインで指示を出すから見落とさないでね。」

 

 そう言うと川内さんはさっきまでの楽しそうな表情から一変して、物凄く真剣な表情になる。五十鈴さんと衣笠さんも無言で集中力を高めているし、朝潮と不知火も川内の一挙手一投足を見逃すまいと気を張っている。うん、ここからは本気でお仕事する時間だね。

 私達の様子を見て満足したのか、川内さんがついて来るように指示を出して、それに従って陣形を組んでついて行く。さっきまでの明るいピクニックのような雰囲気は消え去り、波の音と私達の艤装の音だけが聞こえる。耳をすませてみても他の音は一切聞こえない。それにしてもハンドサインで指示を出すなんて徹底してるなぁ。普通に口頭で指示しても聞こえる位置に敵はいないと思うんだけど?

 そんな事を考えていると先頭を行く川内さんからの指示があった。『敵発見、接近する』えっ?本当に?まったく見えないんだけど・・・でも川内さん自信あるみたいだし、信じてついて行くしかないわよね!!

 

――――――――――――――――――

 

「はぁ・・・また通信が入ったわよ。」

 

 川内を送り出してから少しして、曙が少し不機嫌そうに報告してくる。

 

「相手は誰だ?」

 

「綾瀬さんよ。」

 

 ほう?綾瀬さんであれば明日の会見の件で何か話があるのだろう。会場の手配を頼んでいる以上はあまり邪険には出来ないか。

 

「分かった、代わろう。代わりました、北九州鎮守府の葛原です。」

 

「綾瀬です。夜遅くのご連絡失礼致します。ですがお早めにお耳に入れておきたい事柄がありましてですね。」

 

「お伺いしますが現在作戦行動中ですので、手短にお願いします。」

 

「それは失礼しました。では単刀直入にお伝えしますが・・・市長候補の一人である源が明日の会見で何か企んでいるようでして。地域の有力者達に協力を要請しているようです。」

 

 ほう?まだ諦めていなかったか。たしか大本営に喧嘩腰で私に対する苦情を言って、適当にあしらわれて終わったと思っていた。

 

「はぁ、ずいぶんとしつこい奴ですね。」

 

「ええ、とは言っても市長選挙はまだ行われていませんから、奴としてはまだまだあがきたい所でしょう。むしろ葛原提督と決別した以上、今回の会見で葛原提督を非難して追放でもしないと、源に勝機はありませんからなぁ。」

 

 ん?そう言えばそうだったか?そう言えば副市長の源がストライキをしているから綾瀬さんが私とのやり取りを担当しているだけで、まだ正式に市長になった訳ではなかったか。

 

「そう言われればそうでしたね。てっきりもう市長選挙の件は片付いたと思っていました。」

 

「まぁ、ほとんど片付いたようなものなので、最後のあがきと言えばそれまでですが・・・もし今回の件で葛原提督が失脚でもしたら逆転も充分にあり得ますので心配なのですよ。」

 

「流石に今回の一件でクビにはならないと思いますが・・・一応気を付けておきましょう。」

 

「お手数おかけします。ついでと言ってはなんですが、源が声をかけた中に先代の大森提督の遺族の方々も居るようです。」

 

「はぁ?大森提督の遺族ですか?」

 

 今さらそんな奴らが出てくるのか?まさか春雨が大森提督を殺害した件が漏れているとは思えないから、現状大森提督は平川市長と汚職で荒稼ぎをしていて、何者かに殺されてしまった人だ。源が仲間に加えると言うのであれば、なにかしら自分を非難するつもりなのだろうが・・・

 

「ええ、大森提督の遺族です。」

 

「今さら出てきて何か影響力があるとでも?」

 

「さぁ?本人達はまだ権力があるつもりなのではないですか?」

 

「それか源が形振り構わず使えそうな奴に、片っ端から声をかけているだけですかね?」

 

「まあ、そんな所かと。ですが一応葛原提督のお耳に入れておこうかと思いまして。あと源とは別件ですが、なにやら北条工業にも動きがあるようです。」

 

「・・・北条工業ですか?」

 

 一応自分は北条とそれなりに仲が良いとは思うけれど、北条工業も一枚岩ではないだろう。北条工業の影響力は大きいから、ここは気を付けておくべき所だろう。

 

「ええ、今のところ誰かが会見に参加するとだけしか情報がありませんので・・・」

 

「そうですか。ですが今回の会見がそれなりに注目を集めている以上、北条工業が全く動かないのもおかしいとは言えますね。」

 

「そうですなぁ。葛原提督は北条工業のご令嬢と懇意にされているようですので、派手に敵対するとは思えませんが・・・これも一応葛原提督のお耳に入れておきたかったので。」

 

「情報ありがとうございます。」

 

「いえいえ、今回の一件は私の政治生命にも関わってくるお話ですから。また何か分かりましたらご連絡します。葛原提督の方からは何かありますでしょうか?」

 

 こちらばかり一方的に情報を貰うのも借りを作るようで気になるな・・・

 

「そうですね・・・ここだけのお話ですが、今回の会見の件で鶴野提督から圧力をかけられたくらいですかね?」

 

「え?失礼ですが今回の一件は鶴野提督が仕組んだ事でしょう?鶴野提督が圧力をかけてくるなんて当たり前の事ではありませんか?」

 

「ああ、少し言葉が足りませんでしたね。鶴野提督から『会見を中止するように』と圧力をかけられたのです。」

 

「本当ですか!?」

 

「ええ、つい先程の事です。鶴野提督の意図は全く分かりませんが・・・」

 

「そうですか・・・これは重要な情報をありがとうございます。」

 

「いえいえ、お互い様ですから。それでは私はこれで失礼します。」

 

「分かりました。御武運をお祈りします。」

 

 ふぅ、今回の一件はどんどん人が集まってくるな・・・まぁ、源も大森提督の遺族も北九州市の人間だから、関わってくるのは当たり前と言えばそれまでか。北条工業に関しては全国どこでも関わっていないところが無いしな。




 とりあえず会見編の仕込みはこんなものかな?あとはどうやって話を作りあげるかですが、そもそも会見編までまだまだ時間がかかりそうです。
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