「代わりました。北九州鎮守府の葛原です。」
「益田鎮守府の狐塚だ。」
「それで?本日はどのようなご要件で?」
「なにやらお前が我々の事を探っていると聞いてな。なんのつもりだ?」
ふむ、やはり大本営あたりから戦闘記録を取り寄せたとの連絡があったか。こうなると鶴野提督にも報告が上がっている可能性が高いな。まぁ、別に隠すような事は無いのだが・・・
「なんのつもりと言われても、深海棲艦についての情報を集める為に戦闘記録を取り寄せただけですが?何か問題でも?」
「・・・・・・何を隠している?長門鎮守府の次はうちを狙っているのか?」
「はぁ・・・長門鎮守府は私が潰したとでも?長門鎮守府が潰れたのは原田提督のせいでしょう?」
「ああ、そうだとも。あの声がデカいだけのクズが死んだのは自業自得だ。ざまあみろと言ってやる。あのクズを自滅の道に誘い込んだお前には礼を言っても良い。」
ほう?原田提督と狐塚提督はかなり仲が悪かったようだな。やはり同じ舞鶴鎮守府の傘下であろうとも、一枚岩ではないようだ。だが共通認識として自分が原田提督を陥れたのは事実とされているようだ。
「そんな事実はありませんが、ひとまずおいておきましょう。それで?私が次は益田鎮守府を狙っていると?」
「その通りだ。原田のやつは騙せてもわたしは騙されんぞ?お前は鎮守府を潰して自分の仲間を引き込むつもりなのだろうが、そんな作戦はお見通しだ。」
「とんだ濡れ衣ですね・・・」
「誤魔化そうとしてもそうはいかんぞ?あの織田とかいう煩い奴はお前の友人なのだろう?それに北条さんとの繋がりも無視出来ない。上層部の奴らにどんな手段を使って提督の座にねじ込んだのかは分からんが、お前達は鶴野提督から領地をぶん取ったのだ。警戒しない理由が見当たらんわ!!」
これは話にならないな・・・結論を決めて話をしている奴に、一々説明しても無駄でしかない。というかもし仮に長門鎮守府を潰したのも策略で、誰かを長門鎮守府に着任させる事が出来るなら、絶対に織田などという厄介な奴は選ばない。もし選べるのであれば朔真を選ぶ。何を考えているのかわからんやつだが、あいつは優秀だし勤勉であまり問題行動を起こさない。
「はぁ・・・話が通じないのは分かりました。警戒するだけならお好きにして下さい。我々はそちらの警戒を無視して粛々と深海棲艦の対応をするだけです。」
「・・・・・・なんだ?益田鎮守府の近くに姫級でも居ると言いたいのか?」
「さぁ?それを調べる為の情報収集ですから。ですが私は姫級とまではいかなくとも、上位個体が存在すると仮定して調べていますよ。」
「・・・・・・そんな兆候は確認していない。」
「ええ、狐塚提督は近海での哨戒と遠征しかしていませんからね。奥の方で虎視眈々と準備をしている敵艦隊は見つけられないでしょう。」
「ぐ・・・」
ふむ?深海棲艦の話は気になるのか?これならば少し不安を煽れば偵察をしてくれるのではないか?そして何か発見すれば、鶴野提督に増援を求めて解決してくれるかもしれない。
「聞きたい事はそれで終わりですか?であれば無駄な通信はさっさと終わりたいのですが?情報収集とその精査を続けなくてはなりませんから。」
「・・・なにか分かったら連絡しろ。」
「はぁ?」
「なにか分かったら連絡しろと言っている。」
「はぁ・・・それをして私にどんな価値があるのでしょうか?」
「価値だと?情報の共有は重要な事だろうが?お前が我々の戦闘記録を取り寄せたのも情報を集める為だろうが。」
「それが何か?」
「だからお前もきちんと我々に情報を共有しろと言っているのだ!!」
「はぁ・・・・・・狐塚提督はあなたを陥れようとしている私の言葉を信じるとでも言うつもりですか?」
「ぐ・・・・・・」
