資料を片付けてから曙と共に食堂へと向かうと、多くの艦娘達が食堂へと向かっていた。午前中の演習を終えた者達も食事に来ているようで、こちらに気がついた村雨が駆け寄って来る。
「あ!!提督!!なんで演習見に来てくれないの!?せっかく村雨がちょっと良いとこ見せてあげようと思ってたのに!!」
「急な案件が入って演習を視察する時間が取れなかっただけだ。気にするな。」
「そうですかー・・・この村雨を放置ですかー・・・村雨そんな趣味ないから、かまってー!!」
そう言って村雨がよくわからない駄々をこねる。ここまですると言うことは、なにかしら伝えたい事でもあるのだろうか?
「ふむ?では食事をしながら演習の様子でも聞くとしようか?」
「じゃあ許してあ・げ・る♪食堂に並びましょ♪山風もそんなとこいないで一緒に行くわよ〜」
「村雨姉・・・なんであたしを巻き込むの・・・」
「山風がすぐ一人になろうとするからよ。まったく世話の焼ける妹だわ・・・」
「・・・・・・別に頼んでない。」
そう言って文句は言うものの、山風は一緒についてくるようだ。なんだかんだ言って今鎮守府にいる姉妹艦が村雨だけだから、一緒に行動したいのだろうか。
「ふーん、じゃああたしは席を外しておくわ。第七駆逐隊の皆と食べてるから、何かあったら呼んで。」
「ああ、分かった。」
曙は村雨に気を使ったのか席を外すようだ。そんな曙に漣がこっそりと近づいていく。
「ねぇ、ぼのたん?本当に良いのですかな?」
「ぼのたん言うな!!で、何がよ?」
「そんなにあっさり引いちゃったら、村雨ちゃんにご主人様を寝取られはぅ!?」
「バカな事言ってないで行くわよ!!」
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「それで?演習はどうだった?」
「んー?私は今回が初めての演習だし、どの演習もそれ相応って感じかなぁ?」
「まあ、最初はそんなものか。」
「そんなものよ〜提督が見に来てくれなかったし〜」
「ん?自分の視察があればなにか変わったのか?」
「やる気が出る。」
「・・・・・・そうか。」
上官に見られてあれこれ口出しされながらやる演習の方がやる気出るだなんて、村雨は変わった奴だな・・・
「あ、でもやっぱり秋月ちゃんは防空駆逐艦なだけあって、対空訓練では飛び抜けた成績だったよ。あれは勝てる気しないなぁ〜」
ふむ、流石は防空駆逐艦と言ったところか。練度1とは言え性能差がはっきりと出るか。今後の活躍が楽しみだ。
「なるほど。それは実戦で活躍してもらうのが楽しみだな。他の者はどうだった?」
「んー?提督は村雨とお喋りしてるのに、他の娘の事がそんなに気になるの?」
「当然だな。自分が指示を出して演習をさせているのだから、全員気になるに決まっているだろう?」
「はいは〜い、分かってますよ〜だ・・・これだから提督は・・・・・・そうねぇ〜山風も村雨とそう変わらない感じだし、第七駆逐隊の娘達も似たような感じかな?プリンツオイゲンさんは元気に演習してて、成績も流石は海外艦ってとこかしら?逆に羽黒さんはなんだか調子悪そうな感じ?」
村雨山風と第七駆逐隊は問題なしで、プリンツオイゲンは好調か。羽黒に関してはまだ思い悩むのも仕方ないだろう。もう少し時間がかかるのは覚悟しておこう。
「空母達や金剛姉妹はどうだった?」
「そっちはあんまり見てないからわかんないなぁ。でも空母の人達はバチバチにやってたみたいよ?帰りに瑞鶴さんがそうとう悔しがってたし。金剛さん達も砲撃演習の時に見かけたけど、凄く真剣な表情だったかな。」
「であれば問題無さそうだな。あと鹿島はどうだった?演習の指揮を長門と共同でやらせてみたはずだが?」
「うーん?特に気になった事は無いかな?普通に演習の指揮をしてただけだし、ちょことアドバイスを貰ったくらいかな?」
「なるほど。」
まあ、無難に仕事をこなしてくれるならそれで充分ではあるな。なにせ鹿島にとっても今回が初めての演習なのだ。
「・・・・・・村雨姉、それは違う。」
「山風?何が違うの?」
「・・・演習に参加した人達が滞りなく”普通に”演習が出来た。・・・さらにその上でちゃんと全員にきちんとアドバイスしてた。・・・これは凄い事。」
「あー、そう言われればそうかも?小休憩は挟んでたけど、ずっと待機してるとかは無かったわね。」
「なるほど。山風は周囲をよく見ているようだな。」
「・・・・・・・別にこれくらい普通。」
それだけ言うと山風はまた黙々と食事を続ける。山風は社交的なタイプではないが、周囲の事はよく見ているようだ。観察力の高さは高評価だ。
「そうか。とりあえず演習の様子はある程度把握した。あとで長門と鹿島にも話を聞いておこう。」
「じゃあ堅苦しいお話はここまでで、ここからは雑談タイムね♪」
「・・・・・・雑談か。」
「え?なに?村雨とは雑談したく無い的な反応?ちょっとどころかかなり傷付くんですけど・・・」
「ああいや、そういうわけではないが・・・どうにも私は雑談が苦手なようでな。今朝も漣に言われて試してみたのだが、どうにも上手くいかなくてな。」
「・・・・・・え?ちょっと待って。雑談で上手くいくってなに?普通にお喋りするだけでしょ?」
「そうは言ってもな・・・今朝漣のアドバイス通りに球磨と雑談してみたのだが、球磨には怪訝そうな顔で体調の心配をされたのだが・・・」
こちらが頭を悩ませている内容なのだが、村雨も村雨で頭を抱えてしまった。どうやら村雨は雑談することは出来て当然の技能だと認識しているようだ。これは他の艦娘達も同様なのか?
