食堂では早朝にも関わらず多くの艦娘達が食事に来ていた。既に食事を始めている者も居て、やはり一番目立つのは正規空母達の席だろう。うちの一航戦と五航戦に加えて横須賀の二航戦も一緒になって、雑談を楽しみながら食事をしているようだが、相変わらず超特盛の量を食べている。一航戦と二航戦が大食艦なのは知っていたが、五航戦もそれに負けないくらい食べるのだな。やはり正規空母の燃費の問題だろうか?そんな豪快な食事風景と対象的なのは、部屋の隅で肩を寄せ合うようにして食事をしている横須賀の秋月型姉妹だ。食堂のスペースは充分に余裕があるのだが・・・まあ、迷惑をかけられているわけでもないので、こちらからとやかく言うような事ではないか。
「あ、提督、おはようございます。」
「ああ、朧か。おはよう。」
「朝食の準備出来てるよ。」
「ああ、助かる。」
朧に食堂の中央付近に準備されていた席へと案内してもらい、席について食事を始める。そして予定通りに大淀と曙と共に引き継ぎや今日の予定に関しての話を進める。今日も予定が詰まって忙しいからな・・・
「あー、これはあれだね・・・」
「あれですなぁおぼろん氏・・・」
「え?あれってなぁに?」
「自然に会議を始めたなぁと思って・・・」
「そうですなぁ・・・」
「あ、うん、そうだね。」
「あれで食事もしっかりしてるんだからびっくりだね。」
「新しい提督が来てからまだ一週間くらいでしょ?しかもぼのたんが秘書艦補佐になったのって3日前くらいじゃん?」
「うん、そうだね。曙ちゃんすっごく頑張ってるね。」
「元々仕事人気質の曙と提督の性格が合ってたからなのかな?」
「それもあるだろうけど、うちのぼのたんがチョロ過ぎて3日で調教完了したってこはうっ!!」
「誰が調教済よ!!」
「痛いですぞぼのたん・・・会議に集中していたはずでは?」
「隣で普通に喋ってたら聞こえてくるわよ!!」
大淀達との話に集中していたのだが、いきなり曙が漣の頭を叩いて喧嘩を始めた。どうやらまたなにか漣がちょっかいをかけたようだ。
「・・・・・・提督、お食事中すみません。長門鎮守府より通信が入りました。」
長門鎮守府からという事は織田か霞だな。織田がこんな早朝から起きるというのも珍しいし霞からか?
「ああ、代わろう。・・・葛原だ。」
「おお!!盟友よ!!我だ!!」
「なんだ・・・ハズレの方か・・・」
「ちょ!?いきなりそれは酷くないか!?」
「どうした?用が無いなら切るぞ?」
「待て待て待てぃ!!用が無ければ通信などせぬであろうが!?そもそも盟友は気が短くていかんと」
どうにも話が長くなりそうだったので通信を切って食事を再開する。が・・・すぐにまた通信が入る。
「・・・・・・なんの用だ?」
「あの・・・ちゃんと我の話聞いてくれぬか?」
「なら用件を簡潔に伝えろ。」
「長門鎮守府の現状報告である・・・今朝鎮守府内を確認したのだが、妖精さん達のおかげで最低限の設備は復旧しておる。」
「具体的には?」
「通信設備とレーダー関係は完全に修理完了しておる。建造ドック・入渠ドックは共に一つずつ復旧、工廠と資材倉庫も一部復旧。食堂は復旧完了しておるが、艦娘寮は一部だけである。本当は全部修理したいのだが、資材の関係でこの程度に留めるべきだと霞ママに言われてしまったのでな。」
ふむ、本当に必要最低限と言ったところだな。だがまともな艦隊も居ない状況で設備だけ整えても無駄だ。というか霞が織田の手綱をきちんと握ってくれているようで安心出来る。
「流石は霞だな。」
「ぬう・・・まあよい。というわけで我は今から建造にて新たなる仲間を手に入れるのだ!!新たなる艦娘に出会えるこの感動!!是非とも盟友と分かち合いたくて連絡したのだ!!」
「そうか、では切るぞ?」
「またか盟友!?そのネタは飽きてしまったぞ!?」
「ああ、そうだ。」
「む?どうした我が盟友よ?」
「霞からも言われているとは思うが、まずは最低値レシピで数を揃えろよ?いきなり戦艦や空母を狙って資材を無駄使いするなよ?」
「う、うむ・・・しかしだな・・・」
「では忠告はしたぞ?私は忙しいから後は霞を頼れ。」
「あ!?ちょ!?」
織田に忠告だけ済ませてから通信を切る。あいつには霞が付いているのだから、この程度の助言で問題ないだろう。もしなにかトラブルがあれば霞から連絡があるはずだ。
