疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 今回は海原弟こと海原朔真とのやり取りがメインになります。つまり艦娘成分少なめです。


169話(海原朔真提督候補生)

 応接室の前に到着すると扉の前で曙が待機していた。

 

「朔真はもう来ているのか?」

 

「ええ、今中で大淀さんが応対してるわ。」

 

「そうか、私が留守の間に何か変わった事は?」

 

「横須賀の艦隊が周辺海域の調査をした結果、小規模な拠点をいくつか潰したけど、大きな拠点は無かったとの事よ。あと長門鎮守府に向かった木曽さん達だけど。長門鎮守府はかなり手酷くやられたみたいね。今は私達が輸送した資材を使って、最低限活動するのに必要な施設の復旧作業中よ。あと木曽さん達が周辺海域の哨戒をしたけれど、敵影無しだったわ。」

 

 なるほど。横須賀が問題無いと判断したならば、一先ずは大丈夫なのだろう。長門鎮守府の復興にある程度時間がかかるのは仕方ない。そこは定期的にフォローするしかないな。

 

「分かった。では曙は執務室に戻っていてくれ。朔真は私と大淀で対応する。」

 

「分かったわ。それにしても下の名前で呼ぶなんて、かなり親しい間柄なの?」

 

「そういう訳ではない。あいつがいずれ提督になった時に海原だと兄と被ってしまうから、下の名前で呼んでくれと言っていた。ただそれだけだ。」

 

「ふーん、そう。じゃあ私は執務室に戻ってるわ。何かあったら大淀さん経由で連絡するわ。」

 

「ああ、任せた。」

 

 さて、では自分は朔真の相手をするか・・・今回はいったい何を企んでいるのやら?

 

―――――――――――――――――――――

 

 応接室に入ると既に朔真が座っていて、大淀がお茶を出していたようだ。朔真は自分が応接室に入ると、まるで旧友に久し振りに会えたかのような良い笑顔を向けてくる。相変わらず胡散臭い奴だ。

 

「待たせたな。それで何をしにここに来た?」

 

「はぁ・・・君は相変わらずだね。君が大変な目にあっていると聞いて心配になったから様子を見に来たというのに・・・会見の時に巻き込まれた文句も含めて話をしようとしたのに、オークション後すぐに鎮守府へ帰ったと聞いて慌てて追い掛けて来たのさ。」

 

「そうか、それで?何を企んで今回の一件に絡んで来たんだ?」

 

「おいおい、企むだなんて人聞きが悪い事を言わないでくれよ・・・学友の窮地に駆けつけようというのがそんなにおかしな事かい?」

 

 朔真は一見兄である海原提督のような誰にでも優しい性格に見える。心優しく偉大な兄に憧れてその背中を追う弟。世界平和を願う兄の力になりたくて努力する弟。そして兄同様に人当たりの良い人格者。これが海原朔真という男の周囲からの評価だ。だからこそ自分の感覚が胡散臭い奴だと警鐘を鳴らしている。

 

「なら会見の時に記者達を黙らせる為に役に立ってくれて助かった。礼を言う。ではこれで学友を助けるという目的も達成したな?そろそろ帰ったらどうだ?」

 

「やれやれ・・・どうして君は僕をそんなに毛嫌いするんだい?僕としては君とは上手くやっていきたいと思っているんだけど?」

 

「そうだな・・・何を考えているか読めない有能な奴がニコニコしながら近づいて来る。これを警戒するなと言われてもな。」

 

「ははは、君に有能だと認められるのは悪く無い気分だけど、まさかそこまで評価が高かったとは思わなかったよ。結局艦隊指揮では君にも小森さんにも勝てなかったのにね・・・」

 

「だがお前は負ける度にその敗北を糧に成長して、私にいつも喰らいついてきた。油断出来ない相手だ。最初はただ兄の偉業に縋る勘違い野郎だったのにだ。」

 

