疑心暗鬼提督のブラック鎮守府再建   作:ライadgj1248

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 どうやら今日からコミケ開催のようですね。
 参加される皆さんは熱中症とコロナには充分気をつけて楽しんで下さい。


193話(長門鹿島&小森対話)

 昼食を終えて執務室に戻ると既に曙と大淀が居て、午前中の引き継ぎを行っていた。こういう事を言われずとも自然とやっているあたり、秘書艦として自発的に動こうという意思を感じて助かる。

 

「あ、提督、お疲れ様です。午後からの予定はどのようにお考えですか?」

 

「午後から曙には演習に参加してもらうつもりだ。それと午後からの予定を決める前に、長門と鹿島と話がしたい。呼んでくれるか?」

 

「分かりました・・・・・・すぐに来るそうです。それと先程遠征部隊から連絡があって、一つ目の元敵拠点に到着したとの事です。」

 

「ほう?接敵の連絡が無かったということは、敵は見当たらなかったのか。」

 

「はい。敵影はなく資材の量は少なめとの事です。」

 

 ふむ、横須賀艦隊が駆逐した拠点の一つ目は特に問題無しか。資材が少ないのはちょっと残念だが、大きな拠点ではないので仕方あるまい。このまま残り二つの拠点も何事も無ければ良いのだが・・・東へ向かう以上なにかしら起こってもおかしくはないか・・・

 

「了解した。資材を回収して次の目的地に向かえ。敵への警戒は怠るなよ。」

 

「了解しましたとの事です。」

 

コンコンコン

 

「長門と鹿島だ。提督がお呼びだと聞いたが入っても良いか?」

 

「ああ、入れ。」

 

 長門と鹿島が執務室へと入って来たが、少し緊張している様子か?鹿島はわからなくもないが、長門はそろそろ慣れて欲しいものだ。

 

「まずは午前中の演習監督ご苦労だった。村雨と山風から聞いた話だが、なかなか上手く指揮をしてくれたようだな。」

 

「そう言って貰えるのはありがたい。鹿島が初めてとは思えない程上手く動いてくれたので、私は基本的な事しかしていないがな。」

 

「い、いえ、長門さんの助けがあってこそです。私はこの鎮守府の事をほとんど知りませんから。」

 

「ふむ、上手くやれているなら何よりだ。とりあえず二人からも演習についての所感を聞きたい。」

 

「そうだな・・・やはり目立ったのはプリンツオイゲンと秋月だな。二人共練度1とは思えないくらいの動きだったな。」

 

「なるほど。鹿島はなにかあるか?」

 

「そうですねぇ。皆さん課題はまだまだありますが、演習を重ねる事で克服出来るかと思います。もちろん私自身も含めてですね。」

 

 まあ、無難な受け答えだな。演習の成果は一朝一夕に出るものでもないし、経過観察が必要だろう。

 

「では引き続き演習を二人に任せよう。だが少し状況が変わってな。午後からの予定を変更したい。」

 

「ほう?具体的には?」

 

「金剛型と一航戦の参加はやめて待機させたい。」

 

「それは構わないが、何かあったのか?」

 

「長門鎮守府のさらに東側に深海棲艦の上位個体が存在する可能性が出てきた。現在益田鎮守府が索敵を行っているが、その結果次第では動いて貰う必要がある。」

 

「なるほど・・・しかし益田鎮守府か・・・益田鎮守府は鶴野提督の派閥だったと思うが大丈夫なのか?」

 

 当然の疑問だな。着任したばかりの鹿島はよく分かっていなさそうだが、自分が鶴野提督の派閥と険悪な関係だと言うのは周知の事実だろう。

 

「不安なのは分かるが問題は無い。狐塚提督も私の事を信用しているとは思えないが、お互いの利益の為なら協力出来る相手だと思う。」

 

「そうか。提督がそう言うのであれば信じよう。何かあればすぐに相談してくれ。」

 

「ああ、分かった。それと鹿島。」

 

「は、はい!!」

 

