艦娘新教の神林さんもきちんと脅しておいたし、かなり怯えた様子だった。これであまり関わる事なく横須賀の艦娘達の軍艦防波堤訪問が終わりそうだな。
「曙、叢雲に艦娘新教側の許可を取れた。明日の朝に球磨に案内させると伝えてくれ。」
「分かったわ。・・・・・・対応に感謝するわって言ってるわ。」
「分かった。」
秋月型姉妹はともかく叢雲は人間に対する警戒心が強い奴だ。神林さんが擦り寄って来ても上手く躱すか突っぱねてくれるだろう。案内役に球磨が居れば神林さんも下手に動こうとはしないだろうしな。あとは出発前にもう一度球磨に言い聞かせる必要があるか?
「提督、川内さんから通信です。」
考え事をしていたら大淀から声をかけられた。声の感じが切羽詰まった雰囲気ではないので、接敵したわけでは無さそうだな。
「代わろう。・・・川内か?状況は?」
「今長門鎮守府の近海についたよ。敵の気配はかなり離れたところに数隻いるかもしれない感じかな?たぶんはぐれじゃないかな?」
「近づいて来そうか?」
「どうだろ?今の所近づいてくる感じじゃないかも?」
ふむ、川内の感覚ならばかなりの信憑性があるが、もし川内達をそちらに向かわせている間に別の個体が長門鎮守府を狙うとまずいか・・・
「分かった。向かって来ないのであれば今は手を出す必要はない。その場で警戒していてくれ。」
「はーい。夜戦したかったなぁ・・・」
「姉さん?」
「ちょ!?待って神通!!命令違反とかしないから怖い顔しないで!?」
「はぁ・・・しっかり警戒を頼むぞ?」
「う、うん!!何かあったらまた連絡するから!!」
そう言って慌てたように川内は通信を終えた。流石にこれだけ言い含めれば無茶はしないよな?神通も川内のストッパーとして手綱を握ろうと頑張っているようだしな。さて、戦闘はしばらく無いとは思うが、川内達の動きが気になるのでもう少し様子を見ておきたい。となると少し時間に余裕が出来るか・・・ならまだあまり話をしたことが無い艦娘と面談をしておくか。帰還組と新規組は一先ず置いておくとして、元から居た者で面談をしていないとなると・・・吹雪・睦月・如月・島風・雪風・川内・夕張・青葉ってところか?大淀・明石・間宮ともしてないか。島風・雪風・川内は夜戦に出しているし、大淀・明石・夕張・間宮は仕事でそれなりに話をしている。青葉はよく絡んでくるから放っておいて良いだろう。
「曙、少し時間に余裕があるから面談をしたい。吹雪と睦月と如月を呼び出してくれるか?」
「それは良いけれど面談はここでするの?それなら私達は出ておくけれど?」
「いや、応接室のほうでやろう。何かあったらすぐに呼んでくれ。」
「分かったわ。・・・・・・すぐに応接室に向かうそうよ。」
「ああ。」
さて、あまり話した事の無い者達だが、どんな話が出てくるやら・・・
―――――――――――――――――――――
コンコンコン
「し、司令官お待たせ致しました!!ふふ吹雪以下三名お呼びにより参りました!!」
「入れ。」
「し、失礼致します!!」
ドア越しの声音からも吹雪の緊張が伝わってきたが、応接室に入った吹雪は緊張のせいか動きがぎこちない。応接室の扉を開けて中に入るとその場で立ち止まって敬礼をした為に後続の睦月とぶつかってよろけるし、その後も右手と右足を同時に前に出してギクシャクと歩き始める。睦月は睦月で吹雪につられて緊張しているのか、ビクビクしながら視線をせわしなく彷徨わせている。逆に如月はそんな二人の様子を見て微笑むくらいの余裕があるようだ。
「と、特型駆逐艦の1番艦吹雪です!!本日は宜しくお願い致します!!」
「む、睦月です!!よよよ宜しくお願いします!!」
「睦月型駆逐艦2番艦如月と申します。おそばに置いて下さいね。」
