第六駆逐隊との面談を終えたので、前任者の私室調査の様子を見に行く。指示はきちんと出したが、確認はきちんとしておくべきだろう。
執務棟の2階にある会議室から、執務室や前任者の私室がある3階に向かう階段で、艦娘達が絵や壺を運んでいるのを見かける。荷物を置いて敬礼しようとするのを制して、作業を続けるように伝える。いや、階段の途中で荷物置いて敬礼するとか危険だからやめろよ。
一通り艦娘達が通り過ぎたのを見送ってから、階段を登って執務室に向かう。無駄に豪華な扉は開け放たれて、廊下の窓も開けられている。やはりこの部屋に入るなら換気は必須だな。中に入ると長門が一人で絵画を外しているところだった。
「長門、作業はどんな感じだ?」
「すまないな、提督。ようやく荷物を運び始めたところだ。この部屋は臭いが酷くて、換気をしないとまともに作業を始められなかったのだ。この臭いにトラウマを持つ者も居るのでな・・・」
「確かに酷い臭いだったからな、それは悪いことをしたな・・・あの甘ったるい悪臭について何か知ってるのか?」
「・・・提督の私室に連れ込まれた者も多いからな・・・なんでも女性を興奮させる為の香を焚いているらしい。まあ、艦娘には効果がほとんど無いのだが、前任者が艦娘を連れ込む時はいつもこの臭いがしていたのでな・・・」
おお、流石のクズだな。もうこの程度ではあまり驚きもしなくなってしまったが。
「それは本当に悪かったな・・・それで倉庫の方に作業スペースは確保出来たのか?」
「ああ、そちらは明石が確保してくれて、今は陸奥が向こうで仕分けて保管する指揮をしている。私より陸奥のほうが細かいことに気が効くので、そちらを任せたのだ。」
陸奥は長門の姉妹艦で、頼れるお姉さんって感じの艦娘だったはずだ。確かに長門はきっちりしていて冷静な対応が出来そうだが、陸奥は気配りが出来て柔軟な対応が出来そうな感じだったな。
「壺とか絵画とかの美術品から運んでくれているようだし、そのまま作業を続け「わーい!私がやっぱり一番速いよね!!」
軽快な足音と共に駆け込んで来たのは島風だった。彼女は駆逐艦離れした高スペックと、きわどい格好が多い艦娘達の中でも一番まずい格好なので有名だ。特に速度では並ぶものが無いとまで言われる優秀な艦娘だ。
「おうっ!?て、提督さん・・・お、おはようございます?」
さっきまで元気一杯だったのに、一気に挙動不審になったな。この娘も何かしらトラウマを抱えているのだろう・・・
「ああ、おはよう。速いのは良いことだが、一応売るものだから丁寧に扱うようにな。」
「は、はい・・・だだ大丈夫です。」
ここまで怯えているなら、もう少し慣れるまで面談はやらないほうが良いかな?
「島風ちゃ~ん!待ってよ~」
後から入って来たのは雪風だ。彼女も駆逐艦離れした高スペックと、何故かスカートを履いていないことで有名で、幸運の不沈艦として本来のスペック以上の働きをしてくれる頼もしい艦娘だ。
「あ、司令。おはようございます!どうされたのですか?」
島風とは違いきっちり敬礼と挨拶をしてくる。
「ああ、おはよう。作業の進捗を確認しに来ただけだ。島風にも言ったが、丁寧に作業するように頼むぞ。」
「はい、頑張ります!」
そう言って雪風は島風と一緒に作業に戻っていく。二人とも小さな少女ではあるが、難なく荷運びをしているのを見ると、やはり艦娘なのだなぁと感じる。
「なあ、提督。相談があるのだが。良いだろうか?」
「どうした?」
「荷物を全て運び出して調査しろとの命令だったが、これをどうやって調査すれば良いのか分からずに困っていてな・・・」
そう言って長門が指差したのは、前任者の石像だった。等身大の大きさの石像なのでかなり重いが、艦娘の出力なら運ぶのはなんとかなると思う。しかしこの大きさなら細工をして、何かを隠している可能性がある。
「石像も台座も調べておきたいところだな。」
「お、提督じゃねぇか。なんだよ、俺達はちゃんと働いてるぜ。」
天龍か・・・ちょうど良い。
「ちょうど良いところに来たな。頼みたい仕事がある。」
「なんだよ?変な仕事ならやらないからな?」
「この石像なんだが・・・」
「その趣味が悪い石像がなんだよ、はっきり言って触りたくねぇんだがよ?」
「叩き壊せ」
「・・・は?」
分かりやすく命令したつもりだったが、聞き取れなかったのだろうか?天龍は呆けた顔をしている。
「だから叩き壊せ。必要なら艤装の使用も許可しよう。」
「おいおい、マジかよ。」
「ああ、だが周囲の邪魔にならないところで作業して欲しいのと、中に何か入ってる可能性があるから、砲撃はやめて欲しい。出来るか?」
「ヘッ!そういうことならこの天龍様に任せな!!思いっきりぶっ壊してやるぜ!!」
大喜びで艤装を取りに行く天龍を見送ると、長門が心配そうな顔で声をかけてくる。
「なあ、提督。本当に良かったのか?」
「もちろんだ。あんな小太りのおっさんがモチーフの石像に価値なんか無い。それに隠された細工を探して解除するなんて面倒だからな。それに前任者には散々迷惑をかけられているのだ。憂さ晴らしくらいしたくもなる。」
「そうか・・・提督がそう言うなら良い。」
「では陸奥のほうの様子を見に行くから、ここは任せたぞ。」
「了解した。」
苦笑いしていた長門を背に、倉庫の方へ向かって歩いて行く。少しだけ気分が良いな。
石像はどうしても叩き壊したかった。
もうすぐ一周年と言う事で久しぶりにアンケートをしたいと思います。この作品のキャラでの人気投票的なやつです。是非ご参加下さい。
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主人公葛原提督率いる問題児四天王
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大淀
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長門・陸奥
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第七駆逐隊
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川内・神通
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明石・夕張・間宮・鳳翔
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第六駆逐隊
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北上&大井
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青葉&衣笠
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金剛姉妹
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伊19・伊168
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赤城&加賀
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翔鶴&瑞鶴
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白露型姉妹
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島風&雪風
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天龍&龍田
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龍驤・五十鈴・球磨・摩耶・高雄
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朝潮・木曾・陽炎・不知火
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叢雲ちゃん率いる横須賀艦隊
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俺の嫁が出てねぇぞ!!早よ出せや!!