疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 しばらくドロドロ展開が続いたので、今回は若干緩めです。
 あと久しぶりに「厨二病提督の崩壊鎮守府再建」の方も更新しています。「疑心暗鬼提督If」もちょこちょこ更新していますので、本編と合わせて是非読んでみて下さい。


168話(むっちゃん&春雨ちゃん&悪雨ちゃん)

「ねぇ、さっきから少し気になる事があるのだけど、聞いても良いかしら?」

 

 護送車から降りて憲兵隊達と別れてからすぐに陸奥が尋ねてきた。憲兵達には聞かれたく無い話か?

 

「なんだ?オークションでの事か?」

 

「いえ、その・・・なんでずっと春雨ちゃんと手を繋いでいるの?」

 

「そ、その・・・ダメ・・・ですか?」

 

「ああ、ごめんなさい。別に責めてるわけじゃないから安心してね?ただずっとそうしてるから気になっただけなの。」

 

 陸奥の質問に春雨が暗い反応をしたため、陸奥が慌ててなだめる。確かに護送車に乗る前あたりから春雨が手を握ってきたので、好きにさせていた。

 

「今回の一件は春雨には少し荷が重かったようでな。会見で人間の悪意に晒されて、少し怖い思いをさせてしまったようだ。それで心細くて手を握ってきたようだ。」

 

 さらに言えば深海棲艦化対策でもあるだろう。人目があるからか抱き着いてくるのは我慢しているようだ。

 

「そう・・・春雨ちゃんも怖い思いをしたのね・・・」

 

「・・・・・・陸奥も怖かったのか?」

 

「そう・・・ね。やっぱり視線とかは凄く気になったわね。私だって男の人が私達をどう見ているかは、それなりに理解しているつもりよ?配送業者の人達みたいにちょっと胸とか足とかに視線がちらちら集まるのは仕方ないかなぁって思うけど・・・あの殴られた人みたいに獲物を狙うような目を隠そうともしないのは、流石にちょっと怖かったわ・・・」

 

「なるほど、視線か・・・今後はそういうところにも配慮をするべきか・・・」

 

 そういう連中に手出しをさせる気は無いが、うちの鎮守府には性的なトラウマを抱える者も多い。

 

「そうして貰えると嬉しいわ。でも提督はそういう部分ではちょっと不思議なのよね?」

 

「何がだ?」

 

「提督の視線からはそういう欲みたいな物を感じないんだもの。防衛戦の後で私達が中破してた時も特に何も無かったわ。ジロジロと見るわけでもないし、慌てて目を逸らすわけでもないし・・・なんて言うか、損傷の確認はしたけどそれだけみたいな?」

 

「・・・それが普通では無いのか?」

 

「少なくとも前の提督はジロジロ見てくるタイプだったわね・・・」

 

「そうか・・・あまり気にした事はなかったが、気になるのであれば配慮するべきか?」

 

 だが損傷の確認はきちんとしておくべきだと思うし、艦娘達が帰還してきたら報告を受けておきたい。

 

「う〜ん?どうかしら?提督はあまり意識しなくて良いかも知れないわ。普通に損傷の確認をするくらいなら文句を言う娘はほとんどいないはずよ。逆にあまりにも感情が感じられない視線だから、ちょっと不気味に感じたくらいかしら?」

 

「・・・どういう事だろうか?」

 

「えっと・・・私達をそういう目で見てないのは助かるのだけど、提督が何を考えてるのかわかりにくいって言うか・・・ほら?普通あるじゃない?作戦が無事に終わってほっとしたとか、自分の指揮で敵を倒せて嬉しいとか、逆に私達の動きが悪くて怒ってるとか・・・そういう感情があまり感じられなかったから・・・ピリピリした緊迫感だけはいつも伝わってくるけど・・・」

 

「私は指揮官としてお前達の命を預かっている。そして指揮官の動揺はお前達に悪影響を与えるだけだ。だから冷静さを保つように心掛けてはいるな。」

 

 そう伝えると陸奥が少しだけ考え込む。

 

「・・・そうね。指揮官としてはそれが正しいと私も思うわ。だからこれは私のわがままだけど、オフの時くらいはもう少しだけ心を開いて欲しいかな?提督だって人間なんだから張り詰めてばかりだと保たないわよ?何かあればお姉さんが相談にのってあげるから♪」

 

 心を開くか・・・・・・なかなか難しい話だな。

 

「そうか・・・考えておこう。」

 

「そう?それじゃあ私はここで失礼するわね。」

 

「分かった。今日はオークションの補佐を務めてくれて助かった。ゆっくりと休んでくれ。」

 

「ふふっ、ありがとう♪」

 

 陸奥は微笑んでから艦娘寮の方向に歩いていった。それにしても人間というか男の視線に恐怖を感じると言っていたな・・・トラウマを持っている艦娘も多いだろうから、そこらへんの意識調査もするべきか?だが男性である私が不用意に踏み込めば、余計にトラウマを刺激する事にならないだろうか?検討と情報収集が必要か?

 

「し、司令官、少しだけお時間良いでしょうか?」

 

 春雨が手をギュッと握りながら聞いてくる。おそらく深海棲艦化対策だろうな。先程からずっと私の手を握る事で我慢しているようだが、早いところ落ち着かせるべきだな。

 

「ああ、だがその前に大淀に連絡を入れてくれ。鎮守府に帰還した事と、少し倉庫区画に寄ってから執務室に戻ると伝えてくれ。」

 

「分かりました、はい。・・・・・・了解しましたと言っています。」

 

「では行こうか。」

 

―――――――――――――――――――――

 

 春雨を連れて倉庫の一つに入る。周囲に人の気配は無いし入口の鍵をかけたので、誰かに見つかる事も無いだろう。そう考えていると予想通りすぐに春雨が抱き着いてきた。というかもうすでに悪雨か?