また黙ったな。こいつは都合が悪くなると黙るタイプのようだな。まあ、考えなしにベラベラ喋るよりはマシか。原田提督よりは知性を感じる。
「失礼。なにも私は情報を一切開示しないと言うつもりはありません。戦闘記録はきちんと大本営に提出しますので、気になるのであればそちらから取り寄せてはいかがですか?手続きの関係で一日か二日ほど遅れた情報にはなりますが、そこから読み取れるものもあると思います。もちろん戦闘記録は結果であって、偵察の情報や私の予測等は記載されませんが。」
「・・・・・・何が目的だ?」
「目的?北九州鎮守府を護る事ですよ。あと今は長門鎮守府の防衛にも力を貸しているところです。」
「違う!!情報を出し渋る目的を聞いている!!」
「はぁ・・・必要最低限の義務は果たしているのですがねぇ・・・あえて言うならば目的はありません。狐塚提督に協力するデメリットが大きいから、私の考えを伝えたくないだけです。」
「デメリットだと?」
「ええ、私も近隣の鎮守府との情報共有は重要だと考えていました。ですから先日自分が集めた情報から、強力な個体が存在するかもしれないと警告しました。佐世保鎮守府と長門鎮守府と大本営に同じ情報を送ったはずなのに、何故か長門鎮守府が一人でろくに情報収集もせずに艦隊を差し向けた責任を擦り付けられました。それで長門鎮守府が崩壊したのは私のせいだと?冗談ではありません。それが舞鶴鎮守府傘下のやり方であれば、関わりたくないと言うのが当然です。」
「ぐ・・・・・・」
また黙ったか。と言うことは反論しようにも思いつかないという事かな?狐塚提督は原田提督の性格をよく知っているのだろう。さっきも声がデカいだけのクズだと言っていたし、ここまで言われれば原田提督が騙されたのではなく、勝手に暴走して自滅した事にも考えがいくはずだ。
「ではそういう事で、情報が欲しいのであれば自分で偵察部隊を送り込んで下さい。それか出雲鎮守府の猿田提督に協力を要請してみては如何ですか?」
「ま、待て。猿田の奴は駄目だ。あのバカに振り回されるのはごめんだ・・・」
「振り回される?ああ、援軍に呼ばれる事ですか?」
「そうだ。奴の適当な作戦に付き合わさせられて、わたしの艦隊がどれだけ被害を被った事か・・・原田のクズもそうだった・・・鶴野提督からの命令で無ければあんな奴らに付き合ってやる義理は無いのに・・・」
ほほう?どうにも狐塚提督は被害者面をしているが、私にはそうは思えない。確かに狐塚提督の艦隊が原田提督や猿田提督の援軍として呼ばれ、少なくない被害を被っているのは事実だ。しかし原田提督や猿田提督が深海棲艦に積極的に攻撃をするから、益田鎮守府への襲撃がほとんどなかったとも言える。自分に言わせれば普段から近海だけを行動範囲としているツケを支払わされただけというだけだ。
「そうですか。それはお気の毒に。ですが私には関係無い話です。それではこれで。」
「ま、待ってくれ!!まだ聞きたい事がある!!」
「はぁ・・・なんですか?」
「お前はこれからどう動くつもりだ?」
「さぁ?情報が無ければなんとも言えませんね。無闇に戦力を投入出来るほど、北九州鎮守府には余裕がありませんから。情報収集をしつつ北九州鎮守府と長門鎮守府の防衛をするのに手一杯でしょう。もし仮に上位個体が北九州鎮守府か長門鎮守府を襲撃しようとすれば全力で抵抗しますが、別の鎮守府が標的であれば我々の手には負えないと考えています。」
「だったら!!だったら情報があればどうだ!?敵の上位個体の位置が判明すれば協力してくれるか!?」
これはまたずいぶんと必死だな。助けを求めるならまずは猿田提督か鶴野提督だろう?猿田提督と仲が悪いのは分かるが、鶴野提督を頼らない理由はなんだ?
