急いで執務室に戻ると曙が真剣な表情で通信機を使用していた。
「状況は?」
「もうすぐ龍驤さん達が仕掛けるわ。長門鎮守府にも連絡済みよ。長門鎮守府からは援軍を出すべきかと聞かれているけどどうするの?」
「いや、援軍は必要無いだろう。長門鎮守府の艦娘達は建造したばかりで連携も取れないだろうし、遠征部隊として人員も割いている。龍驤達が苦戦するようなら長門鎮守府にも出て貰うしかなくなるが、今はまだ必要ないはずだ。」
「そう。じゃあ伝えておくわ。」
「しかしこう何度も深海棲艦の襲撃があると、どうにもきな臭いな・・・」
「そうね・・・戦艦棲姫の討伐後に横須賀鎮守府が周辺海域の掃討をしたのよね?という事はこいつらはその外側から来たってことよね?」
「ああ、そのはずだ。地図を貰えるか?」
「ええ、分かったわ。」
執務室の机に地図を広げて、深海棲艦の遭遇地点に駒を置いてみる。北九州鎮守府から北北西にいったところに集積地棲姫、その南西あたりから戦艦棲姫が流れて来ている。そして叢雲達が潰した拠点は集積地棲姫の拠点から東に向かってある程度並んでいる。これは再建中の長門鎮守府を護る為に、長門鎮守府をカバーするように行動した結果だ。それに集積地棲姫が居た拠点より西側となると佐世保鎮守府傘下の管轄となるので、そのへんの軋轢を嫌ったのかもしれない。そして夜間にふらふらとしていた深海棲艦は長門鎮守府の北を東側から移動していて、今回の深海棲艦も長門鎮守府から北東の方向から向かって来ている。このふたつの艦隊が無関係では無いと考えると・・・
「・・・・・・東側に上位個体が居て、偵察部隊を送り込んで来ている?」
「・・・・・・充分にあり得る話ね。」
だがどうしてこうも長門鎮守府が狙われる?一度崩壊させた場所だから、防衛網の構築が出来ていないと知っているからか?それともただ単に深海棲艦の本能に従って、激しい戦いのあった場所に惹かれて寄って来ているだけなのか?
「もしこの仮説が本当だったら、また面倒な事になってしまうな・・・」
「そうね・・・ん!!考え事は後よ。龍驤さん達が接敵するわ。」
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司令官から任された偵察任務やったけど、うちの艦載機が見事に敵を見つけてやったでぇ!!しかも敵さんは少数やし司令官から迎撃命令も即座に出たんや!!前回は多勢に無勢で逃げるだけやったけど、今回はうちらが主力艦隊や!!
「さぁ仕切るで!!攻撃隊発艦や!!」
まずはうちの艦載機でどれだけ敵さんを削れるかにかかってるんや!!うちがへましたら戦力差はかなり不利になってしまうから責任重大や!!
「あんま気負うなよ龍驤。この天龍様が居るんだからあんな奴らに負けやしねぇよ。心配してねぇでどーんとかまして来いよ!!」
「そうよ!!暁達第六駆逐隊も付いているんだから、龍驤さんが失敗しちゃってもちゃんとフォローしてあげるわ!!」
「そうよ!!もっと雷達を頼って良いのよ♪」
「な、なのです!!」
「ダー」
これはあかんなぁ。久々の実戦で表情カチンコチンに固まっとったんかいな?天龍だけやなくて第六駆逐隊の娘達にも心配かけてしもうたやんか。
「アホぬかせ!!まずはそこで大人しくうちの華麗な艦載機さばきを見とかんかい!!」
言うたからにはきっちり仕事せなあかんな!!艦載機の皆!!ほんま頼むでぇ!!そう声をかけたら、なんや気合の入った雰囲気を感じる!!ほんま頼りになる奴らやな!!
