コンコンコン
「イムヤよ。入ってもいいかしら?」
「・・・・・・入れ。」
島津提督の相手が終わって少ししたら、イムヤが執務室を訪ねて来た。しかし執務室に入った瞬間にイムヤは何かに驚いたようでギョッとした。
「あ、えっと・・・その・・・大淀さんに頼まれて憲兵隊の人から書類を貰って来たんだけど・・・」
「ああ、助かる。」
「は、はい、これね。」
書類を渡す為にイムヤが近づいてくるが、表情が固く少し震えている・・・どうにもイムヤに怖がられているようだ・・・まあ、今まで散々男に酷い目にあわされてきたのだから無理も無いか。以前の面談の時はもう少し余裕があったように思えるが、あのときは無理をしていたのだろうか?
イムヤから渡された書類に軽く目を通すと、書類の多くは有力者からの面会や新聞社からの取材の申し込みだった。つい昨日大きな記者会見を開いたばかりだというのに・・・まったく面倒な奴らだ・・・
「あ・・・えっとぉ・・・」
「ん、ああ、すまん。書類はたしかに受け取った。ご苦労だった。」
「じゃ、じゃあ私はこれで・・・」
「・・・・・・イムヤ、やはり男は怖いか?」
「あ、いや、その・・・・・・ちょっと司令官が怖い顔してたからつい・・・・・・」
怖い顔か・・・島津提督との一件が原因か・・・イムヤには全く関係無い話なのに、不用意に怖がらせてしまったのは失態だな・・・
「それはすまなかったな。怖がらせるつもりはなかったのだが・・・つい感情を表に出してしまったようだ。」
「あ、うん、司令官が悪い人じゃ無いってのは分かってるんだけどね・・・慣れるまではちょっと大目に見て貰えないかな?」
「大目に見るもなにもこれは私の失態だ。以後気をつけよう。」
「ううん、気にしないで。じゃあ私はもう行くね。」
そう言って少し申し訳無さそうな表情でイムヤが退室しようとすると、執務室の扉が外側から勢い良く開かれる!!
「それじゃダメなのね!!」
「イ、イク!?」
「提督は我慢のし過ぎなのね!!一週間も抜かなきゃイライラもムラムラも溜まって当然なの!!だからイクがスッキリさせてあげるのね!!」
・・・・・・これはまた厄介なのが来たな。イムヤはどうして良いかわからずに自分とイクの顔を交互に見ながら狼狽えているし、大淀は唖然としている。
「はぁ・・・・・・イク、必要ないから部屋に戻っていろ・・・」
「提督はちゃんと理解してないのね!!」
「・・・なにをだ?」
「提督の立場をなの!!」
「・・・ほう?とりあえず聞いてみようか?」
提督としてのあり方が間違っていると?自分では提督として真っ当に働いているつもりだが、どうやらイクの目線からはそうでは無いらしい。どんな諫言が出てくるか気になるところだ。
「艦娘は皆美人や美少女揃いなのね!!」
「・・・・・・ん?ああ、それで?」
「艦娘は提督の命令に従う都合の良い存在なのね!!」
「・・・・・・まあ、言い方はともかく軍属だからな。指揮系統の維持は重要だな。」
「こんなに美味しい状況でエロスな展開にならないのはおかしいの!!提督は一人の男として、いや一匹の雄として絶対に間違っているのね!!」
・・・・・・うむ、やはり理解出来ん。こんな頭のおかしな発言だが、鎮守府の事をよく知らない外部の男が言うならばまだ理解出来る。勝手な妄想からの嫉妬だと考えて適当にあしらえば良い。だがなぜ当事者で被害者側である艦娘からこんな発言が出るのだ?
「・・・・・・見解の相違だな。私には理解出来ん。」
「提督はストレスを甘く考え過ぎているのね・・・提督のお仕事はストレスとの戦いなのね・・・」
「・・・まあ、確かにストレスが溜まる仕事であるのは否定出来ないな。」
「だから提督にはストレスの捌け口が必要なのね。そして見目麗しい女の子達が提督の命令ならなんでも従うのね。ならやることは一つなのね!!」
「それが理解出来ん・・・なぜイクは職権の乱用を勧めてくるのだ?私をクビにしたいのか?」
「そんなこと考えて無いの・・・我慢してストレスを溜めたら健康に悪いの・・・それにストレスは溜まり過ぎるとおかしくなるのね・・・今は理性的な提督もどうなるか分からないのね・・・」
ふむ・・・これは一概に否定出来ない話になって来たな・・・確かに過度なストレスによって心身が壊されたり性格が歪む事はある。自分だって敬愛していた兄が処刑された事や、死の恐怖で性格が歪んだ自覚はある。つまりイクはストレスによって自分が変わってしまう事を恐れているのか?もしかすると前任者の大森提督も最初はまともな人間で、それが段々と変化していったのだろうか?それにイクは多くの有力者達の相手もさせられていたと聞く。そうやっておかしな人間を見てきたからこその発言なのだろうか・・・・・・
「・・・・・・イクからの警告は確かに受け取った。だが私は規律を守り守らせる立場の人間だ。艦娘をストレスの捌け口にするような真似は出来ん。だから何か別のストレス発散方法を考えておこう。」
「はぁ・・・エロスは世界を救うのに残念なの・・・提督は想像以上に難攻不落なのね・・・」
「それに艦娘とそういう行為をするのは私にはリスクが高過ぎて、余計に頭が痛くなりそうだ・・・」
「それはがっかりなのね・・・・・・はっ!?」
自分の言葉を聞いて落ち込んでいたイクだったが、急に重大な何かに気が付いてしまったかのような愕然とした表情をした。
「どうした?」
「ま、まさか提督は・・・・・・男の人の方が好きな人だったのね!?」
「違う!!」
「だったら全て納得出来るのね・・・イクのおっぱいにも反応しなくて、駆逐艦のロリボディにも、巡洋艦達の食べ頃ボディにも、戦艦や空母達のセクシィボディにも反応しなかったのは、提督が女の子の体に興味がなかったからなのね・・・」
「断じて違う!!」
確かに性欲は同年代に比べてかなり少ないようだが、断じて男色家などでは無い!!本当にあり得ない勘違いだが、イクは未だに疑惑の目で見てくるし、イムヤはちょっと引いた雰囲気だし、大淀に至っては少し顔を赤らめている・・・こんな噂が広がればそれこそストレスでどうにかなりそうだ・・・・・・
「・・・・・・本当に違うの?」
「ああ、それはあり得ない話だ・・・うっ・・・想像しただけで吐きそうだ・・・」
「大丈夫なの?おっぱい揉む?」
「はぁ・・・イムヤ。」
「え、わわわ私!?私そんなにおっきくないよ!?」
「はぁ・・・イクを部屋に連れて帰ってくれ・・・」
「え!?あ、はい!!失礼しました!!」
「あっ!?ちょ!?待つのねイムヤ!?もう少し粘ればやれるはずなぁぁのぉぉねぇぇぇぇ!!」
イムヤが大慌てでイクを引き摺って執務室から退室してくれた。イクはイクなりに私の事を心配してくれていたようだが、余計にストレスで頭が痛くなりそうだ。だがストレス発散に関してはなにか考えなくてはな・・・
たまには葛原提督も艦娘達に思いっきり振り回されたら良いんじゃないかな?ここまで提督を振り回せるのはイクちゃんくらいだと思うけど。