「あの・・・宜しいのですか?」
「ああ、無駄話に付き合うほど余裕はない。向こうの状況も理解したし、こちらが伝えたい事は伝えた。」
「そう・・・ですか・・・」
「どうした?何か気がかりな事でもあるのか?」
「いえ、何でもないです。」
大淀には何か思うところがあったのかと思ったが、どうやら話す気は無いようだ。まあ、無理にでも聞き出すような事でも無いか。
「ふぅ・・・大淀さんが言わないのであれば、この漣がご主人様に一言物申しましょう。」
「ん?なんだ?」
「コミュ障か!!もっと何か話す事あるでしょ!!」
「・・・何か伝え忘れていた事でもあったか?」
「いやいやいや!!そういう事じゃなくて友達相手ならもっと何かあるでしょ!?業務連絡じゃなくて雑談とかですよ!!」
「織田は友達ではなく知り合いだ。それに雑談と言われても何を話せと言うんだ?雑談にどういう意図があるのだろうか?」
「ああもう!!なんで雑談に意味を求めるんですか!?そこは友好的な関係を築くとかで良いんですよ!!雑談の内容も天気でも食事でも漣が可愛いでもなんだってかまいませんよ!!」
ふむ・・・確かに天候の話は作戦行動に影響する話だな。今日は曇ってはいるが今の所雨は降っていない。これが土砂降りになるようであれば、まともに艦載機が使えない程に視野が悪くなるかもしれない。食事の件は向こうの鎮守府で食料の確保が出来たかを心配しての発言だろうか?流石にそこは北条が援助しているだろうと考えていたが・・・そういう細かな確認を雑談として話をするべきと主張しているのだろうか?それと最後のは意味が分からん。艦娘好きの織田の為の何かだろうか?
「ふむ、つまり漣としては今の会話は情報量が少なかったと言いたいのか?」
「その言い方は絶対に理解してないやつ!!ぼのたんもご主人様になんか言ってやってよ!!」
「諦めなさい。提督として最低限のコミニケーションは出来ているわ。」
「はにゃ〜〜!?そうだった!!ぼのたんは調教済みだった!!」
「だ・れ・が!!調教済みよ!?」
「はぅ!?こうなったらおぼろん!!潮ちゃん!!なんか言ってやって!!」
「うーん・・・ノーコメントで。」
「漣ちゃん?食事中にあんまり騒いだらダメだよ?」
「何・・・・・・だと・・・・・・」
漣の言いたい事はどうにもよく分からないが、漣なりに何かを一生懸命伝えようとしているのか?
「はぁ・・・よく分からんが次回話をする機会があれば試してみよう。」
「是非そうして下さい・・・ご主人様のコミュ障が改善されるなら、漣が孤軍奮闘したかいがあると言うものです。」
「そうか。」
そんな事を話していると向こうから球磨が近づいて来た。食事が終わったから秋月型姉妹を軍艦防波堤に案内する話の確認だろうか?
「提督、球磨は食事が終わったからいつでも出発出来るクマ。横須賀の叢雲も早く出たいみたいだから出撃の許可が欲しいクマ。」
「ああ、分かった。軍艦防波堤の位置なら北九州鎮守府のレーダー圏内だから問題はないだろうが、一応警戒してくれ。それと艦娘新教側との問題に横須賀を巻き込みたく無いから、今回は何も問題を起こさないようにしてくれ。それと帰ったらどういう対応をされたかきちんと報告するのと、もし問題があればすぐに通信で知らせてくれ。」
「了解クマ!!それじゃあ行って来るクマ!!」
とりあえずこれで球磨には必要な事は全て伝えられたな。ここまできちんと命令しておけばそうそう問題は起こさないだろう。となるとあとは・・・
「ああ、それと少し良いか?」
「クマ?なにかあるクマ?」
「天気はどうだ?」
「曇ってるけど雨は降って無いクマ。心配する程じゃ無いクマ。」
「食事はきちんと食べたか?」
「クマ?ちゃんと出された物を全部食べたクマ。好き嫌いなんてしてないクマ。」
「なら良い。あと漣は可愛いか?」
「クマァ!?提督疲れてるクマ?ゆっくり休んだ方が良いと思うクマ・・・」
「いや、大丈夫だ。では案内頼むぞ。」
「わ、分かったクマ・・・」
とりあえず漣の言っていた雑談を試してみたが、これで上手くいっているのだろうか?あまり反応が良くないと思うのだが・・・球磨も不可解な事があったかのように首を捻りながら去って行ったし・・・
「漣、雑談はこんな感じで良いのか?」
「なんも言えねぇ・・・」
主人公だって問題児四天王の一角。そりゃ人間性に難ありですよ。