「午後からはプリンツオイゲンに艦隊行動の練習をさせたい。夜間に鹿児島鎮守府の島津提督との演習があるのだが、そこにプリンツオイゲンを参加させろとの要望が出た。付け焼き刃で構わないから、ある程度動けるようにして欲しい。」

 

「・・・分かりました。やれるだけやってみます。」

 

「ん?なにか気になる事でも?」

 

「いえ、その・・・プリンツオイゲンさんは海外の方ですので・・・日本語での指示に反応するのが少しだけ遅いみたいでして・・・」

 

 そうなのか・・・日常会話だと会話に対する返答が多少遅くても気にならないが、刻一刻と変化する戦場ではその遅れが大きな足枷になるか・・・

 

「それは慣れるまでは仕方ない。今回はあくまでも演習だから、やれる範囲で構わない。それと無理をさせ過ぎて、演習で動けないなんて事にならないようにな。」

 

「はい、お任せください。」

 

「では午後の演習を始めてくれ。」

 

「「「はっ!!」」」

 

 長門と鹿島と曙が敬礼をして執務室から退室する。三人が退室したのを確認してから、大淀が資料を持って近づいてくる。

 

「提督、先程益田鎮守府から通信で資料が届きました。ご覧になりますか?」

 

「ああ、確認しよう。」

 

 資料の内容はここ最近の戦闘記録と哨戒や遠征の結果か。だが益田鎮守府は近海ばかりしか行動しておらず、少し遠くまで出た時は長門鎮守府か出雲鎮守府との合同作戦の時だけだな。

 

「ふぅ・・・きちんと情報の提供をしてくれるのは助かるのだが、これでは今まで調べた事と変わらんな。遠征結果も毎回資材の量が少ないのも予想通りだ。」

 

「近海にある資材溜まりでこまめに回収したら当然そうなりますね。」

 

「資材の増減がほとんど無いところを見ると、深海棲艦の影響を受けていない場所なのだろう。そう考えるといきなり益田鎮守府が襲撃される事は少なそうだ。」

 

「やはり益田鎮守府の偵察部隊が情報を掴むまではなんとも言えないかと・・・」

 

「そうだな・・・敵の偵察部隊と遭遇すれば、少しは情報が得られそうなのだが・・・」

 

 そうやって資料を見て考えていると、微かにだが誰かが執務室のドアを開いた気がした。視線を向けるとやはりというかそこには小森がいた。今回はたまたま気がついたが、相変わらずこっそりと行動する奴だ。

 

「小森か、なんの用だ?」

 

「あ・・・その・・・昨晩の戦闘記録・・・」

 

「ああ、助かる。」

 

 そう言って小森は一枚の資料を手渡してくる。そう言えば川内から報告は受けていたが、書類は受け取っていなかったか。小森がこの鎮守府に来てから、戦闘記録は全て小森が作っている。考えてみれば自分は小森に何も命令をしていなかったはずだ。というか着任してからずっと忙しかったので、小森の事を放置してしまっていたな・・・そしてそんな急に現れた小森に対して大淀は少し驚いたようだが、もう悲鳴をあげる程ではなくなったようだ。

 

「じゃ、じゃあこれで・・・」

 

「小森、この資料を見てどう思う?」

 

 小森の前に曙が集めたここ最近の長門鎮守府・益田鎮守府・出雲鎮守府の戦闘記録と先程送られてきた資料を並べる。小森は大淀からの視線を気にしながらも資料に目を通していく。

 

「・・・・・・葛原さんは偵察部隊を送って来てる深海棲艦を探してる?」

 

「ああ、その通りだ。」

 

「・・・だったら集積地棲姫の影響範囲・・・考えるべきだと思う。」

 

「集積地棲姫の影響範囲か・・・」

 

 少なくとも襲撃を受けた長門鎮守府と北九州鎮守府は集積地棲姫の影響範囲内だ。だが益田鎮守府はどうだ?これは正直なところ曖昧だ。一応集積地棲姫の影響は受けていなさそうだが、長門鎮守府に敵の視線が集まっていたおかげで、難を逃れただけかもしれない。

 