「それは共闘のお誘いという事ですか?偵察はするから援軍を送れと?信用出来ない相手である私と?」
「あ、ああ。今日話してみて分かったがお前はかなり頭が回るようだ。協力する価値があると判断した。もし仮に上位個体が居たとして、それを速やかに撃破すれば長門鎮守府への圧力が少なくなる。お前にとっても悪い話ではないはずだ。それがわからん奴ではないだろう?」
「ふむ・・・そちらが偵察を担当して下さるのであれば悪い話ではありませんね。ですが共闘に関してはお約束出来ません。我々の手に負えない相手が居る可能性も充分にあります。その時は素直に鶴野提督に助けを求めれば良いかと。」
「そ、それは・・・そうなのだが・・・色々と事情があってだな・・・とにかく協力はしてくれるのだよな?」
ここまでくれば安泰だな。散々不安を煽って突き放したかいがあったというものだ。これで狐塚提督が頑張って情報をかき集めてくれるだろう。
「まあ、ひとまずは協力しましょう。まずは情報の精査からですかね?」
「情報の精査?」
「私が集積地棲姫の危機に反応したのは、資材溜まりの資材が想定よりも多かった事です。それで深海棲艦が大規模な攻勢の為に資材を前線に送ったのではないかと疑ったのです。つまり情報の精査をすれば敵艦隊を直接発見せずとも、その兆候を感じ取る事が出来るかもしれないのです。やる価値は充分にあるかと。」
「な、なるほど・・・」
「とりあえず欲しいのは資材溜まりの状況と、通信状態でしょうか?あともちろん深海棲艦と遭遇すればその情報も。」
「わ、分かった。だが通信状態は何故必要なんだ?」
「これは横須賀の艦娘から聞いた話なのですが、姫級などの上位個体は通信妨害をしてくる可能性があるそうです。ですから艦娘達にもし鎮守府と連絡が取れなくなった場合、すぐに撤退するように命じておいたほうが良いかと思われます。」
「・・・・・・嘘では無いのだな?」
「ええ、少なくとも戦艦棲姫と遭遇した時、現地の部隊との通信が途絶しています。これが偶然だと思われるのであれば構いませんが?」
「いや、貴重な情報だ。感謝する。」
ほう?ずいぶんと素直になったものだな。まあ、この方がやりやすいから文句は無い。
「なにはともあれ、まずは情報収集です。情報を送って貰えれば情報の精査には協力しますので、出来ればより精度の高い情報を送って貰いたいものです。」
「ああ、分かった。分かったのだが・・・」
「なにか?」
「お前は本当に着任して一週間かそこらの提督なのか?にわかには信じられんのだが・・・」
「士官学校で学んだ成果です。・・・と言いたいところですがここまでやれるのは、必死に情報を集めて学んだ結果です。士官学校の奴でここまでやれそうなのは自分の他に二人くらいしか思い当たりません。」
もちろん小森と朔真の事だ。小森に関してはあの能力の高さは自分の理解の範疇を超えている。だが頭が良いのは確かだろうから、情報の精査くらい出来るだろう。そして朔真も自分と同じタイプの人間で、しっかりと過去の戦闘記録などの資料を読みまくって、それを生かすだけの頭脳があるはずだ。そして自分に並ぼうとするくらいの成績を修めていたので、これくらいの芸当は出来て当然だろう。
「士官学校を出た学生などあまり期待はしていなかったのだが・・・認識を改める必要がありそうだな。」
「そこは個人差が大きいのでなんとも。織田のような奴もいますし、あれより酷い奴なんてざらですよ。」
「なるほどな。では情報を集めて送る。協力よろしく頼む。」
「ええ、お待ちしております。それではまた。」
狐塚提督との通信を切って一息つく。とりあえず狐塚提督に情報収集の協力をさせる事が出来たのは大きい。情報を鵜呑みには出来ないが、何も無いよりかははるかに良い。
「・・・・・・」
「ん?曙、どうかしたか?」
「いや、その・・・提督ってこういう時だけやけに生き生きと喋るなぁって思っただけよ・・・」
「そうか?まあ、相手を思い通りに動かすのはなかなか難しいぶん、上手く行けば嬉しいものではあるな。」
「そう・・・もうすぐお昼ごはんの時間よ。演習してる人達もそろそろ切り上げるみたいだから、私達も一旦休憩にしない?」
「もうそんな時間か。分かった、片付けて行くか。」
現在高雄if座礁中です・・・納得のいく話が書けないのです・・・・・・