「提督、そろそろ起きて頂けますか?」
執務室で少し仮眠をとっていたが、大淀に声をかけられて目を覚ます。
「・・・・・・ああ、状況は?」
「川内さんから通信があって敵艦隊の捕捉に成功、敵の構成は軽巡ホ級1駆逐イ級2だそうです。川内さんが交戦許可を求めています。」
ふむ、想定以上に脆弱な艦隊なので、はぐれかなにかだろう。川内達であれば問題なく始末出来るはずだ。
「許可する。手早く済ませろ。」
「分かりました。」
大淀に指示を出すと数分後に戦闘が開始され、想定通りにすぐ決着がついた。川内の索敵能力で一方的に敵艦隊の位置を把握し、有利な位置取りをしてから探照灯で照らして奇襲するのだ。脆弱な艦隊では為す術もない。
「提督、川内さんから通信です。」
「ああ・・・川内、終わったか?」
「うん、終わったよ♪こっちは無傷の完全勝利だよ♪あとドロップ艦の気配は無さそうだし、近くに敵はいなさそうだよ。」
「良くやってくれた。それではすぐに長門鎮守府近海に戻って警戒を続けてくれ。」
「はーい。」
あのはぐれの目的はよく分からなかったが、とりあえず川内が近くに敵を感じないのであれば、とりあえずは安心だろう。だが念の為に通信状況は常に把握しておきたい。一応深海棲艦の上位種が通信の傍受を行うらしいが、近海の防衛を固めるだけであれば多少傍受されたとしてもそこまで問題ではない。なぜなら遠洋と違って増援の派遣や撤退が容易であるからだ。だから後手に回ったとしても打つ手はある。
「では大淀、私は先に休ませて貰う。悪いが川内達との通信を維持してくれ。」
「はい!!お任せ下さい!!」
「それと明日は朝一番に哨戒部隊を出して川内達と交代させる。メンバーは龍驤・天龍・暁型姉妹でいこう。」
「ではそのように通達しておきます。それと間宮さんに連絡して、哨戒部隊の娘達が早目に朝食を食べられるように手配しておきましょう。」
「ああ、頼んだ。」
さて、明日もまた面倒事があるのだから、早目に休んでしまおう。とりあえず艦娘新教が大人しくしていてくれれば楽なのだがな。
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今回は敵の数も少なかったので圧勝でしたね。それにしても相変わらず姉さんの索敵能力は規格外ですね。こんなに暗い海なのに敵がどこにいるのか正確に分かってるみたいで・・・まあ、朝から夕方にかけては集中力を欠いてしまうのが欠点ですけど。それでも夜戦では多大な功績をあげているので、提督からその能力をかなり評価して頂いているようで羨ましいです。私ももっと頑張らないと・・・
「提督が予定通り長門鎮守府近海に戻れって言ってるからすぐに戻るよ。」
「じゃあ高雄さん達のとこまで競争しようよ!?もちろん私が一番早いけどね♪」
「へぇ?いくら島風が速いからって、夜の海で私に勝つつもり?良いよ勝負だ!!」
「はい!!雪風も頑張ります!!」
「ちょっと姉さん!?今は作戦行動中ですよ!!遊んでる場合じゃありません!!」
「えぇ〜提督はすぐに長門鎮守府近海に戻れって言ってたし、命令から外れて無いから良いじゃん?」
「良いじゃんではありません!!作戦行動中に陣形を乱して航行するのは論外です!!」
まったく姉さんは今日提督から怒られたのをちゃんと反省しているんでしょうか?せっかく凄い能力があるのだから、もう少し旗艦としての責任感を持って欲しいものです・・・
「神通さん競争しないの?島風よりおっそいから?」
「し、島風ちゃん!?」
「・・・・・・今、なんて言いましたか?」
「だからぁ〜神通さんが島風よりおっそいから競争しないのって聞いて・・・ます・・・」
そうですか。どうやら姉さんだけではなく島風さんも教育しなければならないようですね。いくら性能面で優秀であったとしても、艦隊行動を乱すような真似は許せません。
「島風さん?私は作戦行動中に遊ぶのが間違っていると言っているのですよ?」
「お、おぅ!?」
「ちょ!?神通落ち着いて!!また怖い顔してるから落ち着いて!!島風が恐くて震えてるから!!」
「島風ちゃんも早く謝って!!失礼な事を言ったらダメですよ!!」
「姉さん?私は落ち着いていますよ?それと私はなにか間違った事を言っていますか?」
「うんうん、間違って無いから!!私も島風も夜戦の後でちょっと昂ぶってただけだから!!ごめんって!!ほら、島風も反省してるから許してあげて?」
姉さんのとなりで島風さんが壊れた人形のように首を縦に振り続けてますね・・・まあ、反省しているならここまでにしましょうか。ここであまり時間をかけるのはそれこそ命令違反になりますし。
「分かれば良いんです。では単縦陣で長門鎮守府近海まで戻るで良いですよね?」
「そうだね。じゃあ行こっか?」
「ええ、それと私は最後尾でも良いですか?」
「良いけど何するの?」
「私が最後尾から陣形が乱れていないか確認しようと思います。もし陣形を乱すような事があれば・・・提督に航行演習をするようにと進言させて貰います。」
提督は私達の待遇を良くして下さる反面、私達に規律と戦果を求める方のようです。ならば海上での行動の基本となる航行に問題があるとなれば、徹底的な演習の許可を頂けるでしょう。姉さんと島風さんに軍規というものを叩き込むには良い機会です。
「い、良いけど御手柔らかにね?」
「それは旗艦としての命令ですか?それともただのお願いですか?」
「お姉ちゃんからの切実なお願いだね・・・」
「そうですか、では行きましょう。私が後ろからしっかりと監視します。」
「だよねぇ・・・島風、雪風、頑張ってついて来てね。」
「あ、うん・・・」
「雪風はいつでも行けます!!」
すっかり大人しくなった島風さんはともかく、雪風さんはとても真面目で良い子ですね。仕事はきっちりしたうえで被弾率も少ないので、とても優秀な駆逐艦です。では姉さん達も進み始めたので、私もしっかりついて行きましょう。自分で最後尾からの確認を申し出たのですから、自分自身が一番きちんとしなければなりません。
川内が遊んで神通が叱るパターンが増えてきたなぁ。