「益田鎮守府は集積地棲姫の影響範囲外で、別の上位個体がそっちにいると考えているのか?」

 

「・・・違うよ。たぶんもっと広いはず・・・」

 

「・・・そう考える理由は?」

 

「・・・日本海側は・・・今まであんまり強い深海棲艦は出現しなかった・・・」

 

「たしかに日本海側は太平洋側に比べると、上位個体の出現率がかなり低い。だが低いだけで姫級の出現も前例があるし、今回の集積地棲姫はかなりの戦力を集めていたぞ?」

 

「・・・だからだよ・・・日本海側に強い深海棲艦が少ないのは・・・資材が少ないからだと思う・・・」

 

「資材が少ないか・・・」

 

 確かに仮説としては悪く無い。深海棲艦が資材溜まりに資材を運ぶ習性があるということは、深海棲艦も艦娘と同じ資材を使用していると考えるのが自然だ。そして日本海は陸地に囲まれた小さな海だ。艦娘達の資材についても分からない事が多いが、狭い海だから少ない資材しか集められず、太平洋のように広い海よりも深海棲艦の出現率や上位個体が少ないというのは理解出来る。

 

「なるほど。小森は集積地棲姫が日本海側の広い範囲から資材をかき集めて、強力な艦隊を作っていたと考えているのか?」

 

「うん・・・だから日本海のあちこちに・・・拠点を作って指揮官を派遣してたと思う・・・」

 

「資材の輸送と拠点の防衛を考えれば妥当だな。となると・・・・・・深海棲艦側からしたら、トップである集積地棲姫との連絡が途絶えた事になるのか?深海棲艦の情報網がどの程度のものか分からないが、横須賀艦隊がこの近辺を掃討したから、さらに遠くの拠点の指揮官が様子見に艦隊を派遣してきたと言ったところか?」

 

「うん・・・でもこれはあくまでも私の予想・・・」

 

「それは分かっている・・・だがその線で考えるのは悪く無い。」

 

 はぁ・・・小森に相談するだけでずいぶんと話が進んでしまった。こんな事ならばもっと早く相談するべきだった・・・だがそうなると指揮官と仮定して上位個体はこれからどう動く?自分なら態勢を立て直す為に一度引くだろう。自分達のボスである集積地棲姫を討伐した強力な艦隊がいるのだ。そんな奴を相手にしたくは無いと考えるのが普通だ。しかし横須賀の艦隊が帰還したのを知っていたら?集積地棲姫の制御から外れて、深海棲艦の本能に従って襲撃を始めたら?

 

「小森、敵の拠点の位置にあたりはつくか?それと敵の今後の行動の予測は可能か?」

 

「・・・・・・それは難しい・・・でも小さな拠点は多そう・・・小さな拠点を叩いていけば・・・大きな拠点の位置も予測出来る・・・かも・・・」

 

「そうか・・・なら情報が集まるのを待つか。益田鎮守府の偵察部隊からの情報と、うちが出した遠征部隊とその護衛からの情報があれば、もっと位置を絞れるようになるだろう。」

 

「うん・・・頑張って・・・」

 

 そう言って小森はペコリと頭を下げて、そそくさと執務室から退室しようとする。

 

「おい待て。どこへ行くつもりだ?」

 

「・・・・・・え?」

 

「これからまだ情報が集まるんだ。その精査に協力してもらいたい。」

 

 そう言うと小森は慌てて自分と大淀に交互に視線を向ける。相変わらず挙動不審だが、どうにも大淀を怖がっているのだろうか?大淀は特になにもせずにじっと小森を見ているだけなのだが・・・

 

「・・・・・・分かった・・・待機してる・・・」

 

「ああ。」

 

 そう言って小森は自然と部屋の隅に行って縮こまる。ああやっているとうっかり目を離したら、その存在を忘れてしまいそうだ。だが待機していると言った以上、いつの間にか居なくなることも無いだろう。そういう律儀なところは知っている。




 コミケのおかげでTwitterの投稿も活気付いていて、とても楽しませて貰っています。絵師の方々に感謝です。
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