「陽炎!!陽炎!!目を覚まして!!」
・・・誰かが私の体を揺さぶりながら必死に呼び掛けてくる。この声は・・・
「川内・・・さん?」
「あ!!気が付いた?」
「あ、はい・・・いたたぁ・・・」
「良かったぁ・・・」
どうやら少しだけ気を失っていたみたい。ゆっくりと起き上がろうとすると、あちこち痛む。どうやらかなり手酷くやられたみたいね。
「はっ!?敵は!?皆は無事なの!?」
「敵の旗艦は陽炎の雷撃で沈んだよ。本当にありがとね。他の皆は無事・・・とはちょっと言えないけど誰も沈んでないよ。」
「そっか、なら良かったぁ・・・」
周りを見渡すと艦隊の皆が私の近くに集まってくれてたけれど、本当に皆ボロボロだ。この様子だと全員大破かな?朝潮と不知火は後方で待機していた山風に肩を貸して貰ってようやく立っているみたいだし。
「ふふっ、不知火ボロボロじゃん♪」
「・・・陽炎も人の事言えませんよ。」
「えへへ、そうかもね♪」
不知火とそんな冗談を言って笑いあう。相変わらず不知火の表情はほとんど変わらないけど、私にはちゃんと不知火が笑ってくれてるのが分かってる。
「それにしてもびっくりしたよ。あの強敵相手に三人とも恐れずに切り込んで行くんだもん。」
「あはは・・・一撃だけなら沈まないって知ってますからね・・・あの状況で敵に余裕を与えてしまったら、既に被弾した人が狙われて沈んじゃいますから・・・仲間が沈むところは長門鎮守府でたくさん見てきましたから・・・」
「そっか・・・」
川内さんが悲しそうな顔をしちゃってる。ちょっと湿っぽい話をし過ぎちゃったかな?そんな事を考えていたら、海がうっすらと明るくなる。
「あ!?またドロップ艦かな!?」
あれだけ強い敵を倒したんだから、ドロップ艦くらいのご褒美があっても良いよね♪心安らぐ優しい光が海の底からゆっくりと海面へと上がって来て・・・
「Guten Morgen.私は重巡プリンツ・オイゲン。宜しくね♪」
「・・・・・・え?」
聞き取れなかったけど、最初の言葉はたぶん外国語だよね!?って事は外国の人!?それとも金剛さんみたいな帰国子女!?
「おあ!?皆さんボロボロじゃないですか!?大丈夫ですか!?」
「あ、うん、なんとかね・・・私はこの艦隊の旗艦を務めてる川内だよ。宜しくね。」
「はい、宜しくお願いします。」
「えっと、ぷりんつさんだっけ?どこの国の人なの?」
「ドイツ生まれの重巡洋艦でアドミラル・ヒッパー級の3番艦です!!ビスマルク姉様とライン演習作戦に参加しました!!」
ドイツの人かぁ。どうやら本当に日本以外の国の艦娘、いわゆる海外艦というやつらしい。海外艦ってほとんど発見されていないすっごく珍しい艦だったと思うんだけど・・・
「へ、へぇ~凄いんだね。とりあえず一度提督に通信入れてみるね。繋がれば良いんだけど。」
――――――――――――――――――
「提督!!川内さんと通信繋がりました!!」
春雨から嫌な予感がすると言われて、金剛達を北東にしばらく進ませていると、潮が驚いた表情で報告してきた。
「本当か!?代わろう。川内無事か!?」
「あ、提督?皆ボロボロだけどまだ誰も沈んでないよ。」
「そうか・・・今どこにいる?」
「えっと・・・集積地棲姫が居た拠点から東に進んだとこだよ。出来れば早めに救助して欲しいかな。」
「分かった。曙、金剛達をすぐに向かわせろ。朧は横須賀艦隊に情報共有しろ。」
「分かったわ。」「うん。」
曙と朧が指示に従って動き出す。川内が救援を求めるくらいだから、かなり手酷くやられたようだ。早く救助しなければ敵の追撃を受けるかもしれない。
「あ、提督、敵の頭はしっかり沈めたよ!!」
「・・・・・・今なんと言った?」
「だから私達で敵艦隊の中心になってた深海棲艦を倒したんだって!!凄いでしょ♪」
まさか戦艦棲姫を倒したと言っているのか?