「この鎮守府に着任した葛原だ。まずは座ると良い。」
「「し、失礼します!!」」
「ありがとうございます。」
なぜ吹雪と睦月がここまで緊張しているか分からないが、こんな様子だとまともに話が聞けないな。
「はぁ・・・そう緊張するな。この場は別にお前達を責める場では無い。」
「は、はい!!大丈夫です!!」
「む、睦月も大丈夫です!!」
「如月は本当に大丈夫ですよ。ふふっ♪」
「なぁ如月、何故この二人がここまで緊張しているのか知っているか?」
「そうねぇ?別に大した話じゃないんだけど?」
「「如月ちゃん!?」」
「ふふっ♪二人とも提督のいろんな噂を聞いたり、実際に提督が話してるところを見たりして、提督の事とか今後の自分達の事とか色々考えてたのよ。三人でそんな話をしていたら急に呼び出されたからビックリしちゃっただけよ♪」
「つまり呼んだタイミングが悪かったのか?」
「二人が考え過ぎなだけだから、司令官が気にする事じゃないと思うわ。夜も遅いし二人とも色々考えちゃうわよねぇ♪」
「「如月ちゃん!!」」
ふむ、今まで面談をするときは時間が空いた時に艦娘達を呼び出していたが、あまり良くない事だったのか?かと言って忙しい執務の合間を縫って面談をしているから、予定を立てて計画的に進める余裕は・・・これは今後の課題だな。
「そうか・・・二人共急に呼び出して悪かったな。」
「い、いえ!!こちらこそすみません!!」
「如月ちゃんがからかってるだけですから!!大丈夫です!!睦月は大丈夫です!!」
「では深呼吸をして少し落ち着け。これではまともに話も聞けん。」
「「す、すみません・・・」」
しばらく二人してスーハースーハー深呼吸をしているのを待っていると、ようやく少し落ち着いたようだ。これでは先が思いやられるな。
「さて、それでは面談を始めるが、三人とも比較的最近に建造されたとデータにあるが間違いないか?」
「はい。私と睦月ちゃんが一ヶ月くらい前で、如月ちゃんは2週間くらい前に建造されたばかりだったと思います。」
「ふむ、では前任者からはどんな扱いを受けていた?」
「その・・・吹雪型や睦月型は駆逐艦の中でも特に消耗が激しくて・・・姉妹艦が沈む事も日常茶飯事だったそうです・・・私が着任した時にはいた白雪ちゃんや深雪ちゃん達がそう言ってました・・・だから私も使い潰されて沈むものだと考えていました・・・」
「睦月達も似たような感じです。そんな環境だったから如月ちゃんが建造された時も素直に喜べなくて・・・」
「如月も建造された初日から酷い目にあったわ・・・その時は金剛さんの盾として使われて、大破して帰って来たのに入渠させてくれなかったわ・・・大破したならあと一回使って終わりだなと言われた時は、もう本当にどうしようかと・・・」
戦艦や空母の盾にするところまでは、まだ戦術の一環として理解は出来る。しかしなぜ入渠させない?大破した駆逐艦を入渠させるコストは最低値で建造するより少ないはずだ。資材がもったいないという理由では説明が出来ない。
「はぁ・・・前任者は何がしたかったんだ?」
「そんなこと如月に聞かれても分からないわ。とりあえず睦月型はハズレみたいな事を言ってたくらいかしら?だから睦月型は次々と沈んでたらしいわ。むしろそんな環境で1ヶ月も生き延びた睦月ちゃんが凄いのよ。」
「そ、そんな・・・睦月は川内さんのおかげで生き延びただけだよ・・・」
「ん?なぜそこで川内が出てくる?」
「傷ついて足手まといの睦月を川内さんは夜戦に連れて行ってくれたんです。夜戦さえ生き延びたら入渠と補給が出来たので・・・だから川内さんに救われた駆逐艦は多いんですよ?」
「なるほど。」
