疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 ようやく軍艦防波堤にたどり着いた。作者が軍艦防波堤に行ってから一ヶ月かかってしまいました。


183話(軍艦防波堤)

 軍艦防波堤では先程まで慌ただしく歓迎の準備が進められていました。普段から清掃はしていたものの、横須賀鎮守府の艦娘が来るとの事で、多くの信者が集まって念入りな周囲の清掃を行っていました。とは言ってもこの軍艦防波堤で姿を確認出来るのは駆逐艦柳だけで、駆逐艦涼月と冬月はコンクリートの下に埋まっている。秋月型姉妹がそんな現場を見てがっかりしてしまわないでしょうか?それにしてもこんなに信者を集めてしまったら、葛原提督の反感を買ってしまわないでしょうか?そんな事を考えていたら神林さんが慌てた様子でやって来る。

 

「あ、綾瀬さん!!鎮守府より連絡がありました!!今から鎮守府を出発して海路でここに向かっているそうです!!」

 

「やはりそうなりますよね。陸路では大きく迂回しなければなりませんから、海を進む手段があるなら海路から来ますよね。こちらの手筈は?」

 

「信者達に命じて周辺の清掃は完璧です。案内表示も綺麗になっていますし、山の方にある慰霊碑も清掃とお供え物を準備して抜かりありません。もちろん慰霊碑の方にお送りする為の車の手配も完璧です。後は手土産も用意しております。」

 

「分かりました。念の為に確認しておきますが、手土産は普通のお菓子ですよね?底に金等を仕込んだりしていませんよね?」

 

「え、ええ。そこは綾瀬さんから念を押されていましたから、普通のお菓子にしておきました。ですがそれで葛原提督や海原提督が納得されるでしょうか?」

 

 やれやれですね。賄賂を贈る習慣があるのは理解出来ますが、葛原提督や海原提督には逆効果になるのが理解出来ませんか・・・皆さん裏では普通にやってますが、賄賂は贈る方も受け取る方も違法行為なんですよ?そんな事をするくらいなら、寄付金として正規のルートで贈れば良いものを・・・

 

「海原提督は正義の人ですから、賄賂などは一切受け取らないという話ですし、葛原提督は汚職行為に手を出すリスクをかなり嫌がる方です。その点お菓子程度であれば艦娘達に喜ばれますし、周囲からも賄賂とは受け取られませんので無難に済ませられますよ。」

 

「そうなのですか?海原提督はまあわかりますが、葛原提督が汚職行為のリスクを嫌がるのですか?着任早々に暴行や殺人を犯しておきながら、賄賂程度を今更怖がるとは思えませんが・・・」

 

「はぁ・・・私が調べた情報では葛原提督本人がやった事は、源さんを海に連れて行った事と暗殺者の撃退をした事だけです。平川元市長は憲兵に取り押さえられたところを逃亡して憲兵隊に銃殺されていますし、大森元提督のご子息が暴行された件も別の人間と揉めた時に暴行されたとの事です。暗殺者の撃退について死因が自殺というのは怪しいですが、仮に葛原提督が手を下していたとしても正当防衛です。」

 

「・・・・・・にわかには信じられない話ですね。」

 

「でしたら葛原提督に贈るお菓子に賄賂を入れたらどうですか?その場合私は即座にこの件から手を引きますけれど。」

 

「そんな事おっしゃらないで下さい!!もちろん綾瀬さんの指示通りに動きますから、どうか見捨てないで下さい!!」

 

「分かっていただければ構いませんよ。」

 

 はぁ・・・どうせ私に縋るしかないなら、変な勘ぐりをしなければ良いものを・・・本当に面倒な人ですね。

 

―――――――――――――――――――――

 

 球磨さんの案内で軍艦防波堤へと向かっているのだけれど、正直に言うと少し気が重い。秋月達は素直に喜んでいるみたいだけど・・・球磨さんがここでどんな扱いを受けていたのかと想像すると、トラウマを抉るような事を頼んでしまった事を後悔してしまう・・・一応球磨さんは気にした様子は見せないけれど、内心どう思っているのかしら・・・

 

「もうすぐ軍艦防波堤に着くクマ。なんか人がいっぱい集まってるクマ・・・」

 

「そう。私達を歓迎してくれてるのかしら?」

 

「横須賀の艦娘に会える機会なんて滅多に無いクマ。きっと司祭が信者達に情報を流しやがったクマ。」

 

「そう・・・」

 

 案内された場所では多くの人が集まって、こちらに向かって手や国旗を振っている。遠目からでも艦娘の視力であれば一人一人の表情まで視る事が出来るけれど、老若男女皆純粋な笑顔で迎えてくれている・・・けれど一人だけかなり緊張している男がいる。服装から見てもあれが神林司祭だろう。その隣に立っている人物もそれなりに良い服装だから、ある程度立場のある人間でしょうね。

 

「ねぇ球磨さん、あの白い服を着た人が神林司祭なのかしら?」

 

「あー、名前は知らないクマ。でもあいつが司祭で合ってるクマ。」

 

「その隣の人は分かる?」

 

「あいつは知らねぇクマ。」

 

「そう・・・」

 

 球磨さんが知らないということは艦娘新教の関係者では無さそうね。となると私達か北九州鎮守府と関係を深めたい有力者ってとこかしら?どうにもキナ臭いし警戒しておいた方が良さそうね。秋月達は特に何も感じていないみたいで、満面の笑みで手を振り返しているみたいだし、少し釘を刺しておこうかしら。

 