「・・・・・・一応確認するが、どんな姿をしていた?」
「えっと、初めて見た奴だったけど、なんか人型で後ろに巨人みたいな艤装がある奴。最初からボロボロだったのに物凄く強くてさぁ!!そいつ一人にこっちの艦隊は全員大破に追い込まれちゃった・・・でも最後は陽炎が相討ちになりながら魚雷を叩き込んで沈めたよ!!」
この特徴は佐世保から聞いていた戦艦棲姫の特徴で間違いないだろう。最初から大破状態になっていた相手とは言え、姫級に戦いを挑んで撃破したのか・・・
「はぁ・・・ずいぶんと無茶をしたな・・・相手は戦艦棲姫、姫級だぞ?」
「姫級だったんだ!!えへへ♪だって提督が私達を信じてくれて実行した作戦でしょ?だったらなにがなんでも期待に応えたいって思うよね♪」
「・・・・・・なんの話だ?」
川内達を信じて実行した作戦?まさか戦艦棲姫も集積地棲姫の残党として認識しているのか?だから無理をしてでも討伐をしたのか?
「・・・・・・え?提督が援軍を送ってくれたんだよね?それで敵艦隊を引き付けてくれたんだよね?」
「ああ、通信障害が発生していたから、通信が繋がる範囲で挑発して敵の注意を引き付けさせていた。あと佐世保に情報を共有して討伐部隊を送って貰った。」
「だよねだよね!!それで追い込まれて逃げ出した戦艦棲姫ってやつを、戦力を温存していた私達で仕留める作戦だったんでしょ?」
「・・・・・・そんな作戦を考えた覚えはないのだが?」
「・・・・・・本当に?」
「ああ、そもそも私は危険を感じたらすぐに撤退するようにと命令したはずだが?」
「・・・・・・あっ。」
あっじゃない・・・まさか通信が繋がらない状況で、勝手に作戦を理解したつもりになって、戦艦棲姫に自ら攻撃を仕掛けたのか・・・これは後でじっくりと話をするべきだな。
「もう良い、続きは無事に帰って来てからだ。」
「はい・・・」
川内は意気消沈しているようだ。しかしどうしたものか・・・独断専行による作戦は咎めるべきなのだが、戦艦棲姫に止めを刺した功績は称賛されるべき戦果だ。
「あっ、それとドロップ艦を保護したよ。それも二人も。」
「ほう、それは朗報だな。」
「えへへ♪きっとすっごく驚くよ♪じゃあ代わるね。」
ドロップ艦を二人も保護したのか。金剛達も二人保護していたから合計4人だ。いくらなんでも多すぎないか?
「あたし・・・白露型駆逐艦・・・その八番艦山風。いいよ・・・別に・・・」
山風か。たしか改白露型だったか?確かに珍しい艦だな。秋月に鹿島に山風か・・・人数が多いだけでなく、珍しい艦娘ばかりだな。
「北九州鎮守府の葛原だ。宜しく頼む。」
「別に・・・構わないでいいよ・・・」
ふむ、かなり警戒心の強い艦娘のようだな。だが初めて小森と出会った時よりはマシか?
「そうか。だが私の鎮守府に着任した以上、仕事はきちんとして貰うつもりだ。そこで手を抜くなよ?」
「・・・分かった。」
「ではもう一人と代わってくれ。」
まあ、まずはこんなものだろう。これ以上は怖がって逃げるだけだろう。
「Guten Morgen.私は重巡プリンツ・オイゲン。宜しくね♪」
「・・・・・・は?」
「あれ?通信状況が悪いのかな?もしも~し?聞こえてますか~?」
「ああ、いや、すまない。聞こえている。」
「良かったぁ。じゃあ改めてGuten Morgen.私は重巡プリンツ・オイゲン。宜しくね♪」
どうやら自分の聞き間違いではなさそうだ。聞き覚えの無い名前だが、どう考えても日本の艦娘では無さそうだ。
「北九州鎮守府の葛原だ。その・・・どこの国の艦娘なんだ?」
「ドイツ生まれの重巡洋艦でアドミラル・ヒッパー級の3番艦です!!ビスマルク姉様とライン演習作戦に参加しました!!」
「そうか・・・ドイツか・・・」
ドイツの艦娘なんて日本で確認したのは初めてではないか?確か海外艦で確認されているのは佐世保のガングートと横須賀のタシュケントの二人だけだったはずだ。しかも二人とも地理的に近いロシアの艦娘だ。あとは駆逐艦の響が第二改装によってヴェールヌイと名前を変えるという話もあったが、それもロシアの艦娘だ。これはかなり厄介な事になるな・・・
「あれ?もしかしてアドミラルはドイツの事が苦手なんですか?」
「いや、そういうわけではない。驚き過ぎて少し頭が追い付いていないだけだ。すまない。何はともあれ北九州鎮守府への着任を歓迎する。」
「Danke!Danke!これから宜しくお願いね♪」
「ああ、宜しく頼む。」
ついにプリンツ・オイゲンの登場です!!Ifの方でフライングしてましたが、本編でようやく登場させる事が出来ました。まさか一周年記念アンケートの結果が決まってから3ヶ月もかかるとは思いませんでした・・・相変わらず話の詰め込み過ぎですね。