そう言えば以前川内は前任者から夜戦を丸投げされていたと聞いたな。その時に報告もなく入渠と補給をしていいと言っていたな。だから前任者が見捨てた駆逐艦を助ける為に、夜戦に連れ出していたのか。
「私も川内さんに助けられた事があります。怪我した娘は後ろで待たされて戦闘には参加しないので、本当に行って帰って入渠するだけでした。」
「そうなの?私の時は前の司令官が死んで、どこかから来た偉い人に入渠しろって命令されるまで放置だったわよ?あの時は睦月ちゃんもずっと中破したまま放置されてたでしょ?」
「あの時はタイミング悪く夜戦がなかったからじゃないかな?前の司令官が亡くなる直前くらいに、お昼も夜も襲撃が無い日が続いてたはずだし・・・」
「あの時は襲撃は無かったけど遠征先で大変な事になってたよね・・・睦月達は怪我してたおかげで遠征のメンバーには選ばれなかったよね。」
「そう言われたらそうかもだけど・・・ずっと大破したままなのは辛かったし悲しかったわ・・・」
どうやら川内が上手く駆逐艦達を助けていたようだ。しかし川内が動けたのは夜戦があるときだけか。あくまでも川内に許可されたのは、夜戦を自由にする権限とその事後処理までだったと言うことか。
「一つ気になったのだが、前任者が使い潰すと決めた駆逐艦を入渠させて怒られなかったのか?今までの話を聞くと資材の無駄使いとか言い出しそうだが?」
「えっと・・・そもそも私達に興味を持っていなかったのではないでしょうか?駆逐艦が沈むのは日常茶飯事でしたから、一々誰が損傷したとか覚えていなかったのだと思います・・・」
「接待で使われる娘達はともかく、使い捨ての娘はそんな扱いだったね・・・」
「なるほど・・・過去の話はだいたい理解した。では今後の話をしよう。私としてはきちんと駆逐艦として働いて貰いたいと考えているがどうだろう?」
「は、はい!!吹雪!!頑張ります!!」
「でも吹雪ちゃんはともかく、睦月達は基本スペックが低いですよ?そんな睦月達でも良いんですか?」
「その代わり睦月型は燃費に優れているだろう?遠征での資材回収や輸送任務でこそ活躍出来る。なにも前線で戦うだけが軍の仕事ではない。」
むしろ今後は金で資材を買い漁るなんて真似が出来なくなるのだから、遠征による資材の回収はより重要性が高くなる。それを考えるともう何人か睦月型が欲しいところだ。
「ふふっ♪やっぱり今の司令官はちゃーんと如月達の良いところを分かってくれてるわね♪そんなあなたにだったらいつでも尽くしてあ・げ・る♪」
「「き、如月ちゃん!?」」
「ああ、期待している。睦月はどうだ?」
「にゃ!?あ、えと・・・えと・・・その・・・」
睦月が顔を真っ赤にして、また視線をあちこちに向けて挙動不審になっている。そんなに言い難い事があるのだろうか?
「どうした?何か待遇に不満があるなら今のうちに言っておいたほうが良いぞ?」
「い、いえいえ!?不満なんてなにも無いです!!睦月も頑張るから、よ、宜しくお願いします!!」
「そうか?まあ何かあれば相談してくれ。私に言い難い事であれば大淀や長門を頼ると良い。」
「は、はい!!」
「では私からは以上だ。何か聞きたい事や言っておきたい事はあるか?」
「い、いえ!!大丈夫です!!」
「睦月も大丈夫です!!」
睦月だけではなく吹雪までまた最初みたいに緊張している雰囲気だが、本当に大丈夫なのだろうか?まあ、そのうち慣れてくるか?
「そうねぇ?睦月ちゃんや吹雪ちゃん共々、ずーっとお側において下さいねぇ♪司令官が呼んでくれたらいつでも頑張るから♪」
「ああ、頼りにしている。」
如月だけは気持ちに余裕がありそうだな。吹雪と睦月はどうにも緊張しやすいようなので、それとなくフォローしてくれると艦隊として運用しやすいのだが・・・今後に期待だな。
もしかして如月ちゃんってえっちなのでは?作者は訝しんだ。