 

「ずっとずっとずっと我慢してたわ・・・」

 

「・・・よく耐えたな。」

 

「あいつら何様のつもりよ!!私達が守ってあげたから死なずに済んだのよ!?それなのにあいつら私の司令官に悪意を向けて!!そんなに死にたいなら私が殺してあげるわよ!!」

 

 余程ストレスを抱え込んでいたのか、さっきまで特に変化が無かった悪雨の髪の色が真っ白に変化する。髪の色で深海棲艦化の進行度合いが分かるのは助かるが、これはかなりマズイ状態だな。

 

「おい、少し落ち着け。」

 

「でもあいつらはあなたを疑い貶め侮辱したのよ!?しかもあなたを責めてクビにしようとしていたのよ!?私は新しい司令官なんて絶対に嫌!!あなたの他に誰が私みたいな深海棲艦もどきの半端者を受け入れてくれると言うの!?私からあなたを奪おうっていうなら殺してでも阻止してやるわ!!」

 

「少し落ち着け。あの程度の事で私をクビにしたりは出来ない。今回は大本営がこちら側に付かざるを得ない状況だったからな。それに源さんと大森前提督の遺族とやらは、捕縛してしまっただろ?」

 

「捕縛だけでしょ?前任者の息子がボコボコにされてたから少し気は紛れたけれど、本当は殺してやりたかったわ・・・平川元市長の時は撃ち殺したじゃない?なんで今回もそうしなかったのよ?」

 

 そう言えば平川市長が殺された時に春雨もそこに居たのだったな。咄嗟に目隠しをして現場を見せないようにはしたが、流石にあの状況で音が聞こえれば理解出来るよな。

 

「あれはそもそも私の意志ではなく、金子さん・・・というか久藤提督の意志でやった事だ。それにあんなに人が集まる場所で殺したら大問題だ。まして悪雨に手を汚させたらその時点で日本中を敵に回す事になる。深海棲艦だけでなくあの横須賀の艦隊も敵になるぞ?」

 

「それは・・・分かってるけど・・・」

 

 横須賀鎮守府を敵に回すという恐怖で、流石に少し落ち着いたか・・・味方としては頼もしい反面、敵に回せば理不尽な戦力差がある。もし仮に悪雨が深海棲艦としての能力を開放したとしても、相手は姫級を数多く屠ってきた奴らだ。まず間違いなく殺される。

 

「ついでに言えば捕縛された奴らだが、あいつらは久藤提督の傘下でありながら久藤提督の命令を無視して動いたらしい。久藤提督の性格ならば当然けじめをつけさせるだろう。消される可能性も充分あるし、もし仮に生かされても真っ当な人生は送れないだろう。それで納得してくれ。」

 

「・・・・・・そうねぇ。ちゃんと頭を撫でてくれるならそれで納得してあげるわ・・・」

 

 今の話となんの関係があるかは理解出来ないが、それで落ち着くと言うなら仕方ないか・・・

 

「・・・これで良いか?」

 

「悪くはないわ。」

 

 だんだんと髪の色が元のピンクに戻っているから、悪雨の怒りも鎮まって来ているのだろう。しかしこうもストレスを溜め込み易いとなると、今後の悪雨の運用について考えなおす必要があるか・・・対人間の切り札として護衛をして貰っていたが、この調子だといつ爆発してもおかしくない・・・

 

「悪雨・・・人間は憎いか?」

 

「・・・少なくとも私は人間そのものを憎んでる訳じゃないわ。あなたや私に悪意を向けて来る奴に、それ相応の悪意を向けてるだけよ・・・」

 

「そうか・・・しかし一々悪意に反応していたら、この先苦労する事になる。ある程度の嫌味程度なら受け流せるようになって欲しい。」

 

「・・・・・・努力はするわ。」

 

 とりあえず今はここまでか。あまり追い詰めても逆効果になる。今後の様子次第でこのまま護衛の仕事を任せるかは考えよう。

 

「あ、あの・・・ありがとう・・・ございました。」

 

 髪の色も綺麗なピンク色に戻って、雰囲気もかなり落ち着いたようだ。とりあえず悪雨の怒りは静まったようだな。

 

「もう大丈夫か?」

 

「大丈夫です、はい。あの・・・悪雨ちゃんには私からもちゃんとお話しますので・・・」

 

「そうか。頼むぞ。」

 

「は、はい!!」

 

 最後に軽く頭を一撫ですると春雨は抱き着くのを止めて離れた。ふむ、顔色もかなり良くなっているな。

 

「あ、司令官、どうやらお客様が正門に来られているようです。」

 

「ほう、誰が来ている?」

 

「えっと・・・海原朔真さんです。」

 

「朔真か・・・」

 

 あいつ何をしに来たんだ?話があるならオークション会場で話をしに来れば良いだろう?わざわざ私が鎮守府に戻ってから来ると言う事は、余程秘密にしたい話があるのだろうか?

 

「では応接室に案内するように大淀に伝えろ。私もすぐに向かう。」

 

「分かりました、はい。」




 一先ず悪雨ちゃん爆発の危機は去った。
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