「ははっ・・・本当に君は手厳しい事を言うね。でもそうだね。士官学校に入ったばかりの僕はそう言われても仕方なかった・・・だから僕の目を覚まさせてくれた君にはこれでも感謝しているんだよ?」

 

 確かにあの頃の朔真は自分は他の提督候補生とは別格だと考えていたようだ。まあ、偉大な兄のやり方を見せて貰っていたのだから、他の奴らより格段に艦娘の運用について知っていた。慢心するのも無理は無い。初めて会った時も表情は穏やかな笑顔だったのに、なんとなくこちらを下に見ている雰囲気が伝わってきたのを覚えている。

 

「そうか・・・だが私は気に食わない奴を演習で叩きのめしただけだ。他の奴らと同様にな。」

 

「そういうとは思ってはいたよ。君は本当に喧嘩っ早いからなぁ・・・」

 

「そういう性分だ。だが噛み付く相手くらいは考えている。」

 

「鶴野提督に噛み付く奴が言っても説得力がないよ。」

 

「そうか。それで?もう一度だけ聞くが・・・何をしにここに来た?」

 

 話を全然進めようとしないので少しだけ圧を込めて言うが、朔真はやれやれといった雰囲気で受け流す。まったく関係無い大淀を怖がらせてしまっただけか・・・

 

「そんなに警戒しないでくれよ。最初から言っているように様子を見に来ただけさ。これでも僕は君に対しては真摯に向き合っているつもりなんだけど、なかなかどうして信用して貰えないのだろうね・・・」

 

「ならばもう少し情報を開示してみたらどうだ?お前の目的がなんなのか?とかな。」

 

「それも随分前から言っているだろう?僕の目的は兄さんの理想を叶える手伝いをする事だ。人類と艦娘が手を取り合って幸せに暮らせる世界を勝ち取る事。それが僕と兄さんの変わらない目的さ。」

 

「だがお前は綺麗事で世界が変わらない事を知っているはずだ。」

 

「・・・・・・難しい事は分かっているさ。」

 

 そこで言葉に詰まるところが朔真と海原提督の違いだろう。海原提督ならば綺麗事と言われようが、いつかその夢が叶うと信じているように思う。それに対して朔真はもう少し現実を見ている。だからこそ綺麗事を吐き続けるこいつが胡散臭いのだ。兄を狂信的に信じている奴なら、その程度の男だと切り捨てれば良い。悪意を持ってこちらを騙そうとする奴ならば、こちらとしても対処が簡単だ。建前として綺麗事を並べておいて現実的な話をするならばそれも悪くない。だがこいつは何がしたいのかよく分からない。かと言って無能がフラフラと目的なく動いているのとはまた違う。本当に厄介な相手だ。

 

「難しいではなく無理だ。深海棲艦という明確な脅威があってもなお人間同士で争うような奴らだぞ?そんな奴らが話し合いなんかでまとまるわけがない。もし一つにまとめる方法があるとすれば、圧倒的な武力を背景とした恐怖による政治くらいだろうな。」

 

「それは兄さんの理想からはかなり外れているね。この話を続けても無駄に長くなるだけだから、そろそろ本題に入らせて貰えるかな?」

 

「良いだろう。なにが聞きたい?」

 

「今の君の立ち位置とこれからなにがしたいかだね。」

 

「北九州鎮守府の提督でこの鎮守府を強くしたい。以上だ。」

 

「ふぅ・・・そういう事を聞いているんじゃ無い事くらい君なら分かるだろう?」

 

「分からないな。何が聞きたいかはっきりと言ってみたらどうだ?」

 

「ならそうだね、4大鎮守府との関わり方とかはどうだろう?」

 

 ふむ、ようやくこいつも少し踏み込んで来たか。だが質問としては軽いものだな。

 