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『敵艦隊捕捉!!母艦龍驤より攻撃命令!!これより襲撃隊列にて攻撃する!!俺に続けぇ!!』
『敵艦載機は無く対空能力も低い!!お前らあんな奴らに落とされるなよ!!』
『当たり前だろ!!龍驤の姉御に恥かかせんなよ!!』
敵の艦載機による迎撃もなく、龍驤の放った艦載機達は悠々と距離を詰める。こちらに気がついた敵艦隊が対空迎撃を行ってきたので、敵の迎撃を躱しながら一気に距離を詰める。幸い敵の迎撃による弾幕は薄く、ほとんど被害を出さずに魚雷を投下して一気に飛び去る。
『よっしゃあ!!軽巡ホ級を仕留めたぞ!!』
『やったぜ!!しかもあいつら動揺して隊形ぐちゃぐちゃじゃねぇか!!』
『おいおい、うちの姉御の綺麗でフラットな体型を見習いやがれってんだバカ野郎!!』
上機嫌で飛び去る妖精さん達に龍驤からさらなる指示が出る。
『態勢立て直したらもう一回突撃だとよ!!』
『そりゃ良いな!!天龍さん達に任せる前にもう一隻くらい沈めてやろうぜ!!』
『よしきた!!深海棲艦に九七式艦攻の恐ろしさ見せてやろうぜ!!』
充分に距離をとった艦載機達は、再び襲撃隊形を整えて敵艦隊へと突っ込む。混乱する敵艦隊は各自がバラバラに対空迎撃をしていて、さっきよりも弾幕が薄い。
『ヘイヘイ!!弾幕薄いよ!!』
『よっしゃ!!旗艦狙え旗艦!!』
『あいつ沈めたら金平糖貰えるぞ!!』
妖精さん達は敵旗艦目掛けて魚雷を投下したものの、その進路を塞ぐように移動した驅逐イ級に阻まれ、駆逐イ級は盛大な爆発と共に沈んでゆく。
『チッ、大物は逃したか。全機帰投する!!』
『だが2隻沈めたんなら充分な戦果じゃないか!!』
『俺達の仕事はここまでだ!!武運を祈るぜ!!』
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「見てみ?うちの艦載機は出来る奴らやろ?」
軽巡ホ級に駆逐イ級を仕留めた龍驤がドヤ顔で笑う。これで残りはホ級eliteとイ級eliteとイ級の三隻だ。こっちの練度に不安は残るものの、数的有利だから充分にやれる!!
「へっ!!やるじゃねえか!!」
「ならうちは艦載機の回収するわ。前線の指揮は天龍に任せるでぇ。」
「おう!!任せとけ!!行くぞちびっ子共!!」
「ちょっと暁はレディなのよ!?子供扱いは・・・って置いてかないでよ!?」
暁が出遅れたせいで少しもたついたが、すぐに単縦陣を形成して交戦開始する。全速力で近づきながら砲撃するが、初弾はお互いに全弾外れ。
「次弾装填!!次は当てっぞ!!」
さっきの砲撃から誤差を修整して2発目を放つ!!旗艦のホ級eliteには避けられたものの、イ級eliteとイ級に砲弾が命中し、イ級elite中破とイ級轟沈の成果を上げるが・・・
「クソがっ!!」
「はにゃーっ?!」
「もう、許さない・・・許さないんだから!!」
こっちの被害はオレと電が小破、暁が中破か・・・
「雷撃戦行くぞ!!暁は無理すんな!!」
充分に距離が縮まったので中破した暁以外で魚雷を発射する。4隻分の魚雷はきちんと相手の逃げ場を奪って命中し、派手な爆発が巻き起こる。
「やったわ!!」
「おい!!敵の雷撃来るぞ!!油断すんな!!」
「え!?」
こっちの雷撃が命中したことに喜んだ雷が油断しちまった!?他の四人は上手く雷撃を躱したが、雷がもろに雷撃くらっちまった!?
「うぅ・・・なによもう、雷は大丈夫なんだから!!」
「ったく・・・大丈夫じゃねぇだろうが・・・まあ、とりあえず敵艦隊は全部沈めたみたいだな。提督に報告すっか。」
妖精さん達の会話は艦娘である龍驤には伝わっていません。ご安心ください。