「ごめん、ちょっと待ってて。漣〜!!ちょっと来て。」
「ほいさっさ。村雨ちゃんどした?」
「ねぇ、提督が雑談苦手って言ってるんだけど・・・なにか知ってる?」
「あぁ・・・あれは苦手なんてそんなレベルじゃないですぞ・・・ご主人様の頭には仕事の事しか入ってないみたいでして・・・そもそも楽しくお喋りするって概念を知らないのでは?」
「嘘!?そのレベル!?」
「雑談に意味を求めてくるので、雑談に意味なんて求め無いで下さいって言ったのに、何故か情報量が足りなかったのかという結論になりましたからね・・・」
「うわぁ・・・・・・」
なにやら漣と村雨の二人で盛り上がって、こちらをなにか可哀想なものを見るような目で見てくる。これはよほど一般的な技能を身に着けていなかったのだろうか?人に正確に情報を伝えたり、人から必要な情報を探り出したりするのは、それなりに上手くやれていたと思うのだが・・・
「村雨も漣も雑談が得意なのか?」
「得意と言うか・・・村雨は雑談大好きよ。」
「むしろ雑談しかしてないまである。」
「いや、それは言い過ぎでしょ。」
「てへ♪」
「ふむ・・・ならばどうすれば雑談が上手く出来るようになるんだ?どうにも二人の話しぶりからすると、身に付けておいて当然の技能のようだが・・・普通の会話と何が違うんだ?」
「「うわぁ・・・・・・」」
またしても二人から可哀想なものを見るような目で見られた。
「これは重症ね・・・」
「わかってくれますか村雨ちゃん!!いや、むらむらちゃん!!」
「・・・・・・そのあだ名は村雨が欲求不満みたいで可愛くなぁ〜い。」
「ゴメーヌ。」
「とにかく提督は雑談について考え過ぎ。もっと気楽にお喋りするだけよ?お喋りをして楽しかったらそれで良いの。」
「ですぞですぞ!!雑談を技能とか言ってる時点で間違っているのです!!」
「・・・そうか。」
「そもそも提督にとっての普通の会話ってなに?」
「会話の目的は情報の伝達だろう?あとは情報を引き出すか交渉するか思考の誘導くらいか?」
「あー、間違ってはないはずなんだけどなんだろ?」
「あとさらっと思考の誘導とか出てくるのが、マジご主人様ですわ。」
ん?会話とはコミュニケーション、つまりは情報の伝達のはずだが・・・どうやらこの二人にとっては少し違うらしい。
「あれよ、目的の無い会話が雑談って事で良いんじゃない?」
「それだ!!」
「目的の無い会話か・・・」
これはまた難しいお題だな。なにかを伝える事がない会話?ならば何を話せば良い?漣は天気でも食事でも漣が可愛いでもなんでも良いと言っていたが・・・よくわからん。
「まあ、そんなに頑張るものじゃ無いから、気楽にやればいいんじゃない?村雨も付き合ってあげるから。」
「では漣は村雨ちゃんに丸投げするとしましょう。」
「いや、漣も手伝いなさいよ。」
「う〜ん?でもご主人様を刺激し過ぎて爆発されると困るからなぁ・・・」
「ヘタレた!?しかも今更!?」
「ふっ・・・村雨ちゃんはまだご主人様との付き合いが浅いから、怖い時のご主人様を知らないのですよ。」
「・・・・・・提督が着任したのって一週間前くらいよね?漣はその前から提督の事知ってたの?」
「いえ、まったく知りませんでしたな。」
「じゃあ村雨とほとんど変わらないじゃない!!」
「ふぅ・・・ご主人様、この無駄さ加減が雑談というものですぞ。」
「・・・・・・そうか。」
これが雑談か・・・なかなか難しそうだ・・・
「村雨は漫才じゃなくてお喋りがしたかっただけなのになぁ〜」
漣は誰とでも漫才できそう。