「そうだな・・・横須賀鎮守府はその戦闘能力の高さを見させて貰った。超えるべき高みではあるが、海原提督の性格を考えれば敵対する事は無いだろう。傘下の奴らとは気が合いそうに無いがな。佐世保鎮守府とは距離も近く軍人気質な人間の集まりだ。馴れ合う事は無いが軍事的な協力はするだろう。呉鎮守府と舞鶴鎮守府からは嫌われているから、向こうの出方次第だな。」

 

「そうなのかい?横須賀・佐世保・舞鶴は良いとして、呉鎮守府とはそれなりに繋がりがあるんだろう?君の最近の動向を調べたらなんとなく察するさ。」

 

 なんとなくねぇ?その目は確証を持っている人間の目だ。きちんと情報を集めて来ているらしい。どこまで知っているかは疑問だが・・・

 

「利害関係で少し取引をしただけだ。馴れ合うつもりは無い。」

 

「ははっ、君らしいね。でもこの街の有力者はほとんどが久藤提督の派閥の人間だろう?そこはどう考えているんだい?」

 

「私は軍人であって政治家ではない。鎮守府の運営に支障がなければ関わるつもりは無い。」

 

「とはいえ資金の重要性を知らない君では無いだろ?」

 

「だからと言って金儲けの為に時間を取られて、鎮守府の運営が疎かになれば本末転倒だ。そもそも鎮守府をまともに運営するだけならば、通常の運営資金と深海棲艦の討伐褒賞だけで充分だ。」

 

「なるほど。じゃあどうしてさっき有力者や記者達を騙して金を巻き上げたんだい?」

 

 やはりさっきオークションでの一件も理解していたようだな。しかも汚職の証拠があるかもしれないと言っておきながら、実際には徹底的に調べた後だという事も理解しているようだ。まあ、これくらいは朔真なら理解して当然か。

 

「騙すとは人聞きが悪い。可能性を示唆しただけだ。それにどうせ大森提督の遺品の処分は、やらなくてはならない仕事だ。ならば高く売れる方法を試しただけだ。」

 

「ふふっ、そうかい。じゃあ最後に今後の方針とか聞いても良いかな?」

 

「私はこの鎮守府を強くする。そのためには演習と実戦を積み重ねるしかないだろう。」

 

「じゃあ佐世保の傘下から演習を挑まれているらしいけれど、それも受ける気かい?」

 

 ほう、そんな情報も仕入れているのか・・・こいつはどこから情報を入手しているのだ?士官学校では派閥を問わずに仲良くしているから、そこから流れてくる情報なのか?

 

「条件次第だ。」

 

「そうかい。とりあえず聞きたい事も聞けたし、僕はそろそろ帰るとしようかな。」

 

「そうか。こちらから情報を得るだけ得てから、何もせずに帰るか。」

 

「その言い方は卑怯だね・・・なら少しだけ。今回の一件で大本営側は手痛いダメージを負ったみたいだ。本当は鶴野提督と久藤提督を巻き込んで、双方の力を削ろうとしたみたいだけど、二人に感づかれて警戒された形だね。今後どうなるかは分からないけれど、大本営側は今よりももっと動きにくくなるだろうね。」

 

 なるほど・・・鶴野提督が今回の件に否定的だったのはそれが原因か。それに久藤提督も今回の件に関してはやけに慎重で、傘下の者達が問題を起こさないように手綱を握っていたし、命令に背いた奴らを手早く処分していた。大本営の思惑を警戒した結果だったか。

 

「なるほど。悪くない情報だ。」

 

「それは良かった。じゃあ僕はそろそろ行くよ。君の今後の活躍に期待してるよ。」

 

「ああ。大淀、正門まで送ってくれ。」

 

「分かりました。ではこちらに。」

 

 朔真が大淀に連れられて退室したことでようやく一息つける。あいつの相手をするのも疲れるな・・・




 書きながら腐女子が歓喜しそうな関係だなぁと考えてしまった・・・ちくしょう・・・
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