「あんた達、悪いけれど次の作戦行動の時間が近づいてるから、ここではあんまり長居は出来ないわ。手早く済ませてちょうだい。」

 

「ええ、分かっています。今回は私達のワガママに付き合って下さってありがとうございます。」

 

「別にこれくらい構わないわよ・・・」

 

 うう・・・純粋な秋月達の目を見ると、少し気まずく感じてしまうわ・・・そんな事を考えている間に、人々の大歓声に迎えられて神林司祭の前に整列して敬礼をする。陸には上がらずに海からなので私達は神林司祭達を見上げる形だ。

 

「横須賀鎮守府所属の叢雲よ。本日は軍艦防波堤への訪問許可及び盛大な歓迎をありがとうございます。」

 

「艦娘新教北九州支部を任されております神林と申します。本日は勇名名高い横須賀鎮守府の艦娘様方にお会い出来て光栄に存じます。信者一同皆様のご活躍に心からお礼を申し上げるとともに、皆様のこれからのご健勝とご無事を心からお祈り申し上げます。」

 

「ありがとうございます。皆様のご期待に応えられるように、誠心誠意職務に励ませて頂くわ。」

 

「ありがとうございます。それで・・・その・・・つかぬことをお聞きしますが、葛原提督はどちらに?」

 

「クマ?提督なら鎮守府で仕事してるクマ。なにか用事があるなら球磨が伝えてやるクマ。」

 

「ああいえ!!お忙しいのであれば、お手を煩わせるような事は致しません!!一目お会いしてご挨拶をと思っておりましたが、そういう事情であれば仕方ありませんとも!!鎮守府に戻られましたら皆様のご活躍に信者一同心から感謝しておりますとお伝え下さい。」

 

「分かったクマ。」

 

 ふうん?事前に話を聞いていたけれど、この神林とかいう司祭は随分と挙動不審ね。一応取り繕ってるつもりみたいだけど、多量の発汗に目線がキョロキョロと忙しなく動いていて、葛原提督が不在と聞くと露骨に安堵の息を漏らしたわね。葛原提督が余計な事をしないようにしっかりと釘を刺したと言っていたけれど、かなり恐ろしい脅し方をしたのかしら?

 

「悪いのだけど私達はあまり時間が無いの。軍艦防波堤の案内をして貰えるかしら?」

 

「これは失礼致しました!!ではまずこちらに船体の上部が見えておりますのが駆逐艦柳となります。そして現在はコンクリートによる補強で埋まっておりますが、駆逐艦柳に続いて駆逐艦涼月・冬月が眠っております。この三隻がここ北九州の地を響灘の荒波から護って下さる軍艦防波堤として眠っております。そして向こうに見えます高塔山にこの三艇の戦没者慰霊碑が建てられております。もし宜しければそちらまで車でお送りいたしますが?」

 

「・・・申し訳ないけれど、本当に時間がないから慰霊碑はまた機会があれば訪問させて頂くわ。」

 

「本当にお忙しいようですね・・・ではまたこの地を訪れて頂けるまで、信者一同と共に大切に管理させて頂きます。」

 

「ええお願いするわ。」

 

 そして私達は海に、信者の方達は陸に並んで黙祷を捧げる。ここで護国の為にその船体を捧げた三隻とその戦没者に感謝を捧げ、願わくば冬月と柳が艦娘としてまた共に戦えますようにと。

 

―――――――――――――――――――――

 

「行ってしまいましたね・・・」

 

「え、ええ。」

 

 横須賀の艦娘達と案内役の球磨さんは、黙祷を終えるとすぐに別れの挨拶をして立ち去ろうとしました。神林さんが慌ててお土産を叢雲さんと球磨さんに手渡すと、叢雲さんは丁寧にお礼を言って受け取り、球磨さんは少し顔を顰めていたがきちんと受け取ってくれた。だが叢雲さんもお菓子を受け取った際に、わずかにだが重さを確かめるような素振りを見せたので、神林さんをかなり警戒しているようですね・・・出来ればこの機会に横須賀鎮守府との縁が欲しかったのですが、警戒されている神林さんと一緒だと印象が悪いと思ったので、今回は何もせずに見送る事にしました。

 

「それでは私は政務がありますので、これで失礼致しますね。」

 

「ええ、分かりました。それにしても葛原提督が訪ねて来ないとは予想外でした。てっきり直接乗り込んで来るものとばかり・・・」

 

「これで分かったでしょう?葛原提督は神林さんとは距離を置きたがっているのです。ですから余計な事をしなければ、目をつけられる事は無いでしょう。」

 

「その余計な事が理解出来ないから苦労しているのですがね・・・」

 

 ああ、そうでしょうとも。事前に相手の情報を集めておき、実際に会って相手を観察しながら話をし、その後に気になった事をさらに調べる。そういう苦労をしているからこそ、その人に合った対応を取れるのです。それでも人の心を完全に理解するなんて無理な話なのですから、努力もしないで上手くやれるわけがないというものです。

 

「まあ、また何かありましたらご相談下さい。私がお力添え出来る事であれば、その時はまた手をお貸し致しましょう。」

 

「ありがとうございます。今後とも是非宜しくお願い致します。」

 

 これで神林さんは私がコントロール出来るようになりそうですね。今回の収穫として悪くはありませんね。




 駆逐艦涼月・冬月・柳が眠る場所は北九州市の若松区にあります。艦これファンの方で聖地巡礼される方はマナーを守って訪れましょう。
 それと高塔山にある戦没者慰霊碑はかなり入り組んだ場所かつかなりの急勾配を登る事になります。車で訪れる方は運転には充分気をつけて下さい。
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