せっかく軍艦防波堤を訪れてみたのに、軍艦防波堤のお話までもう少しかかりそうです。気長にお待ち頂けると幸いです。
吹雪達との面談を終えて一旦執務室へと戻る。もう夜も遅いし曙は休ませて大淀と交代で仮眠を取るべきか?
「提督、戻られましたか。川内さんから通信が入っています。」
「分かった。・・・・・・川内か?何があった?」
「あ、提督、ちょっと深海棲艦が動き始めたみたいだから、どうするか指示が欲しくて。」
「こっちに向かって来てるのか?」
「うーん?ちょっと微妙な感じかな?近づいては来てるけど、真っ直ぐこっちに向かってはいないから、別の場所を目指してる感じかな?方角的には西だね。」
西と言う事は戦艦棲姫とやりあった場所に向かっている感じか?もしくはどこかの資材溜まりでも目指しているのだろうか?
「敵の規模とかは分かるか?」
「あんまり多くは無いと思うよ。多くても4隻かな?それもそんなに強そうな気配は感じないよ。」
「他に敵の気配は?」
「今の所は感じないよ。」
ならば早目に潰しておくか。敵の意図は不明だが艦隊の規模が小さいうちに叩く方が楽だ。念の為に長門鎮守府の守りに二人残したとしても数的不利にはならず、相手が手練れでないならば川内が上手くやれるだろう。
「ならば隊を分けてもやれるか?長門鎮守府近海の警備に高雄と五十鈴を残して、速やかに敵艦隊を始末したいのだが?」
「やったぁ!!任せてよ!!」
「では川内・神通・島風・雪風は敵艦隊の討伐を速やかに遂行し、すぐに長門鎮守府の警戒に戻れ。高雄と五十鈴はその場で警戒を続けてくれ。」
「了解!!夜戦だ!!夜戦だぁ!!」
相変わらず川内の夜戦に対する情熱は凄いな・・・まあ、結果を出している以上は問題無いのだが。
「大淀、川内と高雄との通信は任せても大丈夫か?そろそろ仮眠を取っておきたいのだが?」
「はい、お任せ下さい。川内さんが接敵したら起こせば良いですか?」
「ああ、もしくは何か異変があれば起こしてくれ。曙は今日はもう休め。」
「ちょ!?私はまだやれるわよ!!」
「良いから休め。明日も朝からやる事が多い。休める時にきちんと休んでおけ。これは命令だ。」
「分かったわよ・・・」
曙は少しだけ落ち込んだようにトボトボと執務室から出て行った。それに対して深夜の仕事を任された大淀はなんだか嬉しそうな雰囲気を感じる。仕事熱心なのは良い事だが、キツイ仕事を任せた方が喜ぶと言うのも変な話に感じる。まあとりあえず私室から布団を持って来て仮眠を取るか。しかしこうも執務室で寝る事が多いのならば、執務室に布団を常備していた方が便利かもな。
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「じゃあ高雄と五十鈴は警戒宜しくね!!」
「はい、川内さん達も頑張ってね。」
「ふん!!分かったからさっさと行きなさい!!」
「うん♪よぉし!!じゃあ皆行くよ!!待ちに待った夜戦だぁ!!」
川内の奴は大喜びで行ってしまったわね・・・なんでせっかく出撃したのに五十鈴がお留守番しなきゃならないのよ・・・
「行ってしまいましたね。」
「・・・そうね。」
「・・・少しご不満ですか?」
「ちょっとだけよ・・・提督が長門鎮守府の警備を重要視してるのは分かってるわ。」
「それでもやっぱり戦いたかったですか?」
なによ・・・ずいぶんしつこいわね・・・
「当然よ。高雄さんは不満じゃないの?」
「ええ、長門鎮守府の防衛も重要なお仕事ですから。」
「そう。」
真面目な優等生みたいな回答ね。でも艦娘ならもっと活躍したいって思うのが当然でしょ?そういう意味では優等生的な発言をする高雄さんよりは、夜戦で大喜びしてる川内の方がよっぽど好感が持てるわね。それにしても・・・
「さっきからなんなのよ?そんな微笑ましいものでも見る目を辞めてくれない?」
「ごめんなさいね。ちょっと五十鈴さんが摩耶みたいに見えてしまってつい。」
「ふぅん?そんなに似てるかしら?」
「戦闘で活躍したいっていう気持ちが強いところが本当にそっくりよ?」
「そんなの艦娘なら当然の事じゃない?高雄さんは違うっていうの?」
「もちろん私だって活躍したいですよ。前の提督と違って今の提督はとても良い人みたいですから。」
「・・・・・・まぁあいつも悪くはないわね。まだ数日しか関わってないから、信用するにはまだ早いとは思うけど。」
確かに五十鈴の実力をちゃんと評価してくれてるのは悪くないわね。作戦指揮も問題なくやってるし、資材や資金の管理もきっちりしてるって聞いたわね。あとは今のところ艦娘に無理矢理迫ったとかの話も聞かないけれど・・・そこはいつ本性を表すか分からないわ。男なんて所詮は獣だもの・・・だからせめて提督としては優秀であって欲しいわね。
「そうですねぇ・・・摩耶も提督の能力は認めてるみたいですけど、提督の人間性に関しては色々と不満や不信感があるみたいなのよ。それでも艦娘としての誇りを取り戻す為に、前線で戦いたいって言ってるのよ。しかもかなり焦っているみたいで、功績を得る為に無茶をしかねなくて・・・困ったものです・・・」
「ふーん?確かに似てるかもしれないわね。私だって艦娘としての誇りを取り戻したいっていうのは同じよ。だから五十鈴は五十鈴の為に戦うの。決してあの提督の為でも腐った街の連中の為でもないわ。」
「ふふっ♪本当に摩耶とそっくりですね♪」
「そう。じゃあ高雄さんはなんの為に戦うのかしら?」
「なんの為に戦う・・・ですか?」
「そうよ。高雄さんは提督の指示に従う事に不満は無さそうだけど、それはなんで?」
軽い質問を返したつもりだったけど、高雄さんは深刻そうな顔で悩み始めた。そんなに難しい質問だったかしら?
「言われてみれば戦う理由をしっかりと考えた事はなかったかもしれませんね。艦娘として生まれたからには深海棲艦と戦う事が当たり前だと思っていましたので。ですから提督の指示で作戦を遂行する現状には満足しているつもりです。直接戦闘ではなくても海域の警備も立派なお仕事ですから。」
「それは五十鈴だって分かってるわよ・・・」
「あとは摩耶が早く鎮守府に馴染めるように、私がしっかりしないとってくらいでしょうか?特に摩耶は提督という存在そのものに拒否感があるみたいですし、私が提督と摩耶の橋渡しが出来ればと思っています。だからその為にもまずはきちんと仕事をこなして、提督からの信頼を得なければいけませんね。」
暗い暗い夜の海なのに、月明かりに照らされた高雄さんの横顔が眩しく見える。本当にこの人は・・・
「高雄さんは強いわね・・・」
「強い・・・ですか?」
「高雄さんだって五十鈴や摩耶さんと同様に売られていたんでしょ?散々酷い目にあわされたのに、どうしてそんなに強く生きられるのよ?」
「私は五十鈴さんが思っているより強くないですよ。五十鈴さんや摩耶が艦娘としての誇りを頼りにして生きているように、私も長女としてしっかりしなくてはという思いを支えにしているだけですから・・・もし摩耶が生きていなかったら私もどうなっていたか・・・」
「そう・・・・・・」
姉としてか・・・名取や由良が居たら五十鈴ももっと強くいられたのかしら・・・ううん、何を弱気になってるのよ!!五十鈴は五十鈴よ!!どんな環境だって関係ないわ!!
「私が戦う理由はこんなところです。もちろん艦娘として国を守らなければという意識はありますが、やはり身内の事が一番ですね。失望させてしまいましたか?」
「そんな事ないわ。むしろ綺麗事を言われるよりは好感を持てるわ。」
「それなら良かったです。お話に付き合ってくれてありがとうございました。そろそろ警戒のお仕事に戻りましょうか?」
「そうね。川内の感覚は信用してるけど、それでも絶対ではないものね。」
「はい、川内さん達が戻るまで私達二人で頑張りましょう。」
「ええ。」
戦う理由かぁ・・・五十鈴ももう一度ゆっくり考えてみたほうが良いかしら?艦娘として長く戦いたいのならなおさらね・・・
遅筆の原因の一つに新しく始めたウマ娘の